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第32話 昼食と売店

 女学校の外は、官庁街である。服装こそ違うがここでも働く人たちが昼食を食べるため街に繰り出してきている。少し歩くと飲食店が集まるエリアに出た。すでにいくつもの店で行列ができている。

「レイコさん、どのような店がいいですか?」

「すみません、私、まったくわからなくて…… レギーナさんの好きなお店に連れて行っていただければ……」

「なるほど。ただ、私はほとんど騎士団で食べているから、詳しくないのだ」

「あの、あそこの店は並んでいるのがほとんど男性、あっちはほとんど女性、これって料理の内容ですよね」

「そうだな、男性だらけの店はきっと見た目より量重視、女性だらけのところは量は少なめ、だけどおしゃれでおいしいのでしょう」

「どっちがいいですかね」

「レイコさんはどっちがいいですか?」

「実は私、けっこう食べるんですよね。騎士団の食事、残さず食べますし」

「じゃあ男性が多い店に行きましょうか、いや、だからこそこういうときこそ、女らしいところに行くべきか」

 レギーナさんは苦悶の表情を浮かべた。聖女様の近くでお仕事をされているときには出すことがなかった表情である。

「レギーナさんは、今日お時間はあるんですか」

「あ、ああ、レイコさんが魔法の授業に出るまでご一緒しますよ」

「なら、女の子らしいお店に行きませんか? もし量が足りなければ、お茶でもしながらお菓子を食べましょうよ」

「お、それはいいですね」


 行列が女の子だらけのお店に並ぶ。若い子が多いがそれなりの年齢の人もいる。その中レギーナさんは頭一つ分背が高い。北国のノルトラントでは金髪や銀髪の人が多いようだが、レギーナさんもそうだ。今日は天気がいいので、その長い髪が輝いている。

「どうかしましたか」

 私の視線に気づいたレギーナさんが聞いてきた。

「いえ、髪が美しくて、うらやましいです」

「そうですか、私はむしろ、レイコさんのような黒髪に憧れますよ」

「ないものねだりですね」

「はは、そうですね。ですが聖女様は黒髪じゃないですか。多分この国で黒髪に憧れてる人、きっと多いですよ」

「なるほど」

「もともとノルトラント人で黒髪は珍しいですから」

「そうみたいですね」

 私はあたりを見回してみた。黒髪はほとんどいなかった。


 中に入って日替わり定食を頼む。もちろん店内は満員、食べている人たちは楽しそうに料理をつついている。食事だけでなく会話も楽しんでいる。


 期待して待っていると、すぐに食事は来た。

 メインは肉の串焼きだ。肉と肉の間に野菜が挟まっている。ソースがかけられている。

 サイドには野菜の酢漬けが小鉢に入っている。香草が散りばめられているし、赤、緑、黄色と色も美しい。なおこの世界にご飯はなく、パンである。


 食べ始めると、やっぱりおいしい。

「このソースがおいしいですね」

 レギーナさんが言う。

「この酸味、不思議ですね」

と返事する。

「う~ん、騎士団でも食べたい、コックに食べさせたいな」

「そうですよね、本職なら真似できるかもしれませんね」

「しかし、予算の問題もあるかもしれません」

「そうかもしれませんが、こういう店は商売です。ちゃんと利益がでるようにつくってるはずですよ」

「そうか、そうですよね」

 レギーナさんの表情が明るくなった。


 あっという間に食べ終わり、量的にはちょっと物足りなかった。ただ食べ終わったところでフルーツとお茶が出てきた。


 お店をでたところでレギーナさんが聞いてきた。

「どこか見てみたいところはありますか?」

「そうですね、あの、教会に行きたいです」

「ご案内しましょう」


 行き先は宮廷教会である。

 この国は政治と宗教が密接に結びついており、王宮のすぐとなりに大きな教会がある。国として行う宗教儀式はこちらで行うそうで、王都において観光客に一番人気のスポットだということだ。


 大きな広場に出て、急に空が広くなった。正面に大礼拝堂、左手には私が今住んでいる王宮が見える。そして広場には多くの人がいる。

「みな観光客ですよ」

「すごいですね」


 まず大礼拝堂に入る。観光客たちは列を作って奥へ奥へと進んでいく。


 中はうすぐらく、採光はステンドグラスを通してである。色づけられた陽光が不思議な空間を作っている。だが奥の方は光輝いていて、そこが聖なる空間であることがわかる。

 暫く進むと天井が突然高くなる。天井はドーム状になっていて、ヤニックさんに教えてもらった神話の世界が広がっていた。そのドームを見上げる位置で、一般参拝客は祈りを捧げる。私もレギーナさんにならってお祈りする。

「まほちゃん、みほちゃん、あかねちゃんたちが幸せに健やかに暮らせますように」

 そうお祈りしていたら、頭の中になぜかヤニックさんの顔がうかんだ。


 礼拝堂を出て売店に行く。もう、そういう人の流れになっている。


 売店は大盛況だ。


 小さなお守りみたいなのもあるが、いろいろなサイズの聖女様の肖像画が売られている。肉筆のものもあるが、安価な版画のものが次々と売れている。子どもにはドラゴンのぬいぐるみが人気だ。これは私達が離宮でもらったものと同じだ。売り場ではステファン殿下とのツーショットの絵、お二人で星を見ている絵もあり、まあまあ売れている。私はまほちゃんたちへのおみやげとしてお守りを買おうと思い、自分の分も含めて4つ取り、レジ?の列に並んだ。


 列で待っていると、聖女様がいつも来ている服と似ている服装の女性が話しかけてきた。

「あの、レイコさんですか」

「はい、サッポロのレイコです」

「ではちょっとこちらへ、レギーナ様も」


 私とレギーナさんは店の奥のドアから、さらに奥へと案内された。


 廊下をちょっと進むと事務室みたいなところに出た。座っていた初老の女性が立ち上がり、

「聖女代理のジャンヌです。はじめまして」

と頭を下げた。


 私は焦った。

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