第25話 二人の決意
ミハエル第一王子殿下から、私達四人はステラ様の遊び相手として王宮に住むことを要請された。私はまほちゃん、みほちゃん、あかねちゃんの保護者みたいな立場になっているが、血の繋がりどころか向こうの世界では面識すらなかった。だから私の一存で返事できることでなく、一旦持ち帰って三人にきちんと説明したかった。そして彼女たちなりによく考えたうえで決めたいとも思っていた。
聖騎士団に帰着するともう真っ暗、すぐに夕食である。昨日と同じように夕食を摂り、結局来客用の部屋にもどった。ただし今夜は聖女様とルドルフくん、あとヘレン先輩がついてきた。私だけはその目的はわかっている。
応接セットのところに、みんなに座ってもらった。
「何のお話?」
まほちゃんが早速聞いてきた。聖女様が応じる。
「うん、今日、ステラに会ったでしょ」
「うん、かわいかった~」
「「かわいかった~」」
「それでね、ステラのお父さんのミハエル殿下がね、みんなに王宮に来て欲しいと言ってるの」
「うん、行くよ!」
これは意味が伝わってないと私は思ったが、それは聖女様も同じだったようだ。
「うん、言い方が悪かった。あのね、みんなには王宮でステラの近くで生活してもらって、いっしょに遊んでほしいのよ」
「じゃ、また引っ越しするってこと?」
「そうなるね」
「え」
あかねちゃんが、反応した。まほちゃん、みほちゃんとちがって一人だけでこの世界に来たあかねちゃんは、環境がコロコロかわるのが不安なのだろう。私は口を出すことにした。
「あかねちゃん、いやだったらいいんだよ。私は王宮だろうとここだろうと、あかねちゃんと一緒と同じ場所で暮らすよ」
「れいこちゃん……」
私はとにかく笑顔をつくる。
「れいこちゃん、私、みんなと一緒がいい」
するとみほちゃんは、
「私もあかねちゃんといっしょがいい、一緒にいるよ。ね、お姉ちゃん、いいでしょ」
「うん、いいよ、そうしよう」
ヘレン先輩も口を出した。
「みんなね、今すぐここで決めなくてもいいんだよ。ゆっくり考えるといいよ」
「うん……」
子どもたちは夜も遅いのでベッドに入った。私は彼女たちが心配にならないよう、一緒に寝室に行く。その私の背中から、聖女様の声が聞こえた。
「玲子ちゃん、負担をかけるけど、子どもたちをよろしくね」
振り返って答える。
「はい、大丈夫です」
聖女様とヘレン先輩が、とても心配そうに私を見ていた。
一夜明けると、子どもたちは早朝から元気だった。朝食前だと言うのに、みほちゃんとあかねちゃんはおっかけっこしている。
「みほ、あかねちゃん、ダメだよ。れいこちゃん起こしちゃうよ」
まほちゃんの注意にもかかわらず、私はすでに目を覚ましてしまっていた。
「まほちゃん、ありがとう、もう起きてた」
私が言うとまほちゃんは、困ったような笑顔だった。
「おはよ」
「うん、おはよ、みほ、あかねちゃん、ちゃんと挨拶しなよ」
「れいこちゃん、おはよ~」
二人はおっかけっこしながら挨拶してくれた。
元気な二人は私に元気をくれる。二人の笑いは何の屈託もなく、今日も平和で幸せな一日が訪れることを確約してくれる。
「れいこちゃん、妹たちがうるさくて、ごめんね」
「気にしなくていいよ。二人を見てると元気出るわ」
「はぁ」
気づいたのだが、まほちゃんは枕を抱いてベッドに座っている。私はまほちゃんの隣に言って、
「寒い? もう、秋だね」
と言ってみた。
「そうですね」
「秋って食欲の秋っていうでしょ? こっちでもいろんなものが美味しいかな?」
「きのこ? くだもの?」
「どうかな? 朝食のとき聞いてみる?」
「うん、おいしいといいね。杏ちゃんはよく知ってると思う」
「そうだね」
まほちゃんは暗に聖女様が食いしんぼだと言い、私はそれに同意した。まほちゃんが笑っている。私はまほちゃんも、ずっとこの笑顔で居て欲しいと思う。それでも話すべきこと話さなければならない。
「まほちゃんは、昨日のこと、考えた?」
「うん、私の結論は出た」
「で、まほちゃんはどうしたい?」
「私としては、みほの姉であることを優先したいと思う」
「?」
「みほと、あかねちゃんがどうしたいか、それが大事。私は二人で決めて欲しいな」
「そっか、お姉ちゃんだね」
「うん、れいこちゃんも、同じ考えでしょ」
「うん、そうだね」
「みほ、あかねちゃん、もうすぐ朝ご飯だよ!。着替えな!」
「「は~い」」
二人は追いかけっこをやめ、着替えを始めた。みほちゃんと私は着替えを手伝う。
「れいこちゃん、あのね」
「うん」
あかねちゃんが着替えながら言ってきた。
「昨日のお話だけど、私もみほちゃんも、ステラちゃんのとこ、行く!」
「また、引っ越しだよ。聖女様と、ちょっと離れちゃうよ」
「うん、わかってるよ。でもね、杏ちゃんは、よくステラちゃんのとこ、来ると思う。だからさみしくない!」
「そっか」




