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Sランクパーティから追放された回復支援職、俺がいなくなった途端に全員死にかけてるんだが? ~追放ざまぁから始まる、戦わない最強支援職の物語~  作者: 神崎ユウト


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第11話 保護措置

 王国の用意した施設は、想像していたものとは違った。


 鉄格子も、見張り塔もない。

 白い石造りの建物で、庭まで整えられている。


「……思ったより、普通ですね」


 正直な感想だった。


「ええ。ここは“保護施設”ですから」


 そう答えた女性が、隣に立っていた。


「はじめまして。

 王国文官のセラフィナと申します」


 柔らかな声。

 年は、俺より少し上だろうか。


「今日から、あなたの生活と連絡窓口を担当します」


 監視、とは言わない。

 管理、とも言わない。


 あくまで“担当”。


 部屋は広く、清潔だった。

 窓も大きい。鍵は――外からは掛からない。


「外出は、可能ですか?」


「はい。ただし、事前に行き先を教えてください」


「……理由は?」


「あなたを守るためです」


 即答だった。


 食事は温かく、量も十分。

 寝具も、今までで一番いい。


「快適でしょう?」


 セラフィナが、さりげなく聞いてくる。


「はい。ありがたいです」


 それは、本心だった。


「良かった。

 あなたは、ちゃんと休むべき人ですから」


 その言葉に、少しだけ胸が詰まった。


 午後。

 簡単な面談が行われた。


 質問は、どれも穏やかだ。


「疲れは残っていませんか」

「眠れていますか」

「不安に思っていることは?」


 尋問ではない。

 カウンセリングに近い。


「……俺が、いなくても大丈夫だと思いますか」


 ふと、聞いてしまった。


 セラフィナは、少しだけ考えた。


「短期的には、問題が起きます」


 はっきり言う。


「でも、世界はすぐには壊れません」


 その言葉に、救われた気がした。


「あなたが全部背負わなくてもいい」


 誰かに、そう言われたのは初めてだった。


 数日が過ぎる。


 依頼は、制限された。

 前線への同行は、週に一度まで。


 代わりに、報告書と聞き取りが増える。


「今日は、ここまでで大丈夫です」


 セラフィナは、いつもそう言って区切る。


 断れない空気は、ない。

 だが――選択肢も、少ない。


 ある日、リーナが面会に来た。


「元気そうだね」


「うん。……元気すぎるくらい」


 冗談めかして言ったが、彼女は笑わなかった。


「外、あんまり出てないでしょ」


 図星だった。


「そのうちね」


「“そのうち”が、いつか分からなくなるのが一番怖いんだよ」


 彼女の言葉が、胸に残った。


 夜。

 庭を歩いていると、セラフィナが声をかけてきた。


「慣れましたか?」


「少し」


「それは、良いことでもあり……危険なことでもあります」


 彼女は、遠くを見るように言った。


「守られる生活は、楽です。

 でも、選ばなくてよくなる」


 風が、木々を揺らす。


「あなたが、何を選ぶ人なのか。

 それだけは、失ってほしくない」


 部屋に戻ると、新しい通達が届いていた。


――支援対象、指定変更。


 次の作戦名と、日時。


 俺は、紙を見つめた。


「……もう、始まってるな」


 誰に言うでもなく、呟く。


 この場所は、守ってくれる。

 同時に――少しずつ、俺を狭めていく。


 まだ、息はできる。

 だが、空は以前より、遠かった。


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