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Sランクパーティから追放された回復支援職、俺がいなくなった途端に全員死にかけてるんだが? ~追放ざまぁから始まる、戦わない最強支援職の物語~  作者: 神崎ユウト


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第9話 死なない戦場

 霧が、薄く流れていた。


 視界は悪い。音も、距離感を狂わせる。

 本来なら、最悪の戦場条件だ。


「前線、配置につけ!」


 号令と同時に、部隊が動く。

 兵士、冒険者、混成部隊。


 俺は、中央やや後方に立っていた。

 前に出る必要はない。

 全体が、見える位置でいい。


 ――来る。


 敵の第一波は、予想より速かった。


「接敵!」


 叫び声。

 剣が交わり、魔法が飛ぶ。


 その瞬間、俺は意識を広げた。


 個人じゃない。

 集団だ。


 前列の盾が、ほんの少し早く上がる。

 その裏で、後衛の詠唱が半拍だけ短縮される。

 斥候の踏み込みが、わずかに深くなる。


 ――整える。


 叫び声が、悲鳴に変わらない。


「……っ!?」


 誰かが驚いた声を出す。

 致命打のはずの一撃が、逸れる。


「負傷者は!?」


「軽傷のみ!」


 ありえない報告だった。


 戦線は、崩れない。

 押し返されない。


 グラッドは、前で剣を振るいながら、確信していた。


 ――これだ。


 自分たちが失ったもの。

 いや、失ったとすら気づいていなかった“何か”。


「……死なないぞ」


 バルドが、息を切らしながら呟く。


「なんで……」


 答えは、すぐ後ろにある。


 敵の第二波。

 数が、跳ね上がった。


「来るぞ!」


 俺は、一瞬だけ躊躇った。


 ――やりすぎる。


 どこかで、そう思っていた。

 だが。


 目の前には、命がある。


「……続行」


 誰に言うでもなく、そう呟いた。


 支援範囲を、広げる。

 限界まで。


 戦場全体が、静かになる。


 連携が、噛み合いすぎている。

 無駄な動きが、消えていく。


 敵は、押し切れない。

 こちらは、倒れない。


 戦闘終了の号令が響いたとき、

 地面に倒れていたのは――敵だけだった。


「……死者、ゼロ?」


 将校の声が、震えている。


「軽傷者、数名のみ!」


 ありえない。

 本来なら、数十の死体が転がっていてもおかしくない規模だった。


 ざわめきの中で、俺は気づいた。


 誰も、俺を見ていない。


 違う。

 **全員が、無意識に俺を前提に動いている。**


 それが、怖かった。


 戦後。

 簡易会議室で、アルベルト王子が静かに言った。


「……想定以上です」


 賛辞ではない。

 評価だ。


「この支援は、戦争の形を変える」


 俺は、首を振った。


「変えてはいけないと思います」


 その言葉に、場が静まる。


「俺がいなかったら……」


 言葉を、飲み込む。


 答えは、誰もが知っている。


 会議のあと、グラッドが近づいてきた。


「……すまなかった」


 二度目の謝罪。


 今度は、言葉が重かった。


「俺は……強くなったつもりでいた」


 俺は、彼を見た。


「強いですよ」


 本心だった。


「ただ……一人じゃ、足りなかった」


 グラッドは、何も言えなかった。


 夜。

 前線基地の外で、俺は一人、空を見上げていた。


 星は、綺麗だった。

 今日も、多くの命が残った。


 なのに、胸の奥が冷えていく。


「……この力、使い続けていいのか?」


 誰も答えない。


 ただ、遠くで次の戦いの準備が始まっていた。


 ――俺が、前提になる世界で。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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