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第79話 対策会議

「悪いんだけど、状況を説明してもらえないだろうか。アンの認識と武官長殿たちの認識に差があるようなんだよね」

 聖騎士団の作戦室で、ステファン殿下から私は状況説明を求められた。しかたなく説明を始める。ただ読心魔法が絡むので、フローラ先輩に結界を張ってもらう。そのことで騎士たちの緊張が高まるのが私にもよくわかった。


「ヴァルトラントからの受験生の中に、戦争で父親を亡くした人がいました」

「名前は?」

「アナベルという名でした、武官長様」

「うむ、マティアス第一騎士団長」

「はい」

「その者についての調査結果は?」

「はい」

 マティアス団長は持参の書類を広げ、

「とりあえずの事前調査では、確かに戦争の被害者でありますが、素行・言動に問題はありませんでした」

と報告すると、聖女様は不満そうに言った。

「マティアス様、私、受験生についてそのような調査しているの、存じませんでしたが」

「申し訳ありません、お伝えしたらかならずご反対されるかと」

「もちろんです、今この瞬間も、反対です」

「申し訳ありません、国王陛下のご裁可をいただいております」

 聖女様の口が再び尖りだした。

「アン、君のことを心配してのことだから、ことを荒立てないで」

 ステファン先輩がなだめる。この人がいないと話が進まない気がしてきた。

 私は自分の話を続けることにした。

「アナベルの心を読んだところ、多少の敵意は感じました。ただメモにも書きましたが、出身地の村長は聖女様を高く評価しているらしく、アナベルは自身の感情と、聖女様の評判とのちがいにとまどっているようでした」

「ほら、そう言ったじゃない」

 聖女様が言うのを、またもステファン先輩が「まあまあ」となだめた。私はとにかく話を続ける。

「アナベルはですね、聖女様の本来の姿を女子大で見極めたいと考えていました」

「殺意は?」

「ありません」

「だからおおげさなんです」

 聖女様がまた口を出し、ステファン先輩がなだめる。それでも納得できない聖女様は、

「だけどですね、こんなことで毎回こんな対応してたら、入試なんてできないですよ」

と話を続けた。


 私としては時間が無いなかでぱっぱとやってしまったのだが、その報告の仕方がわるかったのか、気になってしまう。いろいろと議論が続いていたが、私はその議論が頭に入らなかった。


「みなさん! ちょっといいですか」

 フローラ先輩が少し大きい声を出した。

「まず玲子ちゃん」

「はい」

「今回の玲子ちゃんの行動は100点満点」

「え、でも混乱を招いてしまいました」

「それは、情報を受け取る側の問題。情報を得た玲子ちゃんが下手に情報を加工してしまったら、そのあとの人が正確に判断できなくなる」

「はい」

「次に聖女様」

「はい」

「みんなが大げさにして不満なのはわかるけど、みんなベストを尽くしてる。事前に決めたプロトコルに従って動いているんだから、あんたがそれに不満を示しちゃだめ」

「は~い」

「あのね、不満をもっちゃいけないって言ってるんじゃない、それはすべてが終わったあとで反省会でもやって、みんなで考えればいいんだよ。今は事態が進行中」

「うん、わかった。ごめん」

 するとフローラ先輩が怖い顔をした。それを見て聖女様は態度を改めた。

「みなさん、職務を忠実にこなしているのに不満を漏らし、申し訳ありませんでした

「うん、よし、それでレギーナさん」

「はい」

「とにかくこの入試の間同様のことがあれば、今日と同じ対応でいいと思います。反省、改善は次回の入試からでいいと思います。そうよね、聖女様」

「はい、そのとおりです」

「承知しました」

「それからマティアス様」

「うむ」

「アナベルさんの調査は、継続したほうがいいと思います。聖女様、いい?」

「はい、正式にお願いします」

「承知した」

「武官長様」

「うむ」

「このような状態ですから、陛下への報告をおねがいしてもよろしいでしょうか」

「明日の朝の報告でよいかな」

「ええ、事態が切迫しているわけではないですから」

 するとステファン先輩が発言した。

「もしかして僕が明日、一緒に報告したほうがいいだろうか」

「う~ん」

 今度はヘレン先輩が発言した。

「いや、殿下、大げさになっちゃうから、やめといたほうがいいと思う」

「そうか」

 するとネリス先輩も、

「そうじゃな、大事にするとヴェローニカ様が甲冑を着て登場するんじゃないか?」

と言って、みんなで大笑いした。


 そのあとちょっと、アナベルの合否について議論になった。

「聖女様、そのアナベルだったか、合否はどうするのでしょうか」

 武官長さまがおそるおそるという感じで質問した。

「はい、面接は全く問題ありませんでしたから、採点がおわってませんからなんとも言えませんけど、筆記の結果次第ですね」

「そうですよね」

 私は魔法を使わなくとも、武官長様の考えはよくわかった。国防の責任者としては怪しい者は確たる証拠がなくとも排除したいのであろう。しかし女子大の選考は武官長の責任外であり、聖女様の管轄内での話である。ただの大学の選考であれば国防を理由に合否の干渉もできそうなものだが、女子大の実質上の責任者の聖女様は聖騎士団長だからそれもやりにくい。それでも武官長様は聖女様の不興を買いかねないのを覚悟で一言言わずにはいられなかったわけだ。


 あとで知らされたのだが、第一騎士団長が呼ばれたのは理由があった。ノルトラントで国外の諜報関係は第一騎士団が担っているそうだ。


 翌朝女子大に出勤すると、甲冑姿のヴェローニカ様が来ていた。私と聖女様は思わずお互いの顔を見合わせてしまった。

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