怒声は響く
ミルクは混乱していた。昼休みにした約束通り、不眠の為にホットミルクを作ろうと、簡易な台所もある深夜が根城としている教室を訪れた二人。そこで待っていたのは唇が触れ合いそうな程顔を近付けた友人達という、大変ショッキングな光景だった。
(ど、どうして深夜くんとコーヒーくんがあんな体勢に……? こ、これが巷で有名なBLなのですか……!?)
「ミルク、急に扉閉めてどうしたの? 顔も赤いし」
不眠が心配そうにミルクの顔を覗き込む。不眠はミルクの後ろについていた為、彼女が丁度壁のようになっていて教室の中を見ていない。
「な、なんでもないのですよっ!」
ミルクは慌てて取り繕う。ミルクは不眠に甘い。彼女の口からそんなショッキングな事は言えない。
(い、いや、もしかしたら私の見間違いかもしれないのですよ……)
「し、深夜くん、コーヒーくん遊びに来たのですよ!」
今度は大きな声で一声かけてから、ゆっくりと扉を開く。そこにはソファーに座って珈琲を飲むコーヒーと、なぜか床に転がされている深夜がいた。
(よかった……。いつも通りの二人なのです。さっきのはきっと私の見間違いなのですね。いえ、絶対見間違いなのです)
ミルクは胸を撫で下ろしながら、先程の光景を半ば無理矢理なかったことにした。
「よう、ミルク」
「コーヒーくん、こんにちは」
仏頂面で挨拶をするコーヒーにミルクは柔らかく微笑みながら挨拶を返す。コーヒーは怒りっぽく、常に無愛想な顔だが、実はお人好しな人間な事をミルクは知っている。
「コーヒー……」
「ふ、不眠……」
ミルクの背後から聞こえてきた怒気を纏った声にコーヒーは顔をひきつらせる。
「土に還れゴラアアァァァァアッ!!!!」
不眠の怒声が校舎に響き渡った。




