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第85話 コンデンサーとプライバシー

 口から出任せで言った「電撃魔法」が研究に加わった。これは本当に危険な魔法だから室内で練習できるようなものでなく、レーザー魔法をしている場所で行う。


 雷を起こすこと自体は簡単にできた。たとえば私が空中に水魔法で小さな氷の粒を大量につくる。そのあたりに聖女様が風魔法で強烈な渦をつくる。すると氷の粒同士がぶつかり合い、静電気が溜まってやがて小さな落雷がおきた。

 問題は落雷場所のコントロールが難しい。というよりもどこに落雷するか、予想がつかない。聖女様と二人、このコントロールに苦労していたので、フローラ先輩に様子を見てもらった。

「なかなか苦労してるわね、だけど避雷針があればそこに落ちるんだろうね」

「そうだけど避雷針じゃ、攻撃にはつかえないわよ」

「その避雷針の下に大きいコンデンサーみたいなのおけないかな? そしたら電気貯められるよ」

「その手があったか!」


 コンデンサーは、電気を溜め込む部品である。電気回路には必ずと言っていいほど組み込まれているし、高校の物理でも習う。フローラ先輩は柏の超強磁場実験施設で見慣れているので、こうした発言につながったのだろう。私も聖女様も電撃の位置をコントロールすることに気が行き過ぎて、高校物理レベルのことをすっかり失念してしまっていた。


「問題はコンデンサーの容量と耐圧ね。雷の電圧・電流だと、すぐパンクするわよ」

「そっか~、それもそうよね。私、直流電源として使えないかと思ったんだけど」

「まあ大量に作って、コンデンサーバンクを作るんだろうね」

「ああ、パルス磁場って、そうやってつくるのよね」


 電磁石の磁力を上げようとして強い電流を流すのは大変である。電流を維持するのも大変だし、超伝導電流でなければその電流の発熱もすごいことになる。また、電磁石の作る磁場により電磁石のコイル自体に外側に広がるような力がかかる。現状、定常磁場(時間的に変化しない磁場)をつくる電磁石は、磁場の強さに関しては超電導磁石にかなわない。ただ超電導磁石も、自身のつくる磁場により超電導自体が壊れるため限界がある。

 その限界を超えて大きな磁場を作ろうとすると、電磁石に短時間に大電流を流すことになる。磁場が短時間だけ生成されるため、これをパルス磁場という。電磁石が破壊されない領域なら超電導磁石の2倍以上の磁場が作れ、電磁石が破壊されることを許容すれば超電導磁石の10倍以上の磁場が作れる。大電流を流すためには大量のコンデンサーを接続したコンデンサーバンクを用意する。そこに電気をためこみ、一気に電磁石に電流を流すのだ。

 フローラ先輩は研究上、柏の超強磁場実験施設に出入りしていたからその辺の事情に詳しい。


「とにかく聖女様は電撃魔法の練習をしなよ。コンデンサーに関してはここじゃ製造は無理」

「そうだね、でもさ、基礎的なデザインはできるんじゃない?」

「うん、金属部品はネリス、非金属のものはケネスの知識を使ってやってみよう。次のゼミで話し合えばいいんじゃない」

「そだね、二人には下調べしといてもらおう」

「下調べって、資料はないわよ」

「ま、記憶を探るっていうか」

「それさ、あんたたちの心を読む魔法、使えるんじゃない?」

 ここで私は口を挟んだ。

「あの、それはそうですけど、記憶を探るのって、下手するとプライバシーの問題があると思うんですが」


 人はそれぞれ、思い出したくない記憶、知られたくない過去というものがあるものだ。そう考えていたら聖女様が言った。

「私、過去を知られてもいいわよ」

「あんたの話はしていない。あんたは自分で言わなくても、みんなわかってるから」

「ひど~い」

 聖女様が口を尖らせ、護衛の騎士さんたちが笑いをこらえているのがおかしかった。

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