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Sランクパーティから追放された回復支援職、俺がいなくなった途端に全員死にかけてるんだが? ~追放ざまぁから始まる、戦わない最強支援職の物語~  作者: 山奥たける


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第25話 呼ばれる理由

 呼び出しは、予想していたよりも穏やかだった。


 緊急の赤印もない。

 軍令でも、神殿命令でもない。


 ただの――要請。


「調停役、ですか」


 俺がそう口にすると、王国の使者は頷いた。


「争い、というほどではありません」


 そう前置きしてから、続ける。


「判断が止まっているのです」


 場所は、地方都市アルマ。

 交易と農業の中継点で、特別な戦場ではない。


「支援を巡って、意見が割れました」


 使者は、淡々と説明する。


「神殿は“奇跡の使用基準”を厳格にすべきだと。

 行政は“人的被害を最小にすべきだ”と」


 どちらも、正しい。


「……で、俺ですか」


「はい」


 即答だった。


「あなたなら、どちらにも肩入れしない。

 そう判断されました」


 皮肉のつもりはないらしい。


 アルマに着くと、街は落ち着いていた。

 兵が剣を抜く様子もない。


 それが、逆に奇妙だった。


「来てくれて助かりました」


 迎えに出てきたのは、地方行政官だった。

 年配で、疲れが顔に出ている。


「正直に言います」


 彼は、深く息を吐く。


「あなたが来るまで、決められなかった」


 会議室には、神官と行政官が揃っていた。


 誰も怒っていない。

 誰も声を荒げていない。


 ただ――止まっている。


「疫病は、広がってはいません」


 神官が言う。


「ですが、再発の兆しはある」


「その場合、奇跡を使うかどうか」


 行政官が続ける。


「その判断で、揉めているわけでもない」


 俺は、首を傾げた。


「……では、何を?」


 沈黙。


 やがて、行政官が口を開いた。


「あなたが来た後で、

 どうするかを決めたかった」


 その言葉で、空気の正体が見えた。


「あなたが関わるなら、

 神殿も、住民も、納得する」


 誰かが、そう補足する。


 俺は、椅子にもたれた。


「つまり」


 ゆっくり言う。


「俺が“正解役”ですか」


「……そう聞こえますね」


 否定は、されなかった。


 その日のうちに、結論は出た。


 奇跡の使用は限定的に。

 代替手段を優先。

 状況次第で、柔軟に変更。


 妥当で、無難で、誰も傷つかない。


「さすがですね」


 会議後、行政官が言った。


「あなたが来ると、話が早い」


 褒め言葉のはずだった。


 でも、胸の奥に、引っかかる。


 宿に戻る途中、リーナが言った。


「……問題、あった?」


「表面上は、ない」


 それが、正直な答えだ。


「でも」


 言葉を選ぶ。


「俺が来るまで、

 全員“待ってた”」


 カイルが、低く言った。


「合理的だな」


「はい」


 否定できない。


 誰も悪くない。

 誰も怠けていない。


 それなのに。


 夜、宿の窓から街を見下ろす。


 灯りは多い。

 人は動いている。


 ちゃんと、回っている――ように見える。


 でも、今日一日で確信した。


 ここは、

 **俺が来る前提で、止まっていた。**


 安心感と一緒に、

 微かな違和感が、胸に残った。


 呼ばれた理由は、分かった。


 問題は――

 この状態が、

 “正しい”のかどうかだ。


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