表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sランクパーティから追放された回復支援職、俺がいなくなった途端に全員死にかけてるんだが? ~追放ざまぁから始まる、戦わない最強支援職の物語~  作者: 山奥たける


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/33

第30話 善意が壊したもの

 エリスと別れてから、俺はすぐに街を出なかった。


 理由は単純だ。

 確認したかった。


 自分が何を壊し始めているのかを。


 治療所では、いつも通りの光景が続いていた。

 神官は働き、行政は動き、住民は秩序を守っている。


 表面上は、完璧だ。


 だが、細部を見ると違う。


「この件、どう思います?」


 若い行政補佐が、控えめに聞いてくる。


 以前なら、自分の意見を言っていたはずの場面だ。


「……あなたは?」


 そう返すと、彼は一瞬言葉に詰まった。


「私は……

 レオン殿の判断に従います」


 悪意はない。

 不満もない。


 むしろ、安心している。


 別の場所では、神官が同じことを言った。


「あなたが“まだ来ない”なら、

 奇跡は使いません」


 基準では、使ってもいい状況だ。


「なぜ?」


 問いかけると、神官は答えた。


「もし、後であなたが来て

 “使うべきではなかった”と判断されたら……」


 言葉が、続かない。


 責められるのが怖いわけじゃない。

 **正しさが覆るのが怖い**のだ。


 夕方、リーナが静かに言った。


「これさ……

 誰も、間違えなくなってない?」


 その一言で、全てが繋がった。


 間違えない。

 それは、一見すると理想だ。


 だが、間違えないためには――

 **挑戦しない**しかない。


 人は、試さない。

 決めない。

 変えない。


 その代わりに、待つ。


 俺という“正しそうな存在”を。


 夜、倉庫街の外れで、再びエリスに会った。


 今度は、向こうからだ。


「分かった?」


 前置きもない。


「……少し」


 そう答えると、彼女は頷いた。


「善意が壊したのはね」


 静かな声だった。


「建物でも、命でもない」


 視線が、街に向く。


「“試す権利”」


 胸に、重く落ちる言葉。


「人は、本来なら

 間違えながら、調整する」


 エリスは続ける。


「でも、正しさが一つに集まると、

 間違える前に、止まる」


 それが、世界を安定させる。


 同時に。


「世界は、

 自分で治らなくなる」


 俺は、唇を噛んだ。


「……俺は、間違ってますか」


 エリスは、即答しなかった。


「いいえ」


 やがて、そう言った。


「あなたは、正しい」


 だからこそ、厄介だ。


「私も、そうだった」


 彼女は、空を見上げる。


「正しさを否定しなかった。

 だから、集めてしまった」


 沈黙。


「選択肢は、二つある」


 エリスは言う。


「正しさを独占するか」


 それは、管理者の道。


「正しさを、手放すか」


 その先は、見えない。


「……全部、渡すつもりはありません」


 俺は、そう言った。


「でも」


 言葉を続ける。


「このまま集め続ける気も、ない」


 エリスは、初めて小さく笑った。


「それなら」


 一歩、距離を取る。


「あなたは、

 私とは違う終わり方を選べる」


 その言葉で、腹が決まった。


 善意が壊したものは、

 人の心でも、世界でもない。


 **選び続ける力**だ。


 それを取り戻すには――

 俺が、

 正しさの中心から、

 一度降りる必要がある。


 それが、

 次にやるべきことだった。


ここまでご覧いただきありがとうございます。


明日からは1日1話の投稿予定です。


ブックマークをして、続きを楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ