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Sランクパーティから追放された回復支援職、俺がいなくなった途端に全員死にかけてるんだが? ~追放ざまぁから始まる、戦わない最強支援職の物語~  作者: 山奥たける


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第22話 断るという支援

 夜明け前、治療所の戸を叩く音がした。


 控えめだが、切迫している。

 嫌な予感がして、俺はすぐに立ち上がった。


「次は、こっちです!」


 担架に乗せられていたのは、少年だった。

 呼吸が浅い。高熱。症状は、昨日までと同じ。


「お願いします……!」


 付き添いの女性が、縋るように頭を下げる。


「この子、朝からずっと……

 神官様も、もう……」


 イオナが、唇を噛む。


「奇跡は、使い切りました」


 沈黙が落ちる。


 視線が、俺に集まる。

 期待。焦り。祈り。


 ――できる。


 街全体じゃない。

 一人分なら、問題ない。


 そう、頭では分かっていた。


 それでも。


 俺は、手を伸ばさなかった。


「……すみません」


 自分の声が、やけに遠く聞こえる。


「今は、できません」


 一瞬、誰も理解できなかった。


「……え?」


 女性が、目を見開く。


「昨日は、助けてくれたじゃない!」


 責める声じゃない。

 混乱だ。


 俺は、息を吸って、言葉を選んだ。


「昨日は、やりすぎました」


 正直に言う。


「俺が全部やると、

 ここにいる人たちが、動けなくなる」


 理解されないのは、分かっていた。


「それでも……!」


 女性の声が、震える。


 その時、イオナが一歩前に出た。


「私が、看ます」


 彼女は、迷いなく言った。


「奇跡はありません。

 薬も、十分じゃない」


 それでも。


「でも、私は神官です」


 彼女は、少年の手を取る。


「祈りは、まだ残っています」


 俺は、その横に立った。


「俺は、補助します」


 言葉を選ぶ。


「命を“戻す”ことはしません。

 でも、耐える力を、少しだけ整えます」


 境界線。


 越えないと、決めた線。


 治療は、長引いた。


 奇跡は起きない。

 劇的な回復もない。


 それでも、少年は――

 朝を迎えた。


「……生きてる」


 母親が、泣き崩れる。


 安堵と、疲労と、疑問が入り混じった顔。


 外に出ると、リーナが言った。


「……きついね」


「はい」


 否定できなかった。


「でも」


 カイルが、静かに続ける。


「さっきの、あれがなかったら……

 この街、あんた前提になってた」


 その通りだ。


 イオナが、治療所から出てきた。


「……怖かったです」


 正直な声だった。


「でも、

 私が“神官でいられた”気がします」


 その言葉で、少しだけ救われた。


 昼頃、噂はすぐに広がった。


「助けなかったらしい」

「選ぶんだって」

「前みたいに、全部じゃないらしい」


 不満もある。

 失望もある。


 それでも、暴動は起きなかった。


 人は、考え始めていた。


 夕方。

 街道の向こうに、王国の使者の馬車が見えた。


「……来ましたね」


 リーナが言う。


「ええ」


 俺は、目を逸らさなかった。


 全部は、救えない。

 でも、全部を奪わない。


 今日、俺がしたのは――

 **助けなかったこと**じゃない。


 選ぶ余地を、残したことだ。


 それが、

 今の俺にできる、支援だった。


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