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過去は唐突に蘇る 1

今回から過去編になります。少しだけ暗くなってシリアスが入ります。

 シャーペンの走らせる音だけが響く教室でコーヒーは静かに驚いていた。

(と、解けるだと……!?)

 目の前に広げられた問題用紙と解答用紙。シャーペンが止まらないほどスラスラ解ける、というわけではないが、解答用紙の七割程を埋めることが出来た。前回のテストでは半分以上が空欄だった事を考えると、飛躍的な進化だと言える。コーヒーはテスト対策プリントを作ってくれた深夜に心の中でお礼を言う。これは中学もあわせて、俺至上最高得点かもしれない、と彼は口元を緩ませる。が、次の瞬間、彼は己の馬鹿さ加減を呪った。彼は直視してしまった。必死で目を背け続けていた過去を。


***


 中学一年生のコーヒーは何の変哲のないただの中学生だった。勉強はあまり出来ないが、運動が好きで、明るく、友達も多い。勿論、白い長ランは着ていない。それになによりも友達を大切にする少年だった。

 もうすぐ一年生も終わろうとしている冬のある日、帰宅途中のコーヒーは路地から人の悲鳴を聞いた。男の声だが、若い。おそらくコーヒーと同年代くらいの少年の声だろう。明らかに不穏な空気だが、周囲の人間は関わらぬが吉、とでも考えているのか、路地から微妙に目を逸らしながら早足で通り過ぎていく。野次馬根性の方が勝ったコーヒーはそっと路地の様子を窺ってみる。そこではコーヒーと同じ制服を着た気の弱そうな少年が、ガラの悪い如何にもな高校生らしき男二人に絡まれていた。

「アイツは確か……」

 コーヒーは気の弱そうな少年の方に見覚えがあった。少年はコーヒーの友達の友達だ。コーヒーに直接関わりはないが、彼に被害が及べば、友達も悲しむだろう。それだけで、コーヒーが行動する理由としては十分だった。コーヒーは路地に入っていく。

「おい」

「ああん?」

「んだテメェ?」

 コーヒーが声をかけると、男達は安っぽい威嚇をしながら彼にメンチを切る。

「もう止めてやれよ。あんたら中学生に手ェ出して、恥ずかしくないのか?」

「んだよ、正義のヒーローマンかぁ? じゃあテメェがコイツの代わりに俺らに寄付してくれんだよなあ? ああん?」

 男の一人がコーヒーの胸倉を掴んでガタガタ揺らす。もう一人の男もニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべている。年も上で数も多い自分達の方が優位だと思っているのだろう。

「取り敢えずもうナメた口利けねえように、教育してやるよ」

 胸倉を掴んでいる男が空いている方の手を振りかぶり、その拳はコーヒーの顔面に――――

「がっ!?」

――届かなかった。コーヒーは男の金的を容赦なく蹴り上げ、男が股間を押さえてアスファルトに崩れ落ちる。

「テメェ!!」

 仲間がやられた事で動揺したもう一人の男が向かってくる。連続で繰り出される男のパンチを紙一重で避け続けると、意外と体力のなかった男はすぐに疲れてきたらしく、動きが鈍っていく。コーヒーはそれを見逃さず、男の顎に横からパンチを叩き込む。脳が揺れた男は仰向けにバッタリと倒れる。

「ふう……痛ッ!?」

 二人目を倒して気を抜いたコーヒーの後頭部に痛みが走る。痛みに顔をしかめながら振り返ったコーヒーの顔面に更に蹴りが入る。

「ぐっ……!」

 後ろに跳ぶことで蹴りの衝撃を逃がしながら距離をとる。そこには見知らぬ男がいた。そいつもまたガラの悪い事から、今倒した二人の仲間だとコーヒーは推測する。

「俺のツレにヒデー事してくれたじゃねえか。おい」

「自業自得だろ」

「あ゛あ゛?」

 気色ばんだ男が一気にコーヒーとの距離を詰め、回し蹴りを仕掛けてくる。とっさに腕でガードしたコーヒーだが、高校生の蹴りを体がまだ出来ていない中学生に受け止めきれる筈がない。コーヒーがバランスを崩したところに男は追撃を仕掛ける。

「うぅ……」

 追撃をモロに受けたコーヒーは壁に叩きつけられる。

 一人目は奇襲、二人目は疲れた所を狙う等、上手く立ち回っていたコーヒーだが、三人目はそうもいかなかった。二人目を倒して気を抜いたところを背後から不意打ち。更に三人目の男は高校生でも大分大柄な部類に入る。中学生のコーヒーとの体格差は凄まじい。この状態でコーヒーが勝つのは絶望的だった。

「ツレの分、しっかり返してやるよ」

 男が笑いながらコーヒーの胸倉を掴み上げる。

「おい、そこでなにしている!!」

「げ」

 遠くから警察官と思わしき人物が駆けてくる。どうやら誰かが通報したらしい。男はコーヒーを離すと一目散に逃げていった。コーヒーは助かった事に安堵しながらも、逃げる為に立ち上がる。

「おい……って、あれ?」

 絡まれていた少年も連れて逃げなければ、と思い路地を見渡したが、彼は何時の間に逃げ出したのか、路地から姿を消していた。少年が無事で良かったとコーヒーは胸を撫で下ろした。

「俺も逃げないと」

 コーヒーも走り始める。あちこち体は痛むが、少年を守れたという喜びでそこまで気にならなかった。




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