第23話 謁見
今日は宮廷へ出向く。ルドルフくんをステラ姫に会わせるためだ。ステラ姫はあと少しで1歳になるところだそうだ。ルドルフくんは新しい服にしたのはよかったのだが、王子様みたいな服は嫌がった。彼の服選びは難航した。
一昨日、王宮から数人の服職人がやってきた。ルドルフくんママの聖女様は服装にこだわらない。聖女の略装がほとんど、たまに女騎士の格好をしている。私服はめったに見ない。あの人のことだからいちいち服を選ぶのが面倒なのだろう。したがって服選びにプロが来るのはうなずける。
職人さんたちは騎士団の裁縫室で作業することになっていた。ヘレン先輩が、
「服選び、玲子ちゃんの意見も聞きたいわ」
と言ってくれたので私も裁縫室に行く。特にだめとも言われなかったから子どもたち3人は着いてきた。
初めて入る裁縫室は思いの外広かった。ヘレン先輩がニヤッとして、
「広いでしょ」
と言った。
「訓練でも実践でも服装の消耗は激しいからね」
と、聞きもしないのに説明してくれた。子どもたちもキョロキョロしている。すでにルドルフくんは到着していて、聖女様たちからあれこれ着たり脱いだりさせらている。その度誰かが褒め、誰かが納得し、誰かが首をかしげている。ただ、聖女様だけはどの服でもカワイイ、カワイイを連発している。対してルドルフくんはすでに飽きてきたのか、どうでもいい感を醸し出しているが囲んでいる聖女様たちは気づいていないのか無視しているのか、楽しそうだ。
最終的に王宮に行く服は、ブルー系のシンプルだけど華やかさを併せ持つデザインになった。聖女服に似た色合いで、ステファン殿下がそう言った瞬間に聖女様のテンションがマックスになった。職人さんたちは試着した状態から微妙にサイズを直すそうである。
服選びが終わったあと、私はルドルフくんに聞いてみた。
「ルドルフくんは、本当はどんな服がいいの?」
「迷彩」
と答えられた。理由を聞くと、
「だって森の中で目立たないよ」
と、実用重視の返答が帰ってきた。
「あのね、向こうでも僕、迷彩だったよ」
そう言われれば実家に泊まってくれたときも、迷彩がらのタンクトップだったような気がしてきた。
朝食後、宮廷に出発する。聖女ご夫妻とその仲間8名、ルドルフくん、私と子どもたち4人、合計13名と大世帯になった。馬車3台で分乗になり、ルドルフくんは私と子どもたちの馬車になった。聖女様たちがうらやましそうな視線を送ってくる。もちろん聖女ご夫妻の警護がバッチリ付くから
騎士団から出ると、馬車は田園地帯を進む。午前の陽光に茶色く実った穀物畑が美しい。野菜の畑は土の茶色と葉の緑の縞模様をつくっている。川沿いの木立は葉が茶色くなり始めている。その川をすぎるとわりと近くに王都の城壁が見え始めてきた。聖騎士団は王都の近くにあると聞かされていたが、明るい時間に目の当たりにするとそのとおりであることがよくわかる。やがて城壁の門をくぐると市街地であり、沿道の人々が手を振ってくる。私達と聖女様の縁とかゆかりとかたいしたものではないが、一応聖女一派としてせいぜい手を振り笑顔を振りまいておく。
そして馬車はすぐに王宮に着いた。
車寄せに馬車が止まり、順に馬車から降りる。降りてみるとその場所は市街からは区切られている。騎士たちの案内ですぐに建物の中に入る。入って目が慣れると、みんながなんとなく並んでいるのがわかり、何となくその後ろにつく。すると、先輩たちがさっと場所をあけ、聖女様は、
「みんな、こっち。今日はみんなを陛下に紹介するんだから」
ということで、私達は聖女様のすぐ後ろについて王宮内を歩く。ルドルフくんの手はステファン先輩が握っている。あれは女子がルドルフくんの取り合いを始めないように先輩が先手を打ったに見える。途中で先輩はルドルフくんをフィリップ先輩に渡し、ご夫妻は道をそれていった。
広い場所に出た。フローラ先輩が小声で「謁見の間よ」と教えてくれた。
「聖女様はもう王子殿下と結婚しているから、王宮ではこちらを迎える側になっちゃうのよね」
「なるほど」
「私達もね、旦那がいなければ警備として向こうにまわるんだけどね」
「はあ」
少し待つと、
「国王陛下、聖女様がお入りになります」
と声がかかった。一同姿勢を正して国王陛下を待つ。
「やあ皆、人数が多いのでここになったが、気楽にしてくれ」
よく通る声がして陛下が入室された。肖像画でみなれていたからどの方かすぐわかった。続いて王妃殿下、聖女様ご夫妻、ミハエル殿下ご夫妻も入ってきた。
陛下と聖女様が着席し、
「面をあげ、楽な姿勢に」
という陛下の声が聞こえた。物音で一同一斉に立ち上がる気配がするので私も立つ。
「陛下、私の新しい仲間を紹介します」
聖女様の声が響く。
「サッポロのレイコ」
その声に合わせて一歩前にでて頭を下げる。
「トーカイムラのマホ、その妹ミホ、同じくトーカイムラのアカネです」




