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Sランクパーティから追放された回復支援職、俺がいなくなった途端に全員死にかけてるんだが? ~追放ざまぁから始まる、戦わない最強支援職の物語~  作者: 神崎ユウト


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第12話 選ばなくていい日々

 目覚ましが鳴る前に、目が覚めた。


 カーテンの向こうは、朝の光。

 鳥の声が聞こえる。静かで、穏やかだ。


「……よく眠れたな」


 それが、まず違和感だった。


 以前は、眠りが浅かった。

 戦場の音や、仲間の気配が、夢に残っていたからだ。


 今は、何もない。


 朝食は、決まった時間に運ばれてくる。

 栄養も味も、申し分ない。


「おはようございます」


 セラフィナが、いつものように入ってくる。


「体調はいかがですか?」


「問題ありません」


 事実だった。


「本日の予定です」


 彼女は、淡々と説明する。


「午前は休養。午後に報告書確認。

 夕方に短時間の支援要請が一件あります」


 俺は、首を傾げた。


「……選択肢は?」


「今回は、ありません」


 そう言ってから、彼女は付け加えた。


「ですが、負担は軽い内容です」


 断る理由も、悩む理由もない。

 用意された“正解”。


 午後の支援は、後方部隊への短時間補助だった。

 戦闘はない。怪我人も出ない。


 俺は、言われた通りの範囲だけを整えた。


「これで十分です」


 将校が満足そうに言う。


「あなたがいれば、安心ですね」


 その言葉に、返す言葉が見つからなかった。


 施設に戻ると、新しい通達が届いていた。


――支援範囲、暫定固定。


「……固定?」


 思わず、声が出る。


 セラフィナは、すぐに説明した。


「効率化の一環です。

 あなたの負担を減らすための措置ですよ」


「俺の判断は?」


「今回は、不要です」


 優しい声。

 でも、はっきりしていた。


 夕方、庭を歩いていると、遠くから訓練の音が聞こえた。

 剣のぶつかる音。叫び声。


 俺は、無意識に立ち止まる。


 ――行かなくていい。


 そう、分かっている。

 それでも、足が動かない。


「レオンさん」


 セラフィナが、隣に来た。


「気になりますか?」


「……はい」


「でも、今日はあなたの仕事ではありません」


 正しい。

 正しすぎる。


「あなたがいない前提で、現場は回るべきです」


 それは、彼女なりの配慮だった。


 夜。

 部屋で、一人考える。


 今日は、誰も死ななかった。

 俺がいなくても。


 それなのに――

 胸の奥が、落ち着かない。


 机の上に、新しい予定表が置かれている。


 一週間分。

 すべて、既に埋まっていた。


「……選ばなくていい、か」


 呟いた瞬間、背筋が冷えた。


 楽だ。

 安心だ。


 でも――

 これは、本当に俺が“支援している”状態なのか。


 窓の外で、夜風が揺れる。


 俺は、初めて思った。


 この場所は、

 俺を守っている。


 同時に、

 俺が“何者か”になる余地を、静かに削っている。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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