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第103話 予言

 ヤニックさんと食事した翌日、再びヤニックさんと面会となった。ただ、なぜかそこにエミリア女官長が同席した。

「レイコさん、あなたは聖女様の後輩ということですが、聖女様と同じことをするのですね」

「は、どういうことでしょう」

「ヤニックのことです」

「ヤニックさんがなにかしたのでしょうか」

「昨日、退職願を出しました。私がとめていますが」

「え、そんなことが……」

 私がヤニックさんの顔を見るとヤニックさんは少しうろたえた。

「あの、私は離宮に勤めていますから、レイコさんのお力になるために、少しでも近くにいられればと思いまして」

「え、そんな」

「こんなことが以前、聖女様にもあったのですよ」

「そうなんですか」

「ネリーです、ネリーはもともと離宮勤めだったのは知ってるでしょう」

「はい」

「ネリーはね、聖女様に直接雇ってもらおうと退職願を出したのよ。幸いあの方たちはそれは良くないと気づき、彼女は聖女長からの出向という身分になっています」

「なるほど」

「だからヤニック」

 エミリア女官長様はヤニックさんを見据えた。

「あなた転勤の話も出ていたのでしょう。退職願い出す必要なんてないのよ」

「は、はい、慌てていました」

「とにかく、早急にあなたには聖女庁に出向する手続きをとります。一度離宮に帰り、準備してください」

「はい」

「住居の方は、王都にこちらで用意します。とにかく離宮の仕事の区切りをつけてください」

「はい、ありがとうございます」


 そういうわけで、ヤニックさんは離宮へと戻って行った。


 ヤニックさんと面会し、ヤニックさんの移動も決まったことで私の精神状態は安定した。安定はしたが名目上の拘禁生活は続いた。聖女様が帰ってきたら、私はヤニックさんと結婚を前提とした交際を始めたいと考えていた。あちらの世界にもどる可能性もあるが、それはそれ、こちらで地に足をつけた生活をしたかった。聖女様ならば勢いで一気に新婚生活を始めてしまうだろうが、私はそこまで焦ってはいない。平日はしっかり仕事をし、週末には恋人とデートする。そしてやがて家庭をもつ。そういう普通の女性の幸せを、私はつかみたくなっていた。


 ところがである。私はステファン先輩に渡したお金の額から、5日もすれば帰ってくると考えてきた。ところが10日過ぎても聖女様は帰ってこなかった。さすがに伝書鳩魔法でときどき連絡はくるが、

「私達は大丈夫、まだ帰れない」

とだけしか無い。フィリップ先輩からどこにいるのか、いつ帰るのか質問しても答えは同じだった。魔法の伝書鳩は連絡する相手を探し出して確実に手紙を渡してくれるが、どこにいるかの情報は伝書鳩自体からはわからない。だから聖女様たちはどこにいるのかわからないままだった。ただ、無事がわかったのでとりあえず私の拘束はとかれ、聖騎士団にもどされた。


 聖騎士団の団長のデスクには未決の書類が山となっていた。ある程度はマティアス武官長の指示で決裁がされていたそうだが、それでも団長本人でないと決めかねる事柄はあるものだ。同様に聖女庁の私のデスクにも大量の書類が待っていた。秘書としての立場で聖女様と相談の上決めなければならない事柄があるのだ。

 復帰初日はその書類の山と格闘し、多少強引に書類を減らした。当面の聖女様のスケジュールは勝手に決めた。ギリギリまで帰ってこなければ適当に理由をつけて断れば良い。ただ、地方からの招待のようなものは向こうにも準備というものがあるから、日程の近いものから順に丁重にお断りの連絡を入れることにした。ジャンヌ様に代わっていただけるものは片っ端からジャンヌ様にお願いした。自動的にジャンヌ様は多忙を極めることになるのだが、当のジャンヌ様はなんだか楽しそうだった。

 天文関連とか気象関係はジャンヌ様にご判断いただくわけにはいかないので、先輩たち二相談の上私が決断した。そうでもしなければ未決の書類が減らなかったのだ。

 女学校とか騎士団での算術の授業は私でも代講はできたのでやった。

 大学の方は、かなりヨレヨレになってしまったが、無理やり代講した。学生のというよりは自分の勉強にはなった。


 聖女様の行方不明について、私が黒幕であるということは徐々に広まっていった。チラチラと視線が飛んできて、聖女様の行方について質問したそうな雰囲気は伝わってきた。大人たちは遠慮というものがあるのだが、若くなるにつれてそれがなくなる。女子大では遠慮がちに、

「聖女様の授業も受けたいのですが」

と言われるのがせいぜいだ。これが女学校の低学年になると、

「聖女様はいつ帰ってくるのですか」

ともろに聞いてくる。私にもわからないので、

「どこへ行ってもとれたての果物が無くなったら帰ってくるんじゃないのかな」

と適当に答えていた。


 次の日女子大で自習するヴァルトラントのオクタヴィア姫のところへ行ってみると、姫は断言した。

「もうすぐ、聖女様はお帰りになります」

「何故ですか」

「もう、ヴァルトラントの収穫の時期は終わりました。とれたてはもう無理です」

「そうですか」

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