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Sランクパーティから追放された回復支援職、俺がいなくなった途端に全員死にかけてるんだが? ~追放ざまぁから始まる、戦わない最強支援職の物語~  作者: 神崎ユウト


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第15話 神の領域

 面会申請は、珍しく即日で通った。


 ただし、条件付き。

 場所は施設内。立ち会いあり。


「宗教関係者、ですか」


 セラフィナの声は落ち着いていたが、目は警戒している。


「王国神殿の代表だそうです。

 正式な抗議……というより、確認、ですね」


 確認。

 その言葉が、妙に引っかかった。


 応接室に現れたのは、白を基調とした法衣の男だった。

 年齢は五十前後。背筋が伸び、視線に迷いがない。


「はじめまして、レオン殿」


 男は、静かに頭を下げた。


「私は大神殿付き神官、ユリウスと申します」


 名前を聞いた瞬間、空気が変わる。

 セラフィナが、わずかに息を呑んだ。


「単刀直入に伺います」


 ユリウスは、前置きをしなかった。


「あなたの支援は、

 神の加護を“上書き”していますか?」


 一瞬、言葉を失った。


「……分かりません」


 正直に答える。


「ただ、結果として……

 神官の奇跡が発動しない事例は、あります」


 ユリウスは、ゆっくりと頷いた。


「やはり」


 まるで、確信していたかのように。


「本来、回復や補助は、神の領域です」


 その言葉は、責める調子ではなかった。


「人が踏み込めるのは、その“外縁”まで」


 彼は、俺を真っ直ぐに見た。


「ですが、あなたは違う。

 あなたの支援は、人の在り方そのものを整えている」


 それは、初めて聞く表現だった。


「それは……悪いことなんですか」


 問いかけると、ユリウスは少しだけ目を細めた。


「悪ではありません」


 即答だった。


「ですが、危険です」


 部屋の空気が、張りつめる。


「人は、神に委ねることで

 自分の限界を受け入れてきました」


 救えない命。

 叶わない願い。


「それがあるから、人は選び、祈る」


 ユリウスは、静かに続ける。


「あなたの支援は、それを不要にする」


 ――選ばなくていい。

 どこかで聞いた言葉が、胸を刺す。


「国家は、あなたを守り、管理しようとしている」


 視線が、セラフィナに一瞬だけ向く。


「ですが、我々は違う」


 ユリウスは、はっきり言った。


「あなたを、**止める必要がある**」


 言葉は穏やか。

 内容は、重い。


「今すぐ排除する、という話ではありません」


 それでも、意味は十分だった。


「あなたの存在が広まれば、

 信仰は揺らぎ、秩序は壊れる」


 俺は、拳を握った。


「……俺は、人を助けたいだけです」


「ええ。分かっています」


 ユリウスは、少しだけ悲しそうに笑った。


「だからこそ、厄介なのです」


 面会は、短時間で終わった。


 ユリウスは、最後にこう言った。


「あなたが、どこまで踏み込むのか。

 我々は、見ています」


 扉が閉まる。


 しばらく、誰も喋らなかった。


「……国家だけじゃ、なかったんですね」


 俺がそう言うと、セラフィナは小さく頷いた。


「ええ。

 あなたは今、複数の“正義”の中心にいます」


 その夜。

 施設の外で、小さな祈りの列ができていた。


 怪我人の家族。

 助かった兵士。


 誰も、俺を責めていない。

 むしろ、感謝している。


 それでも。


 俺は理解した。


 国家は、俺を使おうとする。

 宗教は、俺を止めようとする。


 どちらも、

 世界を守るためだ。


 ――じゃあ。


 俺は、

 何を守ればいいんだろうな。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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