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Sランクパーティから追放された回復支援職、俺がいなくなった途端に全員死にかけてるんだが? ~追放ざまぁから始まる、戦わない最強支援職の物語~  作者: 山奥たける


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第28話 崩れたのは現場じゃない

 俺は、その判断を意図的にした。


「この件には、関与しません」


 はっきりと、そう告げた。


 内容は小さなものだ。

 薬の配分変更と、軽症者の隔離運用。


 昨日までなら、数分で決めていた。


「基準は、既に共有されています」


 俺は、会議室を見回す。


「現場で判断してください」


 沈黙が落ちた。


 誰も反論しない。

 誰も怒らない。


 ただ、戸惑っている。


「……分かりました」


 行政官が、少し硬い声で答えた。


 会議は、それで終わった。


 俺は、意識的に距離を取った。


 治療所には行かない。

 指示も出さない。


 “正しい待機”が、どう機能するのかを見るためだ。


 昼過ぎ。


 リーナが、顔をしかめて戻ってきた。


「……進んでない」


「何が?」


「全部」


 短い答えだった。


 様子を見に行くと、現場は混乱していない。


 だが、動いてもいない。


「基準通り、やってます」


 倉庫係は、そう言った。


「でも、基準の“どこまで”を使うかで……」


 神官が、言葉を濁す。


「判断が、割れていて」


 誰かが間違えたわけじゃない。

 命令違反もない。


 ただ。


 **誰も決めていない。**


「……何時間、こうですか」


「朝から」


 被害は、まだ小さい。


 軽症者の回復が遅れただけ。

 命に関わる段階ではない。


 だが。


「あなたが来ない想定を、

 していませんでした」


 行政官のその一言が、全てだった。


 俺は、言葉を失った。


 夕方、ようやく決断が下された。


 基準の一部を緩和。

 軽症者を先に処置。


 結果として、問題は収束した。


 だが、**時間がかかりすぎた。**


 宿に戻る途中、イオナが言った。


「現場は、壊れていません」


「ええ」


「壊れたのは……」


「判断の順番ですね」


 俺が続ける。


 本来は、

 現場 → 判断 → 支援

 だったはずだ。


 今は、

 支援者 → 判断 → 現場

 になりかけている。


「私たち、間違えたわけじゃないんです」


 イオナは、俯いた。


「分かっています」


 それが、一番辛い。


 誰も悪くない。

 正しく、慎重で、真面目だった。


 夜、机に向かう。


 今日、俺は何もしなかった。

 それでも、問題は起きた。


 俺が“助けすぎた”からじゃない。


 俺が“決めすぎた”からだ。


 そして、それを。


 世界が、

 **当然のこととして受け入れ始めている。**


 静かな破綻だった。


 音もなく、

 でも確実に進む――

 崩れ方だった。


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