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第75話 引っ越し

「では聖女アンとサッポロのレイコの心を読む魔法について、知らせる範囲はここにいる者をのぞくと武官長、神官長、聖女庁のジャンヌとマリアンヌ、それに各騎士団の団長・副師団長までということでよいかな」

 陛下はそう仰って話をまとめようとしたが、私は納得いかなかった。

「陛下、僭越ながら意見を述べたいのですが」

「レイコ、許す」

「大変失礼ながら、聖女様の身の回りのお世話をしているネリーさん、さらには聖騎士団の副官、さらに親衛隊の幹部にはお許しいただけないでしょうか」

「少し多くはないか。機密保持上の問題もある」

「機密については今申し上げた方々は聖女様の信奉者です。問題ありません」

「それはそうだが」

「それよりも陛下、今申し上げた方々はいつも聖女様のすぐ近くで働いていらしゃる方々です。お伝えしないとかえって、聖女様が窮屈だと思います」

「そうか、ではそれは聖女アンの判断に任せる」

「ありがとうございます、陛下」

「うむ、では決定しよう」

「陛下、申し訳ありません」

 聖女様が発言した。

「陛下、たいへん申し上げにくいのですが、エミリア女官長にもお知らせしたいのですが」

「何、エミリアは職務上、その必要はないのではないか」

「お言葉ですが陛下、内部にスパイなどがいた場合、女官たちの情報網は有用です。防諜上、エミリア様にもご協力いただいたほうが……」

「わかったわかった、女官たちを敵に回したくないのだな」

「はい……」

「あともう一人追加したいのです……」

「なんだ、まだいるのか」

「はい、陛下」

「で、誰だ」

「玲子のパートナーであるヤニックについてもお願いします」

 陛下はかなり難しい顔になった。私としては国王陛下に無理をお願いしているような気がして、遠慮したかった。

「聖女様、私なんかのために、無理にお願いしなくても……」

「いや、玲子ちゃん、あなたに今後大きな負担がかかると思うのよ」

「わかった、聖女アン。ヤニックについて特別に許可する。サッポロのレイコ」

「はい、陛下」

「聖女アンの申す通り、今後レイコはアンの右腕として大いに働いてもらわなければならない」

「はい……陛下」

「そのさい、ヤニックは心の支えになるだろう。そしてこの能力を得た今、レイコは従来の仕事から離れ、聖女アンの側近として動いてもらったほうがいいだろう」

「え、それではステラ姫は……」

「うむ、トウカイムラのマホがしっかりしているから大丈夫だろう」

 思わずまほちゃんの方を見ると、驚いているまほちゃんの横で不満そうにしているみほちゃん、あかねちゃんも見えた。

「ああ、これは失礼した。ミホ、アカネもしっかりしているな。3人でステラの姉として励んでほしい」

「「「はい」」」

 さらに陛下は、

「ステラはまだ幼い。勉強が必要なときになったら、レイコには再び教育係をたのみたい。その頃にはもう、アンもレイコも新たに得た魔法を使いこなせるようになっているだろう」


 そう言うわけで私は王宮生活を終了し、聖騎士団住まいとなった。とは言うものの、今夜は王宮で過ごし、明日引っ越しということになった。


 夕食後、久しぶりの自室に戻った。大した荷物はないが、明日の引っ越しに備え荷造りをする。まほちゃん、みほちゃん、あかねちゃんも手伝ってくれるとともに、私の荷物に彼女たちのハンカチを入れようとする。

「あのね、私達何も持ってないから、なにかれいこちゃんにあげたいけど、これくらいしかないの。これを使って、私達を思い出してね」

 まほちゃんが説明してくれたハンカチはドラゴンの刺繍が入っている。王室教会の売店で売っている女子大グッズの一つだ。あかねちゃんは、

「これ、とっても気に入ってるの。だから持っていってね」

 私はとても申し訳なく、荷造りした中からきれいなハンカチを引っ張り出して、彼女たちに渡した。そもそも魔女様の森へ行ってきたのにおみやげといえば、森の中で拾ったどんぐりのような種子などだけだったからだ。それも冬を越したものだからそれなりに傷んでいるのが多かった。

「ろくなお土産もなくて、ごめんね」

 するとみほちゃんは、

「お仕事で忙しかったんでしょ。でもね、このたねを見てると、森が近くに感じられるよ」

と言って笑ってくれた。


 その夜は遅くまで魔女の森で見たことを3人に話し、ヘルガさんが何回もハーブティーを淹れてくれた。


 翌朝は自力では起きられず、ヘルガさんに起された。

「お時間です、レイコさん」

「ありがとう、昨日は遅くまでごめんなさいね」

「いえ、私もお話を伺えて、楽しかったです」

「そう、それはよかったです」

「ただ……」

「ただ?」

「ルドルフくんとの旅、羨ましいです」

「ああごめんなさい。騎士団の方たちも、聖女様の護衛名目でルドルフくんに近づきたがってましたね」

「そうですか」

「夏に離宮にみんなで行くとき、ヘルガさんもいっしょにいらっしゃるでしょう?」

「そうですね」

「そのときにルドルフくんと会えますよ」

「そうですね、楽しみにしています」


 こうして私は王宮生活を終え、聖騎士団に居を移すことになった。


 聖騎士団へ向かう馬車から外を見ると、本格的な夏がやってきていた。聖女様と魔女様の森に滞在している間は無我夢中だったから、季節の変化に気づいていなかった。女子大の入試が終わるとまた、聖女様たちは離宮で静養に入る。私もそれについていくことになっている。


 聖女様たちは静養とは名ばかりで、観測とか勉強に明け暮れるだろう。私にしても今年の新たなテーマとして、心を読む魔法の鍛錬、レーザー魔法の開発が加わる。

 だけど心は軽やかだ。離宮にはまほちゃん・みほちゃん・あかねちゃんも来るし、何よりヤニックさんがいる。


 この夏に私と彼の間は、なにか進展があるだろうか。

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