エピローグ
へい、まいど。
……何だ、お前さんかい。久し振りだね、虫取り屋。
仕事は上手くいったかい?
そうかい、それなら結構。で、今日は何の用事だい。
今、巷を騒がせている『鬼』の情報が旬だよ。
おい、何だい、不景気な面して。
ま、もっとも、アンタはいつもそんな顔してたっけ。
え? 何だって。『黒い球体』の情報は何処から仕入れたって?
そりゃあ教えられねぇよ。企業秘密だ。情報の入手先にも信頼を失っちまう。なんたって、信用商売だからね。
おい。どうしたんだ虫取り屋。鎌なんか出して。
ち、力づくかい。そ、そりゃぁルール違反だぜ。
何だって? 違う、違うよ。『黒い球体』を盗み出したのは、あたしじゃない。
……確かに、あの球体は情報の宝庫だが。
あ、や、止めろ。あたしじゃないんだ! 信じてくれよ。
商売柄、信用は大事にしてるんだ。
え? 何で『球体が情報の宝庫だ』って知ってるかって?
あ、あ、それは、……そのう。……提供者だ。情報の提供者に聞いたんだよ。おい、信じてくれよ。
わ! ウギャー。手、手がぁぁあああ。
た、助けてくれ、虫取り屋っ。
そ、そうだよ、あたしだよ。あたしが持ち出したんだ。アカシアのバックアップアーカイブってことは、どんな情報でも入ってるって事だ。じょ、情報屋には、喉から手が出るような存在じゃないか。
何て言うか……、魔が差したんだ。許してくれ、虫取り屋。
アンタの情報も、アカシアの情報も、誰にも渡していない!
本当だよ。
だ、だから、勘弁してくれっ。
あ、わ、わわわ、お願いだ。た、助けてくれ。あ、あたしが悪かったから!
金なら返すよ。
だ、だから、こ、殺さないでくれ。
わわわ、た、助けてくれ。
助けて!
た、 たすけ……
(了)
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