第3話 生存率が、おかしい
次の依頼も、その次の依頼も。
結果は、同じだった。
「……また全員無傷?」
「いや、さすがに偶然じゃないだろ」
討伐を終えてギルドに戻るたび、受付の視線が重くなる。書類を受け取る手が止まり、奥の事務所をちらりと見る回数が増えた。
俺たちは、別に派手な戦いをしているわけじゃない。
強敵を瞬殺したこともない。
ただ――危ない場面が、ない。
「今日も、なんか……余裕あったよね」
宿への帰り道、カイルが首を傾げながら言った。
「分かる。普通なら、誰か一人は焦る場面があるのに」
リーナも頷く。
盾役として、彼女が一番それを感じているのだろう。
「敵の動きが、読めるっていうか……いや、違うな。自分が、ちゃんと動けてる感じ?」
俺は曖昧に笑った。
「慣れただけじゃないですか」
「数日で慣れるもんか?」
カイルは冗談めかして言ったが、目は真剣だった。
ギルドの奥。
木製の扉の向こうで、低い声が交わされている。
「……このパーティ、直近五回の依頼、全員生還です」
「危険度B混じりでか?」
「はい。しかも、消耗がほぼゼロ」
受付の報告に、ギルド幹部のローゼンは指を組んだ。
「支援職が入った、と聞いたが」
「ええ。名前は……レオン、だったはずです」
ローゼンは、その名をゆっくり反芻する。
「戦闘力は?」
「測定値は、平均以下です」
「……そうか」
興味深そうに、彼は笑った。
一方その頃。
別の街のダンジョンで、元パーティは再び撤退していた。
「くそっ……なんで、こんなはずじゃ……!」
バルドが壁を殴る。魔力の消耗が激しい。
エルナの回復魔法は間に合っているはずなのに、誰もが消耗していた。
「回復量は、足りてるのよ……!」
エルナの声には、焦りが滲んでいる。
「でも、減る速度が……!」
グラッドは答えなかった。
答えられなかった。
“いつも通り”のはずなのに、何かが足りない。
だが、それが何か、言葉にできない。
その夜。
リムルの宿で、俺たちは簡単な祝杯をあげていた。
「依頼、続けて受けられそうだな」
リーナがそう言って、俺に杯を向ける。
「レオンのおかげ……って言うと、嫌がる?」
「いえ。正直、よく分からないです」
俺は本音で答えた。
「俺、特別なことはしてません。ただ……ズレてるところを、少し戻してるだけで」
「それが分かる時点で、普通じゃないんだよ」
カイルが即座に突っ込む。
笑い声が起きる。
でも、その中に、ほんの少しの緊張が混じっていた。
その晩、俺は一人で考えていた。
なぜ、ここでは上手くいくのか。
なぜ、前のパーティでは……。
答えは出ない。
出ないまま、日々だけが積み重なっていく。
そして数日後。
ギルドから、指名依頼が届いた。
「レオン。名指しだ」
リーナの声に、俺は目を瞬いた。
「……俺に?」
嫌な予感は、なぜかしなかった。
ただ、静かに思った。
――ああ、見つかったな。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




