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ソラノセカイ:理想郷  作者: Suzu8
第一部一章 『紅星の遺跡』
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第四話 『炎の精霊』

 ソラとシリウスは二人で遺跡の最奥にたどり着いた。その中心には、先の爆発と光の元凶と思われる、紅い水晶玉があった。


「とりあえずこれをなんとかするしかなさそうだな」


「そうね。で、ソラはどうすればいいと思う?」


「そりゃやっぱりスタンダードに破壊…って、もしかしてこういう事態を想定してなくて止め方知らない!?」


「こんなこと今までの記録にないからね。あと、止め方を一緒に考えるためにあんたがいるんでしょ。ソラ、どう見ても戦えなさそうだし、それくらいのことはしてよね」


「知らないんだね!…まあシリウスのこと支えるって言っちゃったし、なんとかしてみるぜ」


 シリウスはソラの言葉によって他人を信頼することを新しい選択肢とし、ソラを信頼できるようになってから彼女の本来の明るい様子に戻った。


「いったん冷静に考えてみると、この状態の水晶を破壊する事は最終手段にしたほうがいいな(最悪の場合爆発して二人仲良くお陀仏)。光を塞いだら止まると考えても近づくのは危うい。やっぱりこの水晶をシリウスの使えそうな魔法で冷やすってのはどうだ?」


「確かにそれが一番確実に行けそうね。とりあえず、壊れない程度に水魔法を打ち込んでみるわ」


 シリウスが魔法の詠唱のようなものを始めると、彼女の前に水のリングのようなものができた。


「すげぇ、これが魔法かぁ。なんか思ったよりイメージ通りだな」


「そんなことどうでもいいから、とりあえず撃つわよ。アクアショット!」


「ネーミングわかりやすいけどなんかダサい!」


 彼女の魔法で生み出された水は一直線に水晶のほうへ向かっていった。しかし、その水は水晶の直前で消えてなくなってしまった。


「え、嘘⁉まさかそんなすぐ蒸発する?」


「二十メートルくらい離れている俺らは暑さ感じないってのに、マジでどういう理屈だよ。まさに異世界」


「でもどうするの?これで近づいたら蒸発することが分かったし、破壊は最終手段にしたいわ」


「いやでももう他に方法が...」


 自分には考えることしかできないから、必要以上に責任感をもって考えているソラだったが、そんな気持ちで画期的な発想が浮かぶわけもない。刻一刻と迫ってきていそうなタイムリミットに焦るが、そんな中、ソラは自分の得意分野にヒントを探し始めた。


「俺がこの状況でこの世界に呼び出されて、夜空の星が関係していないわけがねえ。こじつけだけど、何も浮かばないよりはいいだろ。星、星...待てよ?赤い星、岩石、球体............そうか、火星だ!」


「カセイ...何それ?」


「俺が元いた世界には火星っていう太陽に照らされて赤く光る惑星があって、こんなに熱くはないけど。そもそもこの世界に惑星って概念あるのか...?じゃなくて、その水晶のてっぺんだ!火星には北極と南極に氷があったからそこだけ温度が低いはずだ!」


「さっきから何言ってるか全く理解できないけど、確かにてっぺんのあたりが冷たそうね。アクアショット!」


 シリウスが水晶玉の頂点に向かって魔法を撃ち込むと、蒸発する前に魔法が届き、そこから出ている光が少し弱まった。


「よし、これならいける!」


「本当にあってたんだ…なんて都合のいい」


 シリウスがもう一度魔法を撃とうとした瞬間、水晶玉の頂点から亀裂が走り、割れてしまった。

 その直後、光がさらに強くなり、そこから衝撃波が発生し、二人は少し吹き飛ばされた。そして、割れた水晶玉のかけらは消えてなくなった。


「大丈夫か、シリウ……!?」


 ソラが顔を上げると、目の前に自分を見下ろしている炎の大男が立っていた。その体の大きさは、まさに大男と呼んでいいくらいのものだった。その大男は、低い声でカタコトで話し始めた。


「コイツガ、”アノカタ“ノ、モトメシ者…」


「誰だよお前、今なんて言っ……!」


 ソラが喋っているのを遮るようにその大男は指をパチンと鳴らし、ソラは気を失った。


「ソラ、ソラ!……これは、精神魔法!?」


 シリウスがソラの体を揺さぶっても、全く目が覚める気配はない。


「オマエ、ニンム、カンケイナイ。ムダナ、コトハ、スルナ」


「あんた、見たところ炎の上位精霊ってとこね。誰の命令か知らないけど、関係ないソラを傷つけるのは許さないわ」


「コイツ、カンケイ、アル。オマエ、ニンムノ、ジャマ。ハイジョ、スル」


「あなたはこの国の危険になりかねない。こちらこそ排除させてもらうわよ。レインアロー!」


 シリウスの魔法攻撃から、二人の戦いの火ぶたは切られた。



 * * * * * * * * * *



「なんだ、この変な感覚......ってかここはどこだ、見渡す限り真っ白...」


「やあやあ初めましてだね、ソラ」


 ソラの背後から、謎の男の声が聞こえた。声の主の背格好はほとんどソラと同じで、祭司のような格好をしている。その男は、原理はわからないが何もない真っ白な空間に座っていた。


「ここはどこだ。なんで俺の名前を知っている」


「そんなにピリピリしないでおくれよ。まだ何もしてないんだし」


 その男はおどけたふうに言った。ソラはそれに少しイラついたが、心を落ち着かせて言った。


「...さっきの大男とお前は違うやつみたいだな。とりあえず、お前は誰だ」


「ん~どうやって答えようかな~、意外と難しいね」


 男はそうやってこれもふざけたような口調で言ったが、少し考えた後、神妙な顔と声色でこう答えた。



「僕は星神、ステラ。君に興味がある一人の男さ」



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