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第100話 行方不明

「玲子ちゃん、話ってなんだい?」

 殿下は私が面会するとすぐ聞いてきた。

「先輩、聖女様とヴァルトラントに行ってください。そこでいちご狩りでもしてきてください」

「いちご狩り、この世界にあるの?」

「ありません、例えです。ルドルフくんに乗って、国境を超えてください。適当な農村に降りて、おいしい果物でも食べてきてください」

 私はステファン殿下の前に名産品のリストとヴァルトラントの地図を置いた。

「このリストは、オクタヴィア姫を始めとしたヴァルトラントからの留学生につくってもらいました。地図には宿のある街も記載しておきました」

「うん」

「そして軍資金はこちらです」

 私は殿下の前に、どかっと金貨の入った袋を置いた。

「どうしたの、これ」

「騎士団の機密費です。独断で持ち出しました」

「アンはこれ、知ってるの?」

「知りません。ですから今夜、いきなり出発してください。ルドルフくんは呼んであります」

「わかったよ。それでこれ、誰かに相談したの? 兄上とか」

「いえ、すべて私一人でやっています。なにかあったとき、処罰されるのは私一人で十分です」

「わかったわかった。その通りするよ。だけど僕はともかくとして、アンの仕事、どうするの?」

「スタッフが優秀ですから、何日かいなくても大丈夫ですよ」

「授業は?」

「自習でいいんじゃないですか、最悪、私が代講しますよ」

「なるほどね、玲子ちゃん、ありがとう」

「お礼は聖女様が元気になってから、言ってください」

「わかったけど、やっぱり感謝してるよ」

「とにかく先輩、これ、先輩のアイデアってことにしといたほうがいいですよ」

「そうかな」

「そうですよ、奥様はそのほうが感動しますよ。あと、そうすれば私の責任が追求されることもないですから」

「ははは、わかったわかった」

 先輩は私の冗談がわかってくれたようだ。

「先輩」

「うん」

「成功の秘訣をお教えします」

「うん、たのむよ」

「聖女様を楽しませるとか、今回は置いといてください。先輩ご自身が美味しいものを堪能してきてください。そうすれば聖女様、自然ともとにもどりますよ」

「はは、玲子ちゃん、アンのこと、よくわかってるな」


 翌朝騎士団は大騒ぎになった。ステファン殿下ご夫妻が行方不明になったからである。


 私はすべてわかっているので何も慌てなかった。当然それはそれで目立つから、いろんなひとに疑われた。まずはレギーナさんである。

「レイコさん、なにかご存知ですか」

「いえ、存じません」

 ヘレン先輩も怖かった。

「玲子ちゃん、なにか知ってるんでしょ」

「知りません、知ってても、知りません」

 聖女庁に顔を出すと、ちょっと反応がちがった。

「レイコさん、聖女様はいつごろお帰りになるの」

「さあ、騎士団からなくなった機密費の金額からすると、5日くらいなんじゃないでしょうか」

「じゃあその方向で調整しましょう、ジャンヌ様いいですね」


 私が今回の件で首謀者であることはあっという間に知れ渡った。ネリーさんは何も言わないが、うらめしそうな視線を向けてくる。

「レイコさん、私にくらい言っていただいてもよかったじゃないですか。聖女様のお召し物、心配です」

「おそらく果汁まみれでお帰りになります。洗濯、おねがいします」

 ネリーさんは困ったように笑った。


 私はフローラ先輩を捕まえた。

「先輩、お願いがあります」

「なに、容疑者レイコ」

「容疑者でなく、犯人です」

「で、何?」

「留学生たちが一切口をきかないよう、気をつけてください。なんだったら監禁しちゃってください」

「ああ、行き先ね」

「はい、公式なルートに情報が乗ると、戦争になりかねません。親衛隊も危険です」

「わかった。だけどヘレンでなく、なぜ私?」

「ヘレン先輩は向こうでも先輩です。私のこと、かばいすぎると思います」

「なるほどね、だけど私も玲子ちゃんをかばわない自信、ないわよ」

「そ、そうですか、ありがとうございます」


 私は補佐すべき聖女様がいないので、仕事があんまりなくなってしまった。しかたがないので聖女庁の自分のですくに座っていると、近衛騎士団がやってきて私を逮捕した。馬車に乗せられた。


 馬車は王宮の裏口に入った。馬車から降ろされた私は、王宮の地下に連行された。


 私は自分の罪がわかっていたから、騎士たちに引っ張られていても一切抵抗しなかった。いわゆる確信犯である。歩きにくい石の階段を降りていく。薄暗くて転びそうになると、騎士のだれかが支えてくれた。


 地下3階にたどり着いた。映画でみたことがあるような典型的な地下牢であった。ほとんどの地下牢は空いていたが、一部は囚人がいる。見覚えがあるのは帝国のスパイだと思う。

 私は地下牢の一つに入れられた。じめじめとした地下牢は変な虫は歩いているし空気も悪いい。一応木製のベッドもあるが寝具はない。天井が妙に低く、私でも立つ頭がつかえそうだ。仕方ないからベッドに浅く腰掛けた。


 私はここで何日暮らすのだろうか。もし聖女様になにかあったら、私はここから出られないかもしれない。急に不安になってきた。


 ヤニックさんに会いたい。

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