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Sランクパーティから追放された回復支援職、俺がいなくなった途端に全員死にかけてるんだが? ~追放ざまぁから始まる、戦わない最強支援職の物語~  作者: 山奥たける


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第18話 離脱

 準備は、驚くほど静かに進んだ。


 荷物は、ほとんど要らない。

 ここで与えられたものは、ここに置いていく。


「……本当に、いいんですか」


 小さく聞いたのは、俺のほうだった。


「いいえ」


 セラフィナは、はっきり言った。


「良くはありません。

 ただ、必要です」


 彼女は、いつもの文官服ではなかった。

 目立たない色合いの外套。街に溶ける格好。


「正式な決定は、明日の朝です」


 淡々とした説明。


「その時点で、あなたは

 “保護対象”から“隔離対象”に変わります」


 言葉が、胸に落ちる。


「だから、今夜です」


 逃げる、という言葉は使われない。

 最初から、使うつもりもない。


 施設の門は、閉じられていなかった。


 警備は、いる。

 だが、見ない。


 それが、答えだった。


「……止めないんですね」


 俺がそう言うと、セラフィナは小さく笑った。


「止める権限は、ありません」


 一拍置いて、続ける。


「見なかったことにする権限なら、あります」


 夜の空気は、冷たい。

 だが、息はしやすかった。


 門を越えた瞬間、

 何かが、確かに外れた。


「これから、どうしますか」


 問われて、初めて考える。


「……まだ、分かりません」


 正直な答えだった。


「でも」


 言葉を探す。


「“支援しなきゃいけない場所”じゃなくて、

 “支援したい場所”に行きたいです」


 セラフィナは、静かに頷いた。


「それで、いい」


 歩き出してから、気づく。


 振り返っていない。

 未練がないわけじゃない。


 ただ、もう戻れない。


 遠くで、鐘の音が鳴った。


 夜明けを告げる音。


 その頃、王城では――

 正式な決定が下されていた。


「対象レオンを、

 一時的に世界秩序維持機構下へ移管する」


 だが。


「……所在不明?」


 報告に、空気が凍る。


「はい。

 保護施設から、姿を消しています」


 アルベルト王子は、目を閉じた。


「……間に合わなかったか」


 怒りは、なかった。

 ただ、覚悟があった。


「捜索は?」


「形式上は、行います」


 軍部の男が答える。


「ですが――

 力づくは、避けるべきかと」


 それは、全員が理解していた。


 力づくで連れ戻した瞬間、

 彼は“敵”になる。


 夜明け。

 街道を歩きながら、俺は思った。


 これで、誰の命令もない。

 誰の予定表もない。


 守られていない。

 管理も、されていない。


 ――だからこそ。


 足元は、不安定だ。

 でも。


「……軽いな」


 胸の奥が、久しぶりに。


 世界は、俺を必要とする。

 でも、今は。


 俺が、

 **俺自身を必要としている。**


 支援は、まだ捨てていない。

 ただ――


 誰の機能でもなく、

 誰かの道具でもない。


 その状態で、

 もう一度、世界に触れてみる。


 それが、

 俺の選択だった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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