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第63話 念力

 魔女様は私達を畑の端、森に接するエリアに連れてきた。

「アン、苦手な魔法はなんだい?」

「はい、まず火魔法です」

「どう苦手なんだい」

「加減が難しくて、だいたい爆発します」

「そうか、じゃあ、とりあえずやってみてくれ」

「はい?」

「いいから、やってみせな」

「では、この焚き火のあとに火をつけてみようと思います」

「うむ」

 聖女様は焚き火跡の近くに行き、目を閉じて念を込めはじめた。


 見ているとなかなか時間がかかった。私も火魔法は不得意中の不得意で、だいたい爆発で終わる。もう少し詳しく説明すると、小さい火が欲しいので小さな火がつく様子をイメージし、心に力をいれる。しかしなかなか火がつかないので少しずつ少しずつ火のイメージを強くしていくのだが、だいたいその途中でドカンということになる。

 そういうわけであるから一同聖女様から距離をとって見守っていると、予定通りドカンと焚き火跡に爆発が発生した。

 振り返った聖女様は顔が煤でよごれ、髪やら服やらには飛び散った炭とか砂とかがのっかっていた。

「う、うむ、なるほど、修行が必要だな」

 魔女様は笑いを堪えるようにコメントした。

 ルドルフくんも下を向いて笑いを堪えている。

 聖女様はそんな二人をみて、不満そうに口を尖らせている。


 しかし私は笑えなかった。砂と煤にまみれた聖女様の姿は、数分後の私の姿に相違ないからだ。


「レイコ、あんたの番だ」

「はい」

 聖女様が吹き飛ばした焚き火のあとに行く。

 途中で拾った木切れを置き、そこに火をつけることにする。

 一歩下がって目を閉じ、念を込める。


 空気中の酸素分子を想像し、分子の速さを速くしていく。そうずれば温度が上がる。温度の高い酸素に木切れが触れれば酸化反応が始まるだろう。

 現実問題として木切れが発火する様子は無い。酸素の温度が十分に高いのに発火しないのは、酸素と触れ合う木の面積が少ないのかもしれない。酸素を吹き付けるようにするのが良いか、それとも木の表面を荒くするのが良いか。


 ヤニックさん、どうすればいいかな?


 頭の奥が熱くなり、ドカンと音がした。


 熱い風を感じ、一呼吸置いて上からバラバラと砂がふってくるのがわかる。


 やってしまったなぁと思いながら魔女様の方を見ると、

「レイコ、あんたとアンはおんなじだ。ともに修行に励むと良いだろう」

と言われた。


 一旦魔女様の家に戻る。その途中で魔女様は、

「ルドルフ、夕食用になにか肉を狩ってきてはくれないか」

と言い、ルドルフくんは、

「わかった」

と言って走り出した。走る途中でドラゴンの姿になり、空へと消えていった。


 家に入ると魔女様に、先ほど昼食をとったテーブルに聖女様と並んで座るよう指示された。座ったところで、魔女様が話を始めた。

「あんたらふたりとも、愛の力を魔力に変えているんだろう」

「「はい」」

「やっぱりな。あんたら二人は二人とも、愛情が強すぎるんだよ。魔法はある意味感情を実際の力に変えるものだからね、あんたらのように苦労して恋愛してきたもんは、気をつけたほうがいい」

 それを聞いた聖女様は、

「じゃあどうすればいいんですかね、あと、治癒魔法は比較的うまくいくのはなぜでしょうか」

と聞いた。

「それは簡単だ、あんたの治癒魔法はあんたの優しい心から来ている。だから暴走しない。それについては今まで通りでいいのだよ」

「なるほど」

「だがな、生活系の魔法にあんたの愛を目一杯詰め込んだら、そりゃやりすぎだ。だからな、愛の力をつかわん方法を身につけるほうがいいだろう」

 聖女様は意気消沈していた。


「まあそんなにがっかりせんでくれよ。さっきの爆発の威力でわかるとおり、あんたは魔力量は多い。どうつかうか、ということだけなんだからコツを掴めばなんとでもなるさ」

「はあ」

「というわけで、早速練習だ」

 魔女様はそう言って、わたしたちの前のテーブルに一つの袋を置いた。

「なんですか、それ」

と言いたいのを、なんとか堪えた。

「これはな、豆だ。乾燥した豆」

 魔女様は袋から豆をテーブルの上に出した。ザララララと言う音がする。

「とりあえず今日は、これを二人がかりで袋にもどしてくれ。念力でな」

 魔女様はそう言い残して、外に出て言った。


 テーブルに出された豆は、ざっとみて200粒はありそうだ。念力など使ったことがない。けっこう絶望的な気分になった。


 言葉を失って呆然としていたが、突然聖女様が言った。

「玲子ちゃん、やろう」

「はい、聖女様」

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