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第4話 ルドルフくんの正体

 聖女様に連れられて中庭に出ると、そこには大きなドラゴンが座っていた。


 ドラゴンを見た私は思考が停止していた。腰のあたりに強い圧迫を感じ、我を取り戻す。まほちゃん・みほちゃん・あかねちゃんが私にしがみついてガタガタ震えている。私は震えこそしなかったが腰が抜けていた。3方向からの圧迫でかろうじてバランスを保って立っていただけだ。

 私達が動けなくなっているのを置いたまま、聖女様はスタスタとドラゴンに歩み寄り、

「ルドルフ、説明して頂戴」

と厳しめの声で言う。ドラゴンは、

「ウォーン!」

と吠えたが聖女様はもっと厳しい口調で言った。

「あんた誤魔化してもダメ! どうせあんた、人間の姿になれるんでしょ!」

「ウォン」

 ドラゴンは小さく答え、白い煙に覆われた。


 煙が落ち着くとそこに、見慣れたルドルフくんがいた。

「「「るーくん」」」

 私にしがみついていた3人はルドルフくんにダッシュし、支えを失った私は地面にすわりこんでしまった。


 抱き合ってよろこぶ子どもたちを見守っていた聖女様は、3人が落ち着くのを待って静かに言った。

「ルドルフ、説明しなさい」

「うん」

「早く」

「うん、怒らない?」

「内容による」

「え~」

「話さないと結局怒るよ」

「うん」

 聖女様があれほど厳しい姿をするのを始めてみた。そしてその姿は母の姿そのものだった。


「ママ、あのね……」

 やっと話しはじめたルドルフくんはだいたい以下のように語った。

 修二さんと聖女様に連れられて行ったキャンプの星空の下、二人は星空の向こうにこの国ノルトラントを思い出していた。ルドルフくんには二人がこちらにもどりたいと感じられたので、ルドルフくんも戻りたいと考えたのだという。ただ、ルドルフくんは聖女様が仲間に恵まれているのがちょっとうらやましかった。東海村で仲良くしているまほちゃん・みほちゃん・あかねちゃん、さらには札幌で優しくしてくれた私を自分の仲間として来てほしいと願ってしまったそうなのだ。

「じゃあ、ルドルフが連れてきたのね」

「あのね、一緒に来てほしいなぁって、思っただけなんだ。こんなことになるなんて……」

「しょうがないな……」


 聖女様はしばらく考えていたが、こちらに向いて話し始めた。

「玲子ちゃん、まほちゃん、みほちゃん、あかねちゃん、ルドルフの本当の姿はドラゴンなんだ。私達が8歳のとき、卵から孵したの。お母さんドラゴンが死んじゃってね……。だからルドルフは私達のことを親って思ってくれてるんだ。ただ、とにかく私達のせいであなたたちをまきこんでしまったことはまちがいない。ごめんなさい。本当にごめんなさい」

 聖女様が頭を下げると、聖女様をふくめ8人が一斉に頭を下げた。


 私は一応、話の内容は理解した。しかし疑問も出た。

「あの、聖女様、あっちとこっちは、自由に行き来できるんですか?」

「私にはわからない。ルドルフはどうなの?」

「う~ん、よくわかんない」

「っていうことなのよ。ごめんなさい」

「では、どうしたら……」

「うん、私達がはじめにこっちの世界に来たとき、夢の中でブラックホールに飛び込んできた。あっちに戻ったときもそう。夢でブラックホールを見ればもどれるのかもしれないけれど、夢までは制御できない。だから私達はこっちで何年もかけて物理を研究してきたんだ」

「じゃあ聖女様は……」

「うん、研究をつづける。できたら玲子ちゃんにも協力して欲しい」

「はい、わかりました」

 するとフィリップさんが口を挟んだ。

「聖女様はもう一つやることがあるらしいけどね」

 ステファンさんは、

「今はそれは言わんでいい」

といい、ヘレンさんはフィリップさんを蹴っ飛ばしていた。


「ルドルフがこの姿なら、いつまでも外にいても意味ないんじゃない?」

 フローラさんが言う。

「それもそっか。中に入りましょう」


 建物の中に入ると、女官とおぼしき女性が待っていた。聖女様がその人に言う。

「食堂へ行くわ。騎士団の幹部も食堂へ呼んでくださる、この人たちを紹介するわ」

「お言葉ですが奥様、お着替えいただけませんか。新しい方たちもそのほうがよろしいかと」

「そっか、それもそうね。ありがとう。そうしたらネリー、この子たちの着替え、任せてもいいかな?」

「承りました、奥様」

「そうだ、みんな、紹介しておくわ。この人はネリー、私の身の回りのことをやってくれているの」

 私は頭を下げる。

「ネリー、この人はサッポロのレイコ、それからトウカイムラのマホ、ミホ、アカネよ。マホとミホは姉妹、ミホとアカネは同い年なの」

「レイコさん、マホさん、ミホさん、アカネさん、ネリーです。何なりとお申し付けください」

 改めて私が頭を下げると、女の子3人も神妙な面持ちで頭を下げた。


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