テスト勉強は計画的に
いつもの空き教室で、ミルクと不眠が勉強道具を広げている。ミルクが勉強をするのは割とよく見る光景だが、不眠も一緒、となると珍しい。そんな二人の様子を深夜とコーヒーは漫画を読みながら眺める。部屋には教科書と漫画のページを捲る音とノートにペンを走らせる音だけが響いている。
「少し休憩にしましょうか」
「うん」
キリの良い所まで終わったのか、ミルクが不眠に休憩を提案する。ミルクがお茶の準備を始め、その間に不眠が冷蔵庫からコンビニで買ってきたのであろうエクレアを取り出す。
「二人は勉強しなくて大丈夫なわけ?」
不眠は男子陣にエクレアを手渡しながらそう聞く。
「不眠は僕が勉強してるとこ見たことある?」
深夜は不眠の質問に質問を返す。不眠は彼が勉強している光景を思い出そうとするが、全く記憶から出てこない。
「つまりはそういうことだよ」
不眠の表情から肯定と判断したのか、したり顔で笑う。
「あたしもテスト前にそんな事言いたいよ……」
「まあこの僕だから言える事だよね。美しい上に聡明! 天は二物を与えずとかいう諺があるけれど、全くの嘘だね。だって僕という存在がいるんだから! ハーッハッハッ……ん?」
高笑いを続ける深夜だったが、隣にいるコーヒーからの反応が全くない事を不審に思う。深夜はコーヒーの様子を窺う。
「テスト前……だと…………!?」
強張った声でそう絞り出すように呟いたコーヒーは壁に掛けられたカレンダーの元まで走る。テストの日付を確認した彼は絶望しきった表情でサアッと顔を青ざめさせた。そんな彼を見て深夜は嬉々としていじりだす。
「あれあれあれぇ? コーヒーどうしたの? もしかして、もしかしてだけど……テスト勉強してないの? いや、そんな筈ないよねえ? だってコーヒーは馬鹿なんだから僕みたいに勉強しなくても点が取れるわけないもんね。いくらコーヒーが馬鹿でも節分とかバレンタインのイベント事でテストの存在ごと忘れたりしないよね? テストまでもう二週間切ってるって言うか、最早約一週間前だし、勿論勉強は大分進んでるんだよね? コーヒー、前のテストが終わった時、次は一ヶ月前から勉強するって言ってたもんねえ」
にじり寄りながら言葉を畳み掛けてくる深夜に、コーヒーはウザいと思いつつも全て真実のため、何も言い返せない。不眠はそんなコーヒーに憐れみを込めた視線を向ける。コーヒーの脳裏に浮かぶのは一年間のテストの結果。赤点ギリギリの点数がぐるぐると回る。このままじゃ、確実にマズい。完全にパニックになっているコーヒーの前にホットミルクの入ったマグカップが置かれる。
「コーヒーくん、落ち着いて、今からテスト勉強を始めましょう? 幸い、今回はテスト範囲狭いですし、要点を押さえればなんとかなるのですよ」
ミルクがコーヒーを安心させるように笑顔を浮かべ、彼に英語の教科書を差し出す。コーヒーはすっかり落ち着いたようで、ミルクから教科書を受け取る。教科書を開いてソファーに座り直したが――――
「…………」
三十分後には突っ伏してしまっていた。
「ねえコーヒー」
「なん、ぶっ!?」
コーヒーの顔に深夜がプリントの束を押し付ける。顔からプリントを離して深夜に文句を言おうとするが、それより速く深夜が口を開く。
「それ、あげるよ」
「あ?」
コーヒーは改めてプリントの中身を確認する。そこには決して頭が良いとは言えないコーヒーでも分かるようにテスト範囲の勉強内容が纏められていた。
「深夜、これ……」
「この僕にかかれば馬鹿に勉強を教えるなんて造作無いんだよ」
深夜は顔にかかる前髪を手で払いながらドヤ顔をする。
「コーヒーは僕のマブダチでいれる事、もっと泣いて喜んで感謝してくれていいんだよ? あ、お礼は特大パフェでよろしく」
深夜はいつもの得意気な顔でウインクをした。
「たりめーだ」
コーヒーは再び姿勢を正すと、ペンを持ち直し、プリントの束に向き合った。




