表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sランクパーティから追放された回復支援職、俺がいなくなった途端に全員死にかけてるんだが? ~追放ざまぁから始まる、戦わない最強支援職の物語~  作者: 山奥たける


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/48

第23話 条件付きの保護

 王国の馬車は、治療所の前で静かに止まった。


 軍馬ではない。

 威圧のない、行政用の紋章。


「……逃げる時間、くれないですね」


 リーナが小さく言う。


「逃げる理由も、まだない」


 そう答えながら、俺は馬車を見つめていた。


 扉が開き、降りてきたのは見覚えのある顔だった。


「久しぶりだね、レオン」


 アルベルト王子。

 護衛は最小限。剣も抜かれていない。


「ここまで来るとは思いませんでした」


「来ないと、話ができなくなる」


 王子は、周囲の様子を一瞥した。


 治療所。

 並ぶ市民。

 祈る者と、働く者。


「……見事な現場だ」


 それは賛辞ではなく、評価だった。


 場所を移し、簡素な応接室で向かい合う。


「率直に言う」


 王子は、前置きをしなかった。


「君のやり方は、国家としては扱いにくい」


 否定はしない。

 だが、受け入れもしない。


「だが」


 一拍置く。


「完全に正しい」


 その言葉に、リーナが眉を上げた。


「管理しすぎれば、人が止まる。

 放置すれば、混乱する」


 王子は、指を組んだ。


「君は、その中間に立とうとしている」


 俺は、黙って聞いていた。


「だから、提案だ」


 王子は、一枚の書類を差し出す。


――**特別協力要請書(期間限定)**


「所属は、無所属のまま」


 その一文に、思わず目を留める。


「国家は、君に命令しない。

 支援の内容も、規模も、君が決める」


 信じがたい条件だった。


「その代わり」


 王子の声が、少しだけ低くなる。


「君が関わる現場については、

 国家が“責任を取る”」


 責任。

 それは、庇護でもあり、拘束でもある。


「失敗した時、

 矢面に立つのは君じゃない」


 王子は、真っ直ぐに俺を見た。


「それだけは、保証する」


 沈黙が落ちる。


「……なぜ、そこまで」


 問いかけると、王子は少し笑った。


「君を失えば、

 次はもっと乱暴な手段が選ばれる」


 現実的な答えだった。


「それに」


 彼は、少し視線を外す。


「君のやり方は、

 “人を残す”」


 その言葉が、胸に残った。


「すぐに答えは要らない」


 王子は立ち上がる。


「だが、この街を出る前に、

 一度だけ考えてほしい」


 馬車に戻る直前、王子は振り返った。


「国家は、君を使いたい」


 正直な言葉。


「だが私は、

 君に壊れてほしくない」


 馬車は、静かに去っていった。


 残された書類を、俺は見つめる。


 自由。

 責任。

 期間限定。


「……どう思う?」


 リーナが聞く。


「罠、ではないですね」


 カイルが冷静に言う。


「むしろ、譲歩です」


 イオナは、少し迷ってから言った。


「あなたが関わるなら……

 神殿も、頭ごなしには否定できません」


 全員が、俺を見る。


 選択肢は、三つ。


 受ける。

 断る。

 保留したまま、街を去る。


 俺は、深く息を吸った。


「……一つだけ、決めてます」


「何を?」


「俺は、

 “戻らない”」


 管理される場所にも、

 全てを背負う場所にも。


「でも」


 書類を、静かに畳む。


「この世界から、

 目を背けるつもりもありません」


 夕暮れの街は、まだ生きていた。


 祈る者。

 働く者。

 迷う者。


 その中に、

 俺が立つ余地は、まだある。


 問題は――

 **どんな距離で立つか**だ。


 それを決めるのは、

 今度こそ、俺自身だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ