手芸屋での出会い
ある日の休日、ミルクは手芸屋にいた。家庭科の実習で使い切ってしまった白い縫い糸を補充するためだ。
「色々あるのです……」
縫い糸コーナーには一口に白と言っても、沢山の糸が並べられていた。ミルクはそれらを一つ一つ吟味して、一番ピンときた物を購入する事にした。買い物はこれで終わりだが、ミルクは手芸屋を一回りする事にした。手芸屋にはボタンやリボンなど、細々した乙女心をくすぐる物が多数取り揃えられている。年頃の女の子らしく、可愛い物好きのミルクには宝箱のような店だ。
ミルクの目に留まったのは店員が作ったのであろう、手芸作品。ピンクの毛糸で編まれたウサギと水色の毛糸で編まれたクマが仲良く並べられている。
「可愛い……!」
見事にハートを撃ち抜かれたミルクはこの可愛い物を自分でも作りたい、と思った。
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翌日の放課後、ミルクはいつもの空き教室で黙々と手を動かしていた。彼女の手には作りかけの毛糸の作品と金色の細い棒が握られている。深夜はミルクの様子を横目で窺いながらソファーに寝転んで小説を読んでいる。不眠とコーヒーはクラス会の学校全体を使った増え鬼大会に参加していて、教室にはミルクと深夜しかいない。
「ふう……」
集中力が途切れたのか、ミルクが立ち上がり、紅茶を淹れ始める。
「ねえ、ミルク。今日ずっと何してるの?」
深夜がミルクが触っていた毛糸を指差す。今日、ミルクは休み時間はずっとこれを作っていた。一日見ていた深夜だったが、何を作っているのか全く見当がつかなかった。
「これは編みぐるみなのですよ」
「編みぐるみ?」
耳慣れない言葉に深夜は首を傾げる。ミルクは見せた方が早いと判断したのか、スマホを操作して編みぐるみのゾウの画像を彼に見せる。
「へえ、これが編みぐるみか。可愛いね」
「そうなのですよ!」
同意を貰えて嬉しいのか、ミルクのテンションがかなり上がっている。
「で、ミルクは編みぐるみで何を作っているの?」
「不眠ちゃんと深夜くんとコーヒーくんをイメージした動物です。まずは不眠ちゃんのヒツジなのですよ!」
「僕たちをイメージか。なんか嬉しいな。不眠がヒツジってのも、ぽくていいねえ。完成したら見せてよ」
「勿論なのです!」
ミルクは話している間に完成した紅茶の一つを深夜の前に置いた。
その後、四つの編みぐるみが空き教室に置かれるようになるが、それはまた別の話。




