過去は唐突に蘇る 3
「あ……」
目の前の友達の疑わしそうな顔。周囲の人間の冷たい目。コーヒーは自分が置かれている状況をようやく理解する。頭が真っ白になる。
「やっぱりそうか……」
コーヒーの沈黙を肯定と受け取った友達は嫌悪の表情を露わにする。コーヒーにとって、目の前の彼は一番の友達だ。親友と言っても良い。他の誰に誤解されてもいい、だけど彼にだけは分かって欲しい。そんな一心でコーヒーは目の前にいる友達に緊張で震える手を伸ばす。
「触るな」
コーヒーの手は冷たい言葉と共に呆気なく払われる。友達の言葉を皮切りに、周囲の人間もざわめき始める。
「アイツ不良だったのかよ」
「不良とかないわー」
「私、信じてたのに」
「今まで騙されてた」
「俺は最初からアイツはマトモじゃないって思ってたよ」
「でも見た目は普通だよね」
「人は見かけによらないんだよ」
「インテリヤクザみたいな?」
「あの怪我、喧嘩だよね?」
「やだ、怖い」
「面倒事学校に持ってくんなよな……」
「俺等まで不良と思われたら危ないもんな」
「俺、アイツの友達やめるわ」
「あ、俺も」
「私も」
口々に勝手な事を言うクラスメイト達の言葉がコーヒーの頭の中をぐるぐると回る。否定しようにも喧嘩をしたという事実がある限り、彼等は納得をしないだろう。
いつの間にか教室の外の廊下には人だかりが出来ていて、ざわめきが更に大きくなっていく。この中に自分の味方はいないのだろうか、とコーヒーは集団を見渡す。
「アイツは……」
人だかりの中にコーヒーが昨日助けた少年を見つける。コーヒーは活路を見いだした気がした。彼ならコーヒーの身の潔白を証明できる。コーヒーは人ごみを押し分け、一直線に彼の元へ行く。
「なあ!」
「ヒッ!?」
少年を両肩をガッシリと掴むと、彼は情けない悲鳴をあげた。
「皆に説明してくれよ! 俺はお前を助けてやっただろ!?」
ガクガクと揺さぶるが、少年は怯えるばかりで何も言わない。そんな彼に苛立ったコーヒーは更に言葉を重ねようとするが、周囲の人間達によって引き離されてしまう。
「今の見た?」
「見た見た」
「目があっただけで掴みかかったよね」
「ほら、やっぱり不良だった」
「なんか言ってたね」
「どうせカツアゲとかじゃないの?」
益々きつくなる周りの目がコーヒーに突き刺さる。
「俺はっ――」
不良じゃない、と続けようとしたコーヒーだったが、間抜けなチャイムの音がそれを遮った。集まっていた人間が散っていく。最後にコーヒーと昨日の少年が残る。彼は怯えながらも、申し訳なさそうな顔をしている。
「…………ごめんね」
そんな言葉だけポツリと落とすと少年は走って自分のクラスに戻っていった。




