扉は急に開かれる
深夜が珈琲の準備を始めると、すぐに芳ばしい香りが部屋一杯に充満する。
「僕の淹れた超絶美味しい珈琲を飲めるなんてコーヒーは僕のマブダチで良かったねえ。平伏してくれてもいいんだよ?」
「ああ、そうだな」
珈琲が出来上がり、それをコーヒーの前に出しながら深夜はそんな軽口を叩く。コーヒーも慣れているのか適当な相槌を返しながら珈琲を啜る。深夜もコーヒーの横に座り、自分用に淹れたカフェオレを飲み始める。
「ああ! やっぱり美味しい! 美しい上に珈琲を淹れるのが上手って、僕は素晴らしいね! 素晴らしすぎて罪深いよ!」
「深夜」
コーヒーの眉間にシワが刻まれる。だが、深夜はそんなコーヒーの様子に気付く気配がない。気付いていても彼は自分のスタンスを崩さないだろうが。
「僕は罪! つまりGuiltyな僕! 惚れてくれてもいいよ? ホモは無理だ・け・ど」
吐息が触れるくらい近い距離でそう言った深夜にコーヒーは無言で胸倉を掴む。
「なあ深夜。俺は静かに珈琲を飲みたい派だって知ってるよなあ?」
コーヒーは至近距離で深夜を睨む、俗に言うメンチ切りと言う奴で凄む。
「なにそれ? 知ってるけど?」
「あ゛あん?」
コーヒーの顔が更に深夜に近付く。
「僕が美しいのは分かるけど、そんな近付いていいの? 誰かに見られちゃうよ〜?」
「あ? んな事そうあるわけ……」
コーヒーの言葉は教室の扉がガラリと開けられた音で遮られる。
「…………」
コーヒーが恐る恐る顔を入り口の方へ向ける。そこにはミルクが立ち尽くしていた。
「あ…………」
彼がミルクに声をかけるより早く、彼女は開けた扉をピシャリと閉める。コーヒーと深夜だけが残された教室になんとも言えない空気が漂う。
「ドンマイ☆」
深夜がコーヒーの肩を軽く叩いた。




