豆投げ大会に使われた豆は参加者が全て食べました。
放課後、ミルクはいつもの空き教室に向かう。彼女は普段使っている通学バッグとは別に今日は保冷効果のある手提げを持っていた。
ガラリと扉を開ける。中にはミルク以外のメンバーが揃っていた。だが不眠だけがソファーの上に三角座りをしてホットココアを飲み、深夜とコーヒーは床に伸びてしまっている。
「……二人はどうしたのですか?」
「うちのクラスの豆投げ大会で集中放火浴びたんだよ」
「豆まきじゃなくて豆投げなのです?」
ミルクのもっともな疑問に不眠は頷く。
「うん、豆投げ。豆が弾丸並みのスピードで投げられてたからね」
イベントが大好きな不眠とコーヒーのクラスは殆どの人間が豆を大量に持参し、朝からずっと豆投げが行われていた。投げ方も皆様々で、普通にまく者から豪速球で投げる者、果てはパチンコで打ち出す者までいた。勿論、不眠とコーヒーも豆投げに参加していた。二人の豆投げ合戦は苛烈を極め、後に彼らのクラスメイトの話のネタになるのだが、それはまた別の話だ。
「深夜は終礼中に乱入しなきゃ集中放火浴びなかったのに……。それにしても今日ずっと豆ばっか食べてたし、暫く豆は見たくないや」
不眠はうんざりしたような口調で言うが、その口元は僅かに緩んでいるのをミルクは見逃さなかった。
「ところでさ、それなに?」
不眠の視線はミルクの持つ手提げに注がれていた。
「これですか? これは恵方巻きなのですよ。手作りしてきたので皆で食べましょう」
「やった! ミルクの恵方巻き大好きなんだよね」
簡易台所に立ったミルクの隣に不眠も並ぶ。不眠の出した皿にミルクが恵方巻きを乗せていく。ミルクお手製の恵方巻きは少し細くて小ぶりだが綺麗に巻かれていて、丁寧に作られたのを感じる。
「コーヒー、深夜、起きろ」
不眠は恵方巻きを机に並べるとコーヒーと深夜にソファーに置いてあったクッションを投げる。
「へえ、恵方巻き。手作りだなんてミルク凄いね」
クッションを抱えながら起き上がった深夜がミルクをそう褒め、コーヒーもそれに賛同するように頷く。
「そんな大層な事ではないのですよう」
ミルクは両頬に手を当てて謙遜するが、褒められて嬉しいのか、顔がニマニマと緩んでいる。
「んじゃあまあ……」
コーヒーの目配せで全員が両手をすっ、と合わせる。
「「「「いただきます」」」」




