つまりは殴り愛
瞬時にコーヒーとの間合いを詰めた不眠は右腕を彼に振るう。だが、その腕はソファーから床に転がるように回避したコーヒーによって空を切る結果に終わる。
「不眠テメェゴラァッ!」
瞬時に体勢を整えたコーヒーが不眠にタックルするように飛びかかる。
「わっ!?」
コーヒーの動きは素早く、回避出来なかった不眠はタックルをもろにくらい、彼の下敷きにされる体勢で床に倒れ込む。不眠は抜け出そうともがくが、体格差がかなりあるためコーヒーはびくともしない。
「ふっ」
勝利を確信したコーヒーはニヤリと笑うと――――
「はーいはいはいはいはい、そこまで」
深夜がコーヒーにファブリーヌをぶっかけた。緑茶成分入りだったらしく、爽やかな香りが辺りに漂う。
「二人とも懲りないよねえ。バカなの?」
「うるさい。コーヒーがカフェイン臭させるのが悪いの。余計眠れない」
「不眠がいきなり殴りかかってきたのが悪いんだよ」
先程までの一触即発、険悪な空気から一転、やけにあっさりと二人は立ち上がり、制服に付いたゴミを払い始める。
「コーヒーくんと不眠ちゃんは本当に仲良しさんなのです」
「「どこが?」」
言葉こそつっけんどんだが、二人の声にトゲはなく、ソファーに隣同士に座っている。
不眠とコーヒーは会う度にどちらかが難癖をつけて殴り合い、一見仲が悪く見えるが、決してそんな事はない。寧ろ仲は良い方だ。不眠は眠れない事と又それを友人に心配させてしまっているストレス。コーヒーはその見た目故、周りに理解されにくい事へのやり場のない憤りをそれぞれ抱えている。そのストレスをお互いがお互いを使って発散させているのだ。全力で殴っても大丈夫な相手、それは絶好のストレスの捌け口だろう。不眠のカフェイン臭云々は殴り合う口実でしかない。だから一度殴り合ってストレスを発散させれば、二人とも機嫌良く一緒に遊び始める。
「ほーんと、君らってめんどくさいよねえ?」
「そこが二人の良いところなのですよ」
そんなコーヒーと不眠の様子に深夜は呆れ、ミルクはくすくすと笑った。




