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第27話 お手紙

 昼食後、みほちゃんあかねちゃんは乗馬の疲れがでたのか眠くなったらしい。だからお昼寝タイムとなった。寝室に帰りまほちゃんと二人を寝かしつけてから、応接室のほうへ移動する。私は離宮でもらった紙を出して、記録を書き始めた。毎日経験することが多く、時間があるときに書いておかないと忘れてしまいそうだからだ。

「れいこちゃん、私にも紙をくれない?」

 私は3枚ほどまほちゃんにペンと一緒に渡した。

「何書くの?」

「あのね、離宮の人たちにお手紙書くの。ひと夏お世話になったから」

「そうだね。それがいいね」

 私は記録を続けていたのだが、まほちゃんが話を続けた。

「れいこちゃんはお手紙書かないの?」

「え、誰に?」

「そうね、ヤニックさんとか」


 意外な人の名前だった。


 確かに離宮の職員で一番長く一緒に時間を過ごした人はヤニックさんに違いない。脳裏にヤニックさんの絵に取り組む表情、私を観察する目つき、手を休めて雑談するときの口ぶり、いろいろと思い出した。

 そして急に会いたくなった。


「れいこちゃん、どうしたの?」

「あ、いや、私も手紙書くわ」

「ヤニックさんに?」

 嘘をついても仕方ないと思うので、

「うん」

とだけ答えておいた。




ヤニックさん、お元気ですか。手紙の書き方も知らないので失礼な書き方になっていないかと心配です。

 王都では予定通り、私達は聖騎士団に泊まっています。毎日なにかしら予定があって、忙しくしています。今日は初めて馬に乗りました。

 そのうち落ち着いて生活をできるかと思っていたのですが、私達4人は明日から王宮へ移動することになりました。先日ヴェローニカ妃殿下に呼ばれて王宮へ伺ったのですが、王室としては私達4人にステラ姫殿下の遊び相手として王宮で生活してほしいとのことでした。子どもたちも彼女たちなりに考えたうえで、その要請に答えることにしたのです。

 聖騎士団での生活も楽しかったのです。特にルドルフくんは子どもの姿になって騎士団にいるのですが、聖女様やお仲間たちが夜一緒に寝ると取り合いをしています。ルドルフくんを取られたときの聖女様はプンプンと怒っていらしゃって、とてもかわいいのです。もしかしたら騎士団の人たちもそれを見たくてルドルフくんといっしょに寝ようと誘っている気がしています。

 それはそうと、絵のほうは進んでいらっしゃいますでしょうか。工房のお仕事にお忙しいとは思いますが、あの絵でちょっとでも私のことを思い出してもらえたらとても嬉しいです。

 離宮で毎日のように絵を書いてもらっていた時間は、なれない生活の中でとても大切なものであったことを今更ながら気づいています。私などが望むべきことではないのですが、またヤニックさんに絵を描いてもらえたらと思っています。

 思い出すと私達は皆さんのお仕事のじゃまばかりしていたのではないかと心配です。もし、もしよかったらですが、秋の離宮の皆さんの様子やヤニックさんのお仕事の様子など知らせていただけたら嬉しいです。

 これからの季節、どんどん寒くなってくるのでしょう。どうかお体にお気をつけて日々をお過ごしください。




 ペンで書いたから、読み直したところで修正もできない。本当なら書いたものを読み返し、書き間違え、書き忘れを直すべきだろう。仕方がないので私は封をするべく、書いた手紙を折りたたんだ。


「れいこちゃん、私の手紙、間違っていないか読んでくれないかな?」

「うん、いいよ」


 まほちゃんの手紙は、言っていた通り離宮の職員の人達に宛てたものだった。ちゃんと季節の挨拶から始まり、離宮でお世話になったことのお礼が書いてある。さらには近況の報告だ。聖騎士団で見たもの、兄弟喧嘩、楽しかったこと、ステラ様のこと、国王陛下のことが書いてある。そのほとんどの出来事に聖女様が絡んでいる。まほちゃんが聖女様が大好きなこと、聖女様を取り囲む人々も聖女様が大好きなこと、そして聖女様もそんな人達が大好きなことがよく伝わってくる。


「どうだった?」

「うん、よく書けてるよ。年齢、嘘ついてない?」

「え~、そんなことないない」

「はは、とにかくこのままで大丈夫だと思うけど、聖女様かヘレン先輩に読んでもらったほうがいいと思う」

「そうなの?」

「うん、私達が見聞きしたものは、この国の秘密があるかもしれない」

「そうか、外国のスパイとか?」

「そうそう」

「じゃ、れいこちゃんのお手紙も読んでもらわないといけないね」


 私は顔の温度があがるのがわかった。


「れいこちゃん、そんな顔するなんて、何書いたの?」

「ううん、普通の手紙だよ」

 私はなにか言われる前に、思い切って書いたものをまほちゃんに渡した。


 まほちゃんは時間をかけてヤニックさんへの手紙を読んでいた。書いた分量に対して相当長い時間をかけている。視線を見ると、何回も読み返しているのがわかる。

 もともと恥ずかしかったが、時間の経過とともにさらに恥ずかしさが増す。


 やがてまほちゃんは言った。

「これが大人の手紙なんだ」


 あとでヘレン先輩にも読んでもらった。ヘレン先輩は何も言わなかったが、ニヤッと笑った。

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