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第21話 ヴェローニカ様の本音

 聖騎士団にやってきたヴェローニカ妃殿下は、いろいろと冗談やら皮肉やらを交えつつ、要するに聖女様の関係者の私達4人の力になろうとしてくれているのは容易に理解できた。

「あかねちゃん、みほちゃん、なにか不自由はないか? どうしてもアンたちは騎士団育ちだからな、気が付かないこともあるだろう」

 あかねちゃんの答えは、

「ううん、だいじょうぶ。みんな良くしてくれてるよ」

と、健気なものだった。実際ヘルガさんはよくしてくれているし、そのほかの人達もみんな優しかった。

「そうか、それはよかった。みほちゃんはどうだい?」

 みほちゃんは少し考えてから言った。

「あのね、るーくんと遊ぶのがあんまりないのが、さみしいな」

「るーくん?」

 まほちゃんが口を挟んだ。

「ルドルフくんのことです」

「え、あ、あのドラゴンのルドルフのことか?」

「そうです」

「まあかわいいのはわかるが、ドラゴンと遊ぶのか?」

「そうです」

「なにして遊ぶんだ?」

 それにはあかねちゃんとみほちゃんが声を合わして答えた。

「おにごっこ!」

「そ、そうか、それはすごいな」


 私は一つ気づいたので口を出させてもらった。

「ヴェローニカ妃殿下、ルドルフくんは人間の子どもの姿になれるのです」

「そ、そうなのか、こっちでも人の姿になれるのだな。私はあのドラゴンとどう遊ぶのか、ものすごい光景を想像していた」


 そのあとはよもやま話で終始した。ヴェローニカ妃殿下は美しさと強さをこの国で象徴しているような気がする。それに対し聖女様は智と愛の象徴だろう。いいコンビである。この二人が二人の王子の妃として永く活躍していくだろう。


 お昼前にヴェローニカ妃殿下はお帰りになった。帰り際、私を含め四人に思いついたように言った。

「君たち、うちの娘にも会いに来てくれないか。かわいいぞ。そうだ、ルドルフも連れてきてくれたらステラも喜ぶだろう」


 彼女が本当に言いたかったのはこれだろう。聖女様が嬉しそうな様子であることからすると、聖女様もそうしたかったのだが外国人の私達を宮廷に入れるには、なにがしかこうした招待が必要だったのかもしれない。


 その日の午後、私達は聖女様とともに練兵場に出た。一同が外に出たところで聖女様は空に向かって、

「ルドルフー!」

と叫んだ。


 声で呼んでも聞こえるわけはない。聖女さまもそれは承知しているのだろうが、気持ち的にはやっぱり大声で叫びたいのだろう。

 少し待っている間にドラゴンが飛んできた。私達の上を3回くらい回ったあと、聖女様の前にふわりと着地した。

 彼の姿はとても大きい。人間の姿を知らなければ恐怖で動けなくなってしまうだろう。聖女様はそんなドラゴンの前にスタスタと歩いていって、

「人間の姿になってよ」

と言った。するとドラゴンは天に向かって「ウォーン」と一声吠え、その姿は白い煙に包まれた。私は低温実験でデュワー瓶という魔法瓶に液体窒素を注ぐときの白煙を思い出した。

 その白煙が消えると、見慣れたルドルフくんの姿が現れた。まほちゃん、みほちゃん、あかねちゃんの3人は喜んで、ルドルフくんに抱きついた。


 一緒にいた女騎士たちの一部は猛烈に驚いていた。離宮に派遣された騎士たちから話は聞いていただろうが、実際に目の当たりにすると驚くのも当然である。私はそれよりも、前回会ったときには気づかなかったが、ルドルフくんの服装に驚いた。向こうで彼は迷彩柄の服ばっかり着ていた。聖女様によると本人の好みだという。今目の前にいる彼は、ふつうにこの世界の服装になっていた。


 ルドルフくんをふくめ子ども4人が抱き合って喜ぶのが落ち着くと、聖女様が話しかけた。

「ルドルフ、ヴェローニカ様がね、ルドルフにステラ様に会ってほしいんだって」

「ぼくも会いたい!」

「会ったこと、あったっけ?」

「空から見たことはあるけど、近くではないね」

「じゃあ、今の姿でぜひ会ってあげて」

「わかった、で、いつ、どこで会えるの?」

 ルドルフくんは心底嬉しそうである。

「近い内に、宮廷でね」

「じゃあこの服じゃまずいか」

「そうなのよ、あんた、しばらく騎士団に滞在して、服作ろう」

「わかった」

「もちろんみんなと一緒に遊んでね」

「うん!」


 練兵場から騎士団の建物に入る。ルドルフくんは聖女様と手をつなぎ、キョロキョロしながら歩いている。

「どうしたのルドルフ」

「あのね、僕、騎士団の建物の中、初めて入る」

「いや、初めてじゃないよ」

「そうなの?」

「そうだよ、卵はこの建物の中で温めたんだもん。卵がかえってからしばらくはこの建物の中で暮らしてたんだよ」

「そっか、そうだったね、あの頃はママたちもまだ小さかったね」

「そうだよ、十歳にもなってなかったから」

「みんな可愛かったよね」

「うん、うん、うん?」

「どうかした?」

「かわいかった?」

「そうだよ、いまはかわいいというより、きれいだよ」

「うむ、よし」

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