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Sランクパーティから追放された回復支援職、俺がいなくなった途端に全員死にかけてるんだが? ~追放ざまぁから始まる、戦わない最強支援職の物語~  作者: 山奥たける


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第26話 決めないと動けない街

 翌朝の会議は、静かすぎた。


 昨日と同じ顔ぶれ。

 同じ席順。

 同じ資料。


 違うのは――俺が、そこにいることだけだ。


「では、本日の方針を」


 地方行政官が、そう切り出したところで言葉を止めた。


 視線が、こちらに向く。


「……まず、レオン殿のご意見を」


 俺は、すぐに答えなかった。


「昨日の決定で、十分では?」


 そう返すと、行政官は困ったように笑った。


「ええ。理屈の上では」


 神官が、続ける。


「ですが、今朝から軽症者が増えています」


「数は?」


「昨日より、少し」


 “少し”。

 判断を変えるほどではない。


「では、昨日の方針を継続で」


 俺が言うと、全員が安堵したように息を吐いた。


 会議は、それで終わった。


 早すぎる。


 治療所を回る。

 神官たちは、真面目に働いている。


 判断を放棄しているわけじゃない。

 手を抜いているわけでもない。


「……どう思いますか」


 イオナが、小声で聞いてきた。


「何がです?」


「この街」


 彼女は、周囲を見回す。


「皆、あなたが来るまで、

 “間違えないように”していた」


 その表現は、的確だった。


 間違えない。

 それは、一見すると美徳だ。


 だが。


 昼過ぎ、別の問題が起きた。


 薬の配分だ。


「在庫は、ぎりぎりです」


 倉庫係が報告する。


「優先順位を決めないと」


 行政官が、こちらを見る。


「……決めてください」


 俺は、眉をひそめた。


「昨日、基準を決めたはずです」


「はい」


 即答だった。


「ですが、あなたが来た以上、

 最終判断は……」


 言葉が、濁る。


 神官も、黙っている。


 俺は、そこで初めて理解した。


 **基準があっても、

 決める人間が要る。**


 そして今、この街では。


 その役が、

 俺に集まり始めている。


「……今回は、基準通りで」


 そう告げると、全員が動き出す。


 迷いは、ない。


 夕方、イオナと並んで街を歩いた。


「責められている気は、しません」


 彼女が言う。


「むしろ、安心している」


 それが、一番きつかった。


「私もです」


 正直に答える。


「あなたがいると、

 判断に責任を持たなくて済む」


 彼女は、そう言ってから、慌てて首を振った。


「いえ、楽をしているわけではなくて……」


「分かってます」


 遮る。


「合理的なんです」


 間違えないために、

 正しそうな人に預ける。


 それは、人として自然だ。


 宿に戻ると、リーナが言った。


「今日さ……

 誰も“自分の意見”言ってなくなかった?」


 その一言で、全てが繋がった。


 誰も怠けていない。

 誰も悪意もない。


 それでも。


 この街は、

 俺が来るまで、

 **決断を先送りにしていた。**


 夜、机に地図を広げる。


 アルマだけじゃない。


 同じ構造が、

 他の街にも広がっている気がした。


「……これは」


 呟いた瞬間、背中が冷えた。


 国家管理でもない。

 宗教支配でもない。


 善意と合理性が作った――

 **判断の空白**。


 俺が埋めている、

 危険な空白だった。


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