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第72話 王宮へ

 王宮へ向かうため、私達は3台の馬車に分乗した。聖騎士団の白く美しい馬車3台が連なっているのは壮観である。先頭の馬車に聖女様とフローラ先輩とネリーさん、次の馬車に私にヘレン先輩とヘルガさん、後ろの馬車は子どもたちにネリス先輩という配車である。

 なんとなくその割振りについてヘレン先輩に聞いてみると、

「移動中に聖女様と玲子ちゃんから別々に報告を受ける。あとでそれを突き合わせる」

「なんか取り調べみたいですね」

「うん、聖女様、なんか不都合なことは黙ってるかもしれないから」

 そういえば魔女様の森から帰る途中、私も聖女様もちゃんとした報告はしていなかった。なんとなく聞かれたことになんとなく答えるだけだった。さらに重要なことは、心を読む魔法について聖女様は全く口にしていなかった。それに気づいていたから、私もそれについて全く触れていなかったのも事実だ。しかしいつまでも黙っているのもおかしい。先輩たちも聖女様が大事なことを黙っているのに気づいているのだろう。そして私からも聞き出すため、私に一番近しい関係のヘレン先輩を私と同じ馬車にしたのだと理解した。


 馬車が走り出してしばらくしたところでヘレン先輩が尋ねてきた。

「で、どんな魔法を習得したの?」

「はい、身体強化魔法、火魔法・水魔法・風魔法はかなりしっかり習得しました。魔女様によれば、聖女様も私も並の魔法使いよりも上だそうです」

「ふむ、光魔法は?」

「それもやりました」

「レーザーは?」

「魔女様はレーザーの概念をご存じないので、こちらにもどってから聖女様と研究する予定です」

「そっか、で、それだけ?」

「い、いえ」

「話しにくいことかもしれないけど、まあいずれわかることだからね」

「そうですね……」


 窓の外の光が急に陰り、見るとドラゴンの姿にもどったルドルフくんが飛んでいる。私は覚悟を決めて話し始めることにした。

「あのですね、聖女様と私、心を読む魔法ができるようになったんです」

「え、今、私の心、読めるの?」

「いいえ、心を読もうと意図したうえで相手の体に直接触れないとできません。あと、自分の心を閉じておかないと、自分の心が相手に伝わってしまいます」

「ちょ、ちょっと待って、ついていけない」

「はあ、正確に言うと、この魔法を使うと、自分の心と相手の心を共有してしまうんです」

「相手の考えがわかる代わりに、自分の考えも伝わっちゃうってこと?」

「そうです。そのままだとこの魔法はとても使いにくいので、心を閉ざすことを訓練しました。心を閉ざすと、相手の考えだけこちらにわかります」

「玲子ちゃんはそれができて、聖女様もできるってことね」

「そうです。ただ、心を閉ざすのは私のほうがうまく、魔女様は聖女様が公務としてこの魔法を使うときは、聖女様と相手の間に私が入るように言われました」

「そうね、あの子、感情に流されやすいから」

「それと魔女様は、このことを陛下にお手紙を書くとおっしゃってました」

「そうか、やっぱりこうして聞き出してよかった。陛下がご存知で私達が知らないというのはまずいからね」

「すみません、聖女様が口にしないということは、やっぱり話したくないということかな、と思っちゃって」

「うん、わかるよ。聖女様の気持ちもわかる。この力は国のため、民のために使わなければならない。だけどそれは必ず、人の心の闇を除くことになるからね」

「はい……」

「あの子はさ、良くも悪くも純粋でさ、心がきれいだからさ、人の心の黒いところを見るの、怖いんだと思う」

「そうですね、私も怖いです」

「うん、わかった。私は聖女様を守るよ。玲子ちゃんにもお願いできるかな」

「もちろんです」


 ヘレン先輩は何事か考え始めた。考えを遮るのは申し訳ないのだが、どうしても言いたいことがあった。

「先輩」

「何?」

「陛下への謁見の前に、聖女様を殿下にあわせてあげられないでしょうか」

「どういうこと?」

「このお話、聖女様から直接殿下に伝えたほうがいいと思うんです」

「それもそうね、わかった。難しそうだけど、なんとかする」


 そうこうするうちに馬車は離宮についた。王宮から出発したときは裏門からだったが、今日は正門からである。窓から覗くと近衛騎士団がズラッと整列し、そこに先導の聖騎士団の列が入っていく。

「きっと聖女様は大げさで嫌がってるだろうね」

 ヘレン先輩がニヤッとして言う。

「そうですね、だけどもしですけど、殿下がお迎えに出ていたら、それも吹っ飛ぶんじゃないですか」

「そうだろうね、抱きついて泣くね」

「先輩、ちょっと意地悪なんじゃないですか」

「はは、否定しない。でも今日は、泣いてくれたほうがいい」

「はい?」

「それを理由に、二人の時間が作れるでしょ」

「先輩、優しいですね」

「玲子ちゃん、さっきと言ってること、矛盾しない?」

「ははは、すみません」


 車列が停車し、私達も馬車を降りた。先頭の馬車のところではヘレン先輩の予想通り、聖女様が殿下に抱きついていた。ヘレン先輩は、

「チャンスだね」

と言って聖女様の横にいるフローラ先輩とネリーさんのところに行って、何事が伝えていた。


 ルドルフくんが飛び去るのが見えた。

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