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第34話 魔法の練習

 ジャンヌ様のところでのお話が長くなり、すぐ女学校に行くことになった。


 女学校には約束の時間よりかなり早くついた。レギーナさんは騎士団にもどっていった。時間がかなりあるから職員室に行った。そこなら自分の机があるからである。時間まで明日の算術の授業の予習でもしていればいいかと思った。

 教科書の明日の部分を読んでいたら、顔見知りになったローザ先生が声をかけてきた。

「聖女様いらしたわよ」

「はい、ありがとうございます」

「校長室にいらっしゃるわ」

「はい、すぐ行きます」

 私は手早くデスクを片付けて校長室へ向かった。


 校長室には、聖女様とアレクサンドラ校長先生だけでなくフローラ先輩もいた。

「玲子ちゃん、今日はフローラも先生よ」

「はい、お願いします」

 以前、フローラ先輩は魔法師志望だったと聞いた。

「今日は私を、フローラ先生と呼んでね」

「はい、フローラ先生」

「はは、冗談よ冗談」


 女学校の中庭に移動する。アレクサンドラ先生も一緒に来た。そこには女生徒たちが10人ほど集合していた。学年は見覚えのある生徒がいることから3年から4年生が多いようだ。アレクサンドラ先生とフローラ先輩が生徒たちの前に立ち、私は生徒側に立つ。横には聖女様が来た。つまり聖女様も魔法の練習をする気がまんまんだということだ。


 アレクサンドラ先生が話し始めた。

「では早速始めましょう。今日は魔法が発揮できない人と、魔法のコントロールが難しい人の2つのグループに分かれてやりましょう。私はコントロールが難しい人を担当します。魔法の発揮についてはフローラ先生に教わってください」

 指示に従い、フローラ先輩の方に行く。


 フローラ先輩のところに集まったのは私を含めて3人、残りの二人は算術を教えていたので知っている生徒だった。

「レイコ先生は、魔法、苦手だったんですね」

 その一人、ウルスラが話しかけてきた。

「うん、そうなんだ」

 もう一人のエルザも聞いてきた。

「魔法使えないと、不便ですよね」

「う~ん、私は今までなんとかなってきたけど、これからはそうも行かないと思ってね」


「さ、やろっか」

 フローラ先輩がスタスタとやってきた。

「みんな魔法が発動しなくて苦労しているのは知っているけど、今日は比較的安全な治癒魔法でやってみましょう。とつぜん大きな魔法が発動することもあるからね」

 確かに治癒魔法なら安全である。

「今わたし、ちょうど左手に擦り傷があるの。ウルスラさん、やってみて」

「はい、フローラ先生」

 ウルスラはフローラ先輩の左手をとり、唱え始めた。

「医療の神エイル様、この者の手を癒やし治し給え」

 するとウルスラの右手がちょっと光ったような気がしたが、傷はそのままだった。

「うん、魔力はあるから、あなたなりの発動条件がわかればだいじょうぶね」

「はい、先生たちからもそう言われています」

「わかった、今度はエルザさん」

「はい、医療の神エイル様……」

 同様だった。


 いよいよ私の番である。そもそもこの国の医療の神様がエイル様だということを今知った私も、とにかくやってみた。

「医療の神エイル様、この者の手を癒やし治し給え」

 何もおこらなかった。


 がっくりとしているとフローラ先輩が話しかけてきた。

「玲子ちゃん、呪文は魔法の本質ではないのよ」

「そうなんですか」

「まずは、傷が治る状況を明確にイメージすることね」

「はい」

「あとね、これは人によって違うんだけど、発動条件があるのよ、魔法には」

「フローラ先輩は、なんなんですか?」

「え、聞く?」

「ええ、できれば」

 フローラ先輩は声を落とした。

「私の場合、ケネスのこと考えるの」

「ケネス先輩ですか?!」

「声が大きい!」

「すみません」

「とにかく、好きな人とか、大事な人、会いたい人を考えると、いいみたい。これはね、私達4人ともそうなのよね」

「じゃあ、この世界ではみんなそうなのですか?」

「いや、そうでもないみたい。女学校の授業でも、そんなこと聞いたこと無い」

「はあ」

「まあ、試しに1回やってみたら」

「はい」


 大事な人、会いたい人、いったい誰がいいのだろうか。父、母をまず思い浮かべながら傷が治るイメージを思い浮かべたが、魔法は発動しなかった。のぞみ先輩、聖女様、いずれもだめ。もうこうなったらとヤニックさんを思ったら、胸の奥が熱くなった。


「ああ、成功したね」

 ボーっとしていていた私に、フローラ先輩が話しかけてきた。

「あ、はい」

 成功したらしい。成功は成功でいいのだが、私は今更ながらヤニックさんへの気持ちに気付かされた。

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