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第22話 ルドルフくんの謝罪

 ルドルフくんはそのまま聖騎士団で生活することになった。女騎士たちはそれに大いに盛り上がり、なにかにつけルドルフくんに接触してきた。アイドルみたいと言うよりアイドルそのものである。ルドルフくんもひとりひとりに丁寧に応じていて、しかも全員の名前を知っていた。名前を呼ばれた方は当然もうメロメロで、ひどい人になると「私婚約解消してルドルフくんと結婚する」などと言っている。聖騎士団はほぼ女性だらけ、ステファン殿下をはじめとした男性はたいてい既婚だから、任務に忠実な人ほど男性に耐性が低いのかもしれない。


 問題は夕食後におきた。

 きっかけは聖女様の一言だった。

「ルドルフ、もう遅いから寝ようか」

「うん、ママ!」

 まず、食堂に響いた「ママ」という言葉に騎士たちが動揺した。

「じゃ、一緒に寝よう」

という聖女様の言葉に異論が続出した。

 ヘレン先輩。

「ルドルフ、聖女様とはいっしょにいっぱい過ごしたでしょ。今夜は私んとこおいで」

 フローラ先輩。

「ヘレン、私ほとんどルドルフと接点無かったんだけど」

 ネリス先輩。

「皆のものずるいぞ、ルドルフ、マルスと遊びたいじゃろ」

 みほちゃん。

「るーくんは私達のとこ、こないの?」


 まずいことになった。聖女様もルドルフくんのことになると感情的になってしまうかもしれない。他の先輩たちもそうだし子どもたちの気持ちもよく分かる。これはなんとかせねばと焦っているとステファン殿下が発言した。

「アン、ぼくもルドルフと一緒に寝たいけれど、まずは子どもたちを安心させてあげたらどうかな。今夜のアンは僕が独占したいな」

「わ、わかった、ステファンがそう言うなら」

 さすがステファン先輩である。あの聖女様を納得させてしまった。

「みんな、とりあえず今夜はそうしようよ。子どもの気持ちが一番大事だよ。玲子さん、頼むよ」

「わかりました、殿下」


 とはいうものの、そのあとも一悶着あった。まだ私達は来客用の部屋にいたのだが、本来2人用の寝室にベッドが4つ入れてある。それにさらに一つ入れられなくはないが、そうすると通路が無くなる。子どもたちはベッドを並べてしまいたかったようだ。

「僕は床でもソファーでもいいのだけれど」

 ルドルフくんドラゴンだから、床でも上等な寝床らしい。

 この問題でもめると部屋の世話をしてくれているヘルガさんに迷惑がかかるから、

「ま、あとでそれはきめよう。ベッド4つでなんとかなるよ」

と無理矢理に決めた。

 実のところ私はルドルフくんにベッドをゆずってソファーででも寝る気でいた。そうすれば部屋で子どもたちだけで楽しく寝れるだろう。夜ふかししそうであれば大人の私の出番である。


 部屋にもどったところでヘルガさんにお願いした。

「あの、クッションとブランケットを用意していただけないでしょうか」

「いいですが、ソファでお休みになる気ですか」

 うそをついても仕方ないと思い、

「そうです。聖女様には黙っておいてもらえないでしょうか」

「そうですね、お伝えしたら私が叱られるでしょうね」

 ヘルガさんはそれだけで許してくれた。


 結局ベッド問題は、まほちゃんとみほちゃんが一つのベッド、空いたベッドにルドルフくんが寝ることになった。せっかく持ってきてもらったブランケットは、必要があれば使おう。


 寝る段になってしばらくは、女の子たちがルドルフをキャイキャイ追いかけてにぎやかだった。うるさいなとは思うものの、彼女たちなりに不安とか寂しさを紛らわしているのかもしれない。直接に体に触れ合うことでお互いの存在を確認しているようにも見える。それもしばらくしたら大人しくなり、あかねちゃんやみほちゃんは疲れ果てたように眠りに入った。まほちゃんはふたりのふとんを直したりして、自分も眠りに入った。


「ルドルフくん、寝ないの?」

「玲子さん、ちょっといいかな」

 ルドルフくんは応接室の方に先に立って移動した。


 ソファに向かい合って座る。

「玲子さん、こっちつれてきちゃってゴメンね」

 私はピンときた。

「ルドルフくん、もしかして聖女様に私にはちゃんと謝れって言われた?」

「ははは、やっぱり大人にはわかるんだね」

「まあね」

「ほんとうにごめんなさい」

「私は気にしてないよ。こっちの生活も楽しいし」

「うん、ありがと」


 朝目覚めると子どもたちとルドルフくんはまだ寝ていた。どの子も可愛い寝顔だ。すべすべぷりぷりなほっぺたをツンツンしたくなる衝動に耐えながら全員の顔をみてまわると、私は幸せな気持ちになってきた。

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