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Sランクパーティから追放された回復支援職、俺がいなくなった途端に全員死にかけてるんだが? ~追放ざまぁから始まる、戦わない最強支援職の物語~  作者: 山奥たける


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第20話 祈りが追いつかない

 翌朝、治療所の前には列ができていた。


 昨日より、明らかに多い。


「……増えてますね」


 リーナが、低く言う。


「噂が広がった」


 カイルが答えた。


「“祈らなくても治る”ってな」


 イオナは、その言葉を聞いて俯いた。


「違うんです」


 彼女は、絞り出すように言う。


「祈りが要らなくなったわけじゃない。

 ただ……追いつかないだけで」


 現場は、限界だった。


 高熱、呼吸困難、意識障害。

 重症者の割合が、明らかに増えている。


「奇跡、残り二回」


 イオナが、静かに告げる。


「……重症者に使います」


 正しい判断だ。

 でも、それで救える人数は限られる。


 俺は、深く息を吸った。


 ――抑えろ。


 昨日と同じことを、同じ規模で。

 それでいいはずだ。


 だが。


「次の患者、来ます!」


 担架が運び込まれる。


「その次も!」


 そして、また。


 俺は、気づいた。


 “整える”だけじゃ、追いつかない。


 ズレが、街全体に広がっている。


「……範囲を、広げます」


 言葉にした瞬間、イオナがこちらを見た。


「それは……」


「分かってます」


 俺は、遮った。


「でも、今やらないと」


 誰かが、倒れる。


 俺は、意識を広げた。


 個人でも、治療所でもない。

 **街**だ。


 空気、水、人の動線。

 感染の流れ。


 ――整える。


 一瞬、視界が揺れた。


「……熱が下がってる?」


「外の患者も……?」


 ざわめきが、広がる。


 奇跡は、使っていない。

 祈りも、ない。


 それなのに。


「……街全体が、落ち着いてきてます」


 助手の声が、震える。


 イオナは、立ち尽くしていた。


「……これは」


 言葉が、続かない。


 治療所の外。

 人々が、空を見上げている。


 何かが起きた、と直感で分かる。


 俺は、膝に手をついた。


「……やりすぎたか」


 胸が、重い。

 息が、少し苦しい。


 それでも、街は救われつつあった。


 死者は、出ていない。


 だが。


 遠くで、神殿の鐘が鳴り始めた。


 一つではない。

 警鐘だ。


 イオナが、ゆっくりと俺を見る。


「……上が、気づきます」


 その声には、確信があった。


「これは、奇跡じゃない」


 彼女は、はっきり言った。


「神の領域を越えています」


 俺は、何も言えなかった。


 助けたい。

 救いたい。


 その気持ちは、嘘じゃない。


 でも今、俺がやったのは――

 **一人を支えたことじゃない。**


 街そのものを、

 “正常”に戻した。


 それは、誰にも委ねられていない力。


 夕暮れ。

 神殿からの使者が、治療所に向かってくるのが見えた。


 その背後には、

 国家の紋章をつけた馬車もあった。


「……来ますね」


 リーナが、静かに言う。


 俺は、立ち上がった。


「ええ」


 これは、もう現場の問題じゃない。


 祈りが追いつかない場所で、

 俺は――踏み込みすぎた。


 その代償を、

 これから払うことになる。


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