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第60話 森に入る

 エーデンバッハは小さな村で、宿屋など無い。礼拝堂の前の広場は騎士団の人員、馬、テントでいっぱいになってしまった。ただし聖女様は村長さんの家に招かれ、ネリーさんとレギーナさんが一緒に泊まる。もちろん私はテント泊だが、そのテントの割振りで騒ぎになった。

 一応魔物の襲来もありうる土地柄だから、非戦闘員の私はだれか女騎士と一緒のテントに入らなければならない。ルドルフくんは聖女様と一緒になれなかったので私とのテントを希望した。それを聞いた女騎士たちが一斉に私達のテントを希望したのだ。

 テントの定員は4人、すなわち泊まれるのは2人ということで延々ともめていた。

「コイントスで決めよう」

と言う意見も出ていたが、

「それだと当たったものが当直で警戒に当たる間、無駄になる」

との意見が出た。

 結局当直に出た者が当番の交代のとき、コイントスをすることになった。最初の宿泊者は、明日の朝、最後の当直にあたる者ということで決着した。


 最初の二人はマヌエラとペギー、嬉しそうにやってきて寝るまでルドルフくんのほっぺたをつんつんしていた。

 夜遅くになり、最初の当直の人たちがやってきた。

「マヌエラ、ペギー早くどいてよ」

などと言って、ゴソゴソとしているので私は目が覚めた。そのあとも当直交代の度に私は起された。ルドルフくんは眼を覚ましていたかどうかは知らない。ただこれを聖女様に報告すると彼女たちが何らかのペナルティーを与えられそうな気がしたので、私はだまってがまんすることにした。


 そんな訳で寝不足の中、いよいよ魔女の森に踏み入る朝が来た。小さな村に野営したのだから朝食は簡単である。朝食を摂り終わり荷物をまとめていると、聖女様がやってきた。

「おはよう、玲子ちゃん、ルドルフ」

「おはようございます」

「おはよう!」

「玲子ちゃんよく寝れた?」

「やっぱり緊張しているんですかね、睡眠不足気味です」

 とりあえずウソをついておく。

「私もそう。ま、大した距離じゃないから、大丈夫でしょう」

「そうですね」

 すると元気いっぱいのルドルフくんが、

「ぼくがいるから大丈夫だよ!」

と言う。聖女様は彼に頬ずりして、

「うん、おねがいね!」

と喜んでいた。


 聖女様はテントにネリーさんと一旦入り、でてきたときはいつもの聖女の略装をぬいでいかにも旅装と言う感じの服になっていた。


 広くない広場に騎士たちが整列した。

「みんな、ここまでありがとう」

 聖女様が話を始めた。

「しばらくの不在の間、迷惑をかけるけどよろしくね」

 整列している騎士たちは不安そうである。

「私はルドルフがいるから大丈夫。かならず魔法を使う力を良くして返ってくるから」

 聖女様はゆっくりと騎士たちを見回した。ひとりひとりと視線をあわせている。

「では予定通り、連絡要員としてエーデンバッハにはレギーナとマリカだけ残り、あとの者は王都へ帰還して公務に励むように」


「聖女様、ほんとうによろしいのですか?」

 ここまで護衛してきてくれた聖女親衛隊の隊長レギーナ様が心配そうに聞いている。

「うん、心配かけてごめんね。1時間ほどで着くし、ルドルフもいるから」

「そうですが、気をつけてください」

「うん、わかった。じゃ、玲子ちゃん、ルドルフ、行こう」

 私は親衛隊の人々の視線を感じながら、人一人が通れるだけの細い道に足を踏み入れた。


 先頭は聖女様、間にルドルフくんをはさんで後ろを私が歩く。数十歩歩くともう曲がり角で、振り返ると騎士たちの心配そうな眼が見えた。聖女様にならい、私も手を振っておく。


 ちょっと歩くともう、完全に森の中に入ったのが実感された。森の入口は日当たりが良いせいか下草がたくさん生え、蔓性の植物もたくさんあった。しかし森に入ると高木が日差しを遮っているので下草は少ない。ただ、見通しはよくなったものの、細い道以外に人間の痕跡が見られない。

「うわ、魔物がいっぱいいるわ」

 聖女様が恐ろしいことを言う。

「大丈夫よ玲子ちゃん、遠巻きに見ている感じ。ルドルフがいるから魔物は手を出せないよ」

 するとルドルフくんは、

「違うよ、聖女の力だよ。魔物にとっては聖なる力のほうがぼくよりよっぽど怖いよ」

と言うので聖女様は、

「そうなの? ルドルフは私怖いの?」

と聞く。

「うん、おこると超怖い」

「言ったな~!」

 二人の会話からすると、まだ安全らしい。


 それでも私は怖かった。魔物の気配は私でもわかるようになってきた。少なくとも3つ、強い視線を感じる。

「玲子ちゃん、怖がってるとつけ込まれるよ」

 ルドルフくんが振り返って注意してくれる。

「わかった」

 気を強く持つよう心がける。


「来た」

 聖女様が小さいが鋭い声で言った。

「ルドルフ、玲子ちゃんの後ろにまわって」

「わかった」

 私も持たされていた短剣に手をかけた。

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