テスト前日だろうが雛祭りはする
「不眠ちゃん、これはどうなっているのですか?」
「ここはこう」
「なるほどなのです」
いつもの教室に不眠とミルクのきゃいきゃいと楽しそうな声が響く。不眠は青の色紙でお内裏様を、ミルクはピンクの色紙でお雛様を折っている。いつもはミルクに物を教わる立場の不眠だが、今日は違う。折り紙は夜に時間がたっぷりある不眠の暇潰しの一つだった。
「雛祭りに折り紙で雛人形を折る女の子……。うん、なんだか平和でいいな」
「平和すぎんだろ。雛祭りっつーか、テスト前日だぞ。アイツ等大丈夫かよ」
新聞紙で何かを折りながらミルクと不眠の様子を楽しそうに眺める深夜に、コーヒーはテスト対策プリントを凝視しながら突っ込みを入れる。口ではそう言うコーヒーだが、彼女達が今までコツコツ勉強を重ねていて、そしてミルクは元々頭が良く、不眠には人の倍勉強出来る時間がある事を知っている。要は自分は遊べない事からくる可愛い妬みだった。深夜もそれを理解している為、ニヤニヤと笑うだけだ。
「出来たね。じゃ、飾ろう」
雛人形を完成させた二人は机に人形を飾り、お茶の準備を始める。
「あら、私とした事が日本茶を持ってきたのに雛あられを忘れてしまいました……」
鞄をゴソゴソと探っていたミルクが悲しそうな顔をする。渋い日本茶にお茶請けがないのは寂しい。
「ほらよ」
コーヒーが雛あられの袋を鞄から取り出し、テーブルに置く。
「あら?」
「コーヒー?」
「女子の祭りなんだから、コーヒーなりの気遣いなんじゃない? 全く、分かりにくいよねえ」
目を丸くしている女子陣にフォローを入れながら、深夜はさっきまで自分が折っていた物を二つ取り出す。小さく折り畳まれたそれをそっと開くと、それは足つき三方だった。彼はコーヒーの雛あられを開封すると、三方にザラザラと盛っていく。
「ほら、どうぞ? お茶はコーヒーが淹れてくれるよ」
「は?」
「え、なに? コーヒーは女子が主役の日にお茶を淹れてあげる事も出来ないくらいの甲斐性無しなの?」
深夜の心底馬鹿にしたような表情と台詞にグッと言葉を詰まらせたコーヒーはミルクから日本茶の缶を受け取ると、簡易台所に立つ。
手作りの雛人形。三方に入った雛あられ。ホカホカと湯気の出ているお茶は香りが良い。テーブルの上はささやかだが、女の子の為の祭りらしい可愛らしさを持っている。
「コーヒー、あられとお茶美味しかった」
深夜とミルクが雛人形をもう一対折り始めたのを眺めながら不眠がコーヒーに彼女なりのお礼を言う。ただの感想にしか聞こえないが、コーヒーは彼女の意図をきちんと汲み取ったらしい。
「そりゃ良かった」




