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第45話 来客

 今日も一日雪だった。聖女庁で気象データの処理を手伝っていると、この週末は雪が止みそうに見える。その意見がヘレン先輩・フィリップ先輩と一致したとき、ちょっと休憩することになった。

「今日は残業しないで帰れそうだな」

 お茶を飲みながらフィリップ先輩がのんびりと言う。

「そうね」

 ヘレン先輩はそっけない。

「早く帰れるんならさ、俺、ヘレンの手料理食いたいなぁ」

「だめよ、そう言うのは休日」

「おお、じゃあ休みになったら食材、買いに行くか」

「そうね」


 私はちょっとうらやましかった。買い物と言う名のデートである。この話題は良くないと思ったのだろう、ヘレン先輩が話題を変えてきた。

「玲子ちゃんさ、最近石工ギルドの方任せてるけど、その後どう?」

「ええ、定規はだいたいできました。おもしろいですよ、そのチェック」

「どうするの?」

「二つの定規を合わせて、光を通すんですよ。光が漏れなければ合格なんですよ」

 するとフィリップ先輩が、

「それは合理的だな。一組OKとなれば、あとはそれに合わせてけばいいもんな」

「ええ、だから効率は上がりつつありますよ」

「ふーん、よかったね」

「いいんですけど、もっと効率的な方法ないかといつも思っちゃうんですよ、レーザーとか」

 私は実家のリフォームのとき、大工さんが使っていたレーザー水準器を考えていた。水平出しに使う道具だが、定規のようにも使えると思っていたからである。定規とちがってたわみがない。

「レーザー、か」

 ヘレン先輩がポツリと言った。

「それは魔法の領域だね」

 このときはこの話はこれで終わった。


 休憩を終え残業を回避すべく一生懸命仕事をした。もう少しで終わりというところで、ノックの音がした。顔をあげるとヤニックさんがいた。

「どうもみなさん、お久しぶりです」

「ああヤニックさん、こんにちわ」

「こんにちわ」

 ヤニックさんの挨拶にヘレン先輩、フィリップ先輩は挨拶を返すが私は声がでなかった。なんとか笑顔をつくる。そんな私の様子を見たヘレン先輩は、

「玲子ちゃん、定時過ぎたよ。残りの仕事はちょっとだから、フィリップとやっとくから」

と言ってくれた。

「あの、もうちょっとですから」

「いいって、待たせちゃ悪いよ。お茶でもしてきたら」

 事実上私は追い出された。


 さて困った。

 すぐにヤニックさんとおしゃべりしたいところだが、それができそうなのは聖女庁に隣接する女子大のカフェくらいだ。ただそこは人目がある。それも年若い女性たちだ。うわさの対象になることは目に見えている。このあたりには他に適当な場所は無い。季節が良ければそのあたりで散歩もできるだろうが冬の夕方では現実的でない。私は王宮住まいだから王都にいけば、適切なカフェなどいくらでもある。ただ私は騎士団の馬車で通勤している。退勤したならとっとと王宮に戻るべきだし、ヤニックさんに同乗してもらうべきではない。

「レイコさん、どうかしましたか」

「ええ、お時間があればぜひお話したいのですけど、私騎士団の馬車で王宮から通勤しているので……」

「なるほど、じゃあ私は乗合馬車で行きますよ」

 そうしようかと思っていたら、女性騎士のマリカさんがやってきた。

「ヤニックさん、聖女様のご指示で、レイコさんと一緒にお送りいたします」

「ありがとうございます」

「ヤニックさんはどちらにお泊まりですか」

 ヤニックさんはある宿の名前をマリカさんに告げた。

「ああ、出張の方が良く泊まられるところですね」


 馬車には私とヤニックさん、そしてマリカさんが同乗した。私は街で護衛抜きの単独行動は許されていないのだ。それについては聖女様から以前説明された。

「一応ね、国防上用心しているのよ。黒髪は目立つし、玲子ちゃんまだこの国での暮らしに慣れてないでしょう。窮屈だとはおもうけども」

 国防上と言う言葉には、聖女として、聖騎士団団長として考え抜いたうえでの重みがあった。今までの私は確かに暮らしに慣れていなかったから、護衛の方がいらしたほうが気楽だった。しかし今日は違う。マリカさんがいて迷惑というわけではなく、ただただ恥ずかしかった。


 馬車の中で、ヤニックさんはひたすら離宮の様子を話していた。毎日大雪で除雪が大変だそうだ。ただ除雪の手を休めて静かにしていると、まれにシカとかウサギ、さらにはキツネも見ることができるそうだ。

「レイコさんにもぜひ見ていただきたいです」

「そうですね、次に離宮に行けるのはいつになるでしょうか」

「どうでしょうね」


 馬車は王都に入り、ある大きな宿の前で馬車が止まった。ヤニックさんが降りてお別れを言おうかと思っていたら、マリカさんが私に馬車を降りるように言った。そして、

「ヤニックさん、チェックインして荷物を置いてきてください。レイコさんと夕食を一緒にされたらと、聖女様が仰っていました」

 私は聖女様のお言葉に甘えることにした。マリカさんがレストランに案内してくれ、すでにそこにエリザベートさんが待っていた。マリカさんとエリザベートさんは少し離れた別の席をとった。

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