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第78話 温度差

 夕方になり、私は身体検査から開放された。なにか騒ぎがおきた感じはなかったから、アナベルは問題を起こさなかったらしい。とにかく予定通り、女子大の会議室に向かった。


 会議室に行くと、身体検査担当の人たちは半分くらい到着していたが、面接担当者たちはだれも来ていなかった。受験者は先に身体検査をしてから面接を受けるから、面接担当者のほうが終わるのが遅いのは自然である。

 とはいうものの私は心配で、面接会場に言ってみることにした。警護の騎士マルティナがついてきてくれた。


 女子大のキャンパス内には面接が終わった受験生たちがパラパラと見える。私はアナベルがいないか目だけで探すが見当たらなかった。

 面接会場の建物に入ると、ちょうど面接会場から聖女様が出てきた。

「聖女様!」

 ほっとしてかけよると、私がわざわざ来た意味は伝わったのだろう。

「玲子ちゃん、ありがとう。私は大丈夫。あの子も大丈夫」


 会議室にもどると、すぐに面接担当者、身体検査担当者は全員そろった。レギーナさんが聖女様に何事か耳打ちし、聖女様はすぐに話しを始めた。

「みなさん、今日はお疲れ様でした。なにか問題はありましたか? ありませんか、では、なにかありましたら明日のアサイチの打ち合わせでご報告ください」

 聖女様は不自然に話を早く打ち切ろうとしている。みなそれがわかるから、だれも発言しなかった。

「ではまた明日、予定通りお願いします。解散」


 今度はヘレン先輩が仕切りだした。

「聖女様、騎士団でちょっと打ち合わせしよう。玲子ちゃんも来て」

「はい」

「レギーナさん!」

「はい!」

「だれか早馬を、第一騎士団団長へ。聖騎士団に急いで来てもらって」

「では私が」

「いや、レギーナさんは聖女様についていて。第一騎士団はだれか他の人でいいから」

「承知しました」

「レイコさん!」

 マルティナが私に呼びかける。

「はい!」

「聖女様のとなりにいてください」

 私が聖女様のすぐとなりに移動すると、マルティナもすぐ横にきた。なんと手を剣にかけている。聖女様はというと、なんと不満そうに口を尖らせていた。


 私と聖女様は周りをガッチリとガードされ、聖騎士団の作戦室に送り届けられた。作戦室は去年の秋に見学したとき以来だ。


 作戦室は常時何人か騎士がつめていて、国家の緊急事態にすぐ対応できるようにしいている。戦時はともかく今のような平時では、作戦室は演習のときくらいしか使われない。その作戦室に私達は送り届けられた。


 作戦室に騎士たちがどんどん増えてきた。どの騎士も席にはつかず立ったまま、片手を剣にかけている。つまり騎士たちは国家の緊急時に警戒しているのではなく、聖女様の安全のために警戒しているのだ。

 当の聖女様は相変わらず口を尖らせ、背もたれによっかかって足をブラブラさせている。

「あのさ、レギーナ」

 聖女様がレギーナさんに話しかけてもレギーナさんは、

「聖女様、ご安心ください。第一騎士団長もまもなく到着の予定です」

と殺気立ったまま取り合おうとしなかった。


 私はちょっとおもしろかった。


 もとはと言えば、ヴァルトラントからの受験者アナベルである。アナベルは先の戦争で父上を亡くし、多少恨みを聖女様に持っているようだった。ただその敵意は殺意というほどのことはなく、むしろ聖女様の本当の姿を知りたいようだったのだ。私は任務として彼女の心を読み、報告をしたのだが騎士団の人たちは過剰に反応しているようだ。聖女様も騎士たちの反応が過剰だと思っているらしく、その証拠が不満なときに出る口を尖らせるクセに出ている。


「ダミアン第一騎士団長様! ご到着!」

 号令が作戦室に響く。ただ誰も礼をしない。ダミアン団長もそれを気にせず、つかつかと聖女様と私のところにやってきて、跪いて礼をした。

「聖女様、遅くなり申し訳ありません」

「ダミアン団長、急にお呼びだてし申し訳ありません。どうも部下たちが過剰に反応しているようで」

「とんでもありません。聖騎士団の団員たちのお陰で聖女様のご安全が守られているのです。あと、武官長も間もなく参ります」

「え、本当ですか、困ったなぁ」

「申し訳ありません。最大速度で参るはずです」

「いえ、来ていただくほどのことは」

「とんでもありません、早急に前後策をねりませんと」

「はぁ」


 もとが私の報告からとは言え、守られる聖女様と、守る側の人々の温度差が面白かった。


 ほどなくしてマティアス武官長が到着した。こちらも第一騎士団長と同様、臣下の礼をとっている。いっしょにステファン殿下もやってきた。


 ステファン殿下がやって来たときの聖女様の反応も面白かった。殿下がいらしたとわかった瞬間、とっても嬉しそうにし、まわりに武官長様、第一騎士団長様がいらっしゃるのを思い出してちょっと恥ずかしそうにし、そしてまたこの事態に困ったような顔になった。


「玲子さん」

「は、はい!」

 私はステファン殿下から急に呼びかけられた。まったく予期していなかったので変な声で返事してしまった。

「悪いんだけど、状況を説明してもらえないだろうか。アンの認識と武官長殿たちの認識に差があるようなんだよね」

すみません、1話とんでいました。

79話分が78話として公開してしまいました。

お時間があれば、お読みいただければと思います。

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