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過去は唐突に蘇る 4


 コーヒーの生活は大きく変わった。コーヒーの傍にいた人間は皆いなくなり、代わりに冷たい目に囲まれるようになった。根も葉もない噂が流され、誰もそれを疑わない。コーヒーにとって唯一の救いになったのはすぐに春休みが来たことだ。


 麗らかな春の陽気に誘われるようにして、コーヒーはふらふらと外を出歩く。彼が足を止めたのは家から少し先にある公園。遊具も少なく、寂しい印象を受ける場所だが、春の今だけは、桜の木が咲き誇っていて華やかになる。コーヒーは公園の中をずんずん進み、一つだけ設置してあるベンチにゴロリと寝転がる。コーヒーの頭上の花々は綻び、蝶がひらひらと舞っている。静かだが、鮮やか。そんな中にいるコーヒーの心中は同じぐらい穏やかだが、色彩は存在していなかった。

 コーヒーはあの日からずっと一人だった。誰も味方となってくれる者は、コーヒーをちゃんと見てくれる者はいなかった。その理由を彼は考えていた。彼の事をよく知っている者や、頭の良い者は気付いてもおかしくない筈だ。それなのに、一体なぜなのか?

「……やっぱ皆退屈なんだよな…………」

 朝起きて、学校に行って、友達と喋って、帰って、寝る。変わらない毎日。楽しいし苦痛は少ないが、退屈だ。そこにやってきたコーヒーの話。さぞかし刺激的な話題だろう。例え嘘だと分かったとしても、真実をねじ曲げてしまうくらいには。

 コーヒーは周りの人間の心理を理解した。そして彼は諦めた。



 春休み明け、登校したコーヒーは指定の制服を脱いで、白長ランに身を包んでいた。当然、周りの人間は彼を見てざわめく。コーヒーが自分の席に着く頃には大勢の人間が教室前の廊下に集まり、彼を遠巻きにジロジロ見てはまた勝手な事を言い始めていた。

「なに、あれ?」

「白長ランって奴じゃない?」

「遂に本性表したね」

「こわーい」

 自分に集中する視線を煩わしく思ったらしく、コーヒーはガンを飛ばしだす。絡まれたら堪らないとでも思ったのか、人だかりは瞬く間に解散していった。

「チッ」

 コーヒーはそんな彼らの様子に短く舌打ちをすると来た道を引き返し始めた。どうやらサボる事にしたらしい。

 コーヒーがやってきたのは春休みにも訪れた公園。まだ家にいる母が出勤する時間まで、昼寝でもして時間を潰す算段だ。ベンチに仰向けに寝転がる。ぽかぽかと暖かい日差しに照らされているうちに、彼の意識は段々遠のいていった。その姿は年相応で、纏っている白長ランだけが不自然に浮いている。


「…え………てよ………起きて」

 うたた寝のつもりが深く眠り込んでしまったコーヒーは、誰かに優しく揺り起こされて、意識をゆっくりと浮上させる。聞き覚えのない声に首を傾げながらも、彼は瞼をそっと持ち上げる。コーヒーの目の前には彼を覗き込む青色の眼があった。



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