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第57話 王都から出発

 森の魔女様のもとに向かうべく、王都を出発する朝が来た。起きて着替えをしていると、聖女様が部屋にやってきた。

「おはようございます聖女様。それにしても早いですね」

 当初の予定では、出発前に国王陛下に出発の挨拶をすることになっており、その直前に聖女様と合流する予定だったのだ。

「うん、まほちゃんたちに会いたくてね」

「なるほど」


 実はまほちゃん、みほちゃん、あかねちゃんの三人は私達が魔女様のところへ行くことに不満である。理由はただ一つ、ルドルフくんを私達が連れて行ってしまうからである。

 当然聖女様はあかねちゃんに絡まれていた。

「いいな、いいな、聖女様はいいな」

「あかねちゃん、あのね、私は遊びに行くんじゃないのよ」

「でもるーくん、つれてっちゃうじゃん」

「うん、そうだけどね、森の魔女様が連れてこいっていうからね」

「そんなの知ってるもん。だけど杏ちゃんとれいこちゃんだけるーくんといっしょって、やっぱりずるい」

「なるべく早く帰ってくるから。帰ったらルドルフにはあかねちゃんといっぱい遊ぶよう言っておくから」

「ほんとちゃんと言ってよ。そう言えばるーくん、どこ?」

「わかんない。どっかで適当に合流してくるんじゃない?」

 いつの間にかみほちゃんも来ていて、聖女様の脇腹をつっついていた。

「ルドルフくん、モテモテですね」

 正直な感想を私が言うと聖女様は、

「そうなのよ。フィリップなんてもてかたを教わりたいとか言って、ヘレンにつねられてたわ」

 私は危うく、ステファン先輩は?と聞きそうになったがなんとか思いとどまった。

「ステファン殿下はどうなの?」

 みほちゃんから容赦ない質問が飛び、聖女様の口がへの字になった。聖女様の嫉妬の姿を見て、幼女たちの攻撃は止んだ。


 朝食はいつものようにミハエル王太子夫妻と摂る。聖女様もご一緒した。ここでステラ姫に、

「行ってくるね」

と言っておく。意味が伝わったとは思えないが。ミハエル殿下、ヴェローニカ様にもここで挨拶である。

 自室に戻り旅装に着替えて国王陛下ご夫妻へのご挨拶のため、謁見の間へ伺う。大げさだが杏先輩にとっては聖女、さらには聖騎士団団長のしごとをまとまった期間休むのだから国王陛下の前で権限委譲の儀式を行わなければならないのだ。謁見の間に行くと、すでに聖女代理のジャンヌ様、騎士団からは副官のソニアさんが来ていた。


 整列して待っているとやがて国王陛下が入室された。


「一同表を上げよ。聖女アン、いよいよだな」

「はい、陛下。不在の間、ジャンヌ様やソニアをはじめ関係者には迷惑をおかけしますが、どうかよろしくお願いいたします」

「うむ、聖女アンの不在は痛いが、アンがステファンと離れてでも行かなければならない仕事だ、重要なのはよく理解できる」

「は、はい、陛下」

 横目で見ると、聖女様は顔を赤くしている。

「冗談はともかく、国家に必要なことだ、思いっきりやってくると良い」

「はい、ありがとうございます、陛下」

「サッポロのレイコ」

「はい、陛下」

「そなたもよく知る通り、聖女はがんばりすぎる傾向にある。そなたも余裕があれば、聖女の健康に気を使ってくれないか」

「承知いたしました、陛下」

 陛下は横にいるステファン先輩の方を向いた。

「僕からも頼むよ」

「はい、殿下」

 横目で聖女様を見ると、今度は口を尖らしている気がする。

「うむ、今日も聖女アンはいつも通りだな、ステファン」

「そうですね、陛下」

「とにかくふたりとも、気をつけていってきてくれ」

「はい、陛下」

 二人で頭を下げ、儀式は終了となった。


 私は導かれるまま退出したが、聖女様は動かなかった。ステファン殿下と手を取り合っていた。その気持はよく分かる。


 今回の出発は公表されていない。だから先程の謁見の間での儀式も最小限の人数で行われ、広い謁見の間が特に広く感じられた。そして出発は王宮の裏にある王室のプライベートな出入り口というか門からになった。その関係でヤニックさんは私の見送りには来れない。


 門にたどり着くと、聖騎士団騎士たちがすでに騎乗して整列している。用意が整い次第すぐに出発するということだ。門の内側はそれなりに面積が確保されているのだが、騎士たちでいっぱいである。馬車は1台だけなので、さっさと私は馬車の方に行こうとしたら、私の名を呼ぶ声がした。それも一番聞きたい声だった。

「レイコさん、気をつけていってきてください」

「はい、あの、帰ってきたらまた、お会いできますか」

「もちろんです、お待ちしています」

「ヤニックさんの故郷、見てみたいわ」

「ええ、夏休み、行きましょうか」

「はい」


 聖女様が赤い目をしてやってきて、馬車に乗った。


 そして出発となった。

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