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第四話 ざまぁはお一人で

宜しくお願い致します

 この一言に一同はポカーンとしているが、エリーゼはため息を吐き

 (やっぱりかぁ……この馬鹿王子……)

 小説の通りの展開にエリーゼは頭を抱えた。


 ルイーゼも呆れた顔をしているがすぐに了承した。

 「婚約破棄確かにお引き受け致しました。というか貴方が女性とふしだらなことをしてる事は我が家でも承知しているので特に未練はございません。

 私の落ち度でもいいので婚約破棄させてほしいと国王陛下や王妃殿下に話は通しておりますし……」


 そう言い終わるとルイスは盛大に舌打ちして

 「はぁ!? き……貴様! 父上や母上に話したのか!」

 「当たり前でしょ。貴方が仮にこのまま国王になどなればあちこちに王位継承権を持つ子供を作りかねないので。監視なりなんなりの強化にはとても役立つとは思いませんか?」


 と馬鹿にする様に笑うルイーゼ。目は笑っておらず怖い。周囲の空気も凍っている。

 というか婚約破棄自体も本人同士だけの問題ではないというのに分かってるのか?と将来の国を思い全員恐怖を覚え始めた。


 「ふ……ふん! だが何も証拠は……「いやありますわ。皆さん此方へ」え?」

 ルイーゼの声に後ろにいた令嬢たちが憤怒の表情や怯えた顔で出てきた。


 その顔にはルイスは見覚えがあり顔を真っ青にした。

 「な……なな……だ……誰だその女達は……」

 (誤魔化すの下手すぎん?)

 エリーゼは思わず心の中で突っ込んだ。


 しかし出てきた女性達はそんなルイスの言葉に大きく反応した。

 「ひどいですわ! ルイス殿下! あんなに私を愛して下さったのに!」

 「わ……私も……ルイス殿下が運命だって信じてたのに……」

 「……私はあんなに拒否したのに……私の家を潰す事もできると脅されて無理やり関係を……私はもう汚れてしまいました……せめて責任をとってください!」


 泣く者や恨めし気な瞳をする者。反応は色々。しかしルイスは

 「ええい! 黙れ黙れ! 兎も角私にそんな記憶はない! 今すぐ立ち去れ」

 「立ち去るのは貴方のほうですよ。ルイス殿下」


 喚くルイスの発言に水を差す凛とした声。その声はエリーゼのすぐ隣から聞こえた。

 

 「き……貴様……レイン!」

 声を発したのはレインである。普段はルイスに対しての劣等感と爵位の違いなどからむしろレインはニコニコと愛想よく振る舞っていた。

 だが今は違う。レインの瞳は絶対零度の冷たさを持ってルイスを睨みつけている。


 「ルイス殿下。恐れ入りますが先日、貴方は我が愛しの婚約者であるエリーゼ嬢を誘惑しようとしていましたよね? それに拒否する彼女の腕を無理やり引っ張って……これは立派な傷害では? 証人は私とそしてルイーゼ嬢。

 この時点で貴方の地位は危ういと思いますが」


 その声も抜群の冷たさを持つ。思わずエリーゼはぶるっと震えた。自分がいつも聞く優しい声や甘い声と違う。明らかな敵意を持った声色。他の観衆もいつも優しく微笑みかける期待の公爵令息のその変貌に恐れを抱いた。

 そしてルイスもだ。ルイスは震えながらなんとか声を絞り出す。


 「う……うるさい! 私はこの国の王になる男だ! 衛兵! そこにいる失礼な男と私を馬鹿にしたルイーゼ含め、令嬢どもをひっ捕えろ!」

 だが衛兵は動かない。


 「な……何故……動かないのだ……」

 その間抜けなルイスの声にレインはクスクスと冷たい笑みを浮かべる。

 「目立ちたがり屋でプライドが高い貴方の事。どうせこういったパーティを開けば何か仕掛けてくるとは思っていたので先に根回ししたんですよ」

 「な! し……しかし私は……「"未来の王"でしたっけ? 本当にそうでしょうか」は?」


 レインの言葉にルイスは固まる。

 (こんな展開….…小説にないわよ!? 一体何が……)

 エリーゼは不安そうにレインを見やる。それに気がつくとレインはエリーゼにいつもの優しい笑みを見せて手を握ってくれる。

 そしてまたルイスの方を冷たい顔で見つめる。


 「衛兵。今すぐに国王陛下と……"元"王妃殿下を」

 レインの指示に兵士たちはすぐに二人を呼びに行く。ルイスは口をあんぐりと開けている。

 「も……元? おい! 母上を今"元"王妃殿下とそう言ったのか!?」

 「ええ。ほら来ましたよ」


 そう言ってみると前方には国王である"グランドール・フォン・ライラック"。そして後ろで拘束されてるのは元王妃……"ルシア・クライン・ライラック"である。


 「母上!おいこれはどういう事だ!」

 「貴方の見た目は不思議ですよね? 貴方の髪の毛、まぁ私のエリーゼには敵いませんが美しい金色。瞳の色はかろうじてルシア様と同じではありますが。その金髪はどこから来たのですか?」

 「はぁ? そりゃあ……」


 その瞬間顔を真っ青にし始めたルイス。金髪は確かにありふれてはいる。しかし父である国王の髪と瞳はレインと同じカラーリング。一方の母は翡翠の瞳を持つが少し赤毛混じりの茶髪である。明らかに似ていない。


 そこでエリーゼは思い出した。それは最後の場面でちょこっと出ていた真実

 (……ルイスは……国王の血を引いてない。王妃が使用人と密通してできた……子供……)


 小説ならばさらっと流してた部分だが現実になるとかなりやばい事実である。エリーゼも喉をひゅっと鳴らした。

 それに加えてあくまでこのルイスと原作エリーゼの破滅は自然破滅。

 レインはその温厚な性格や幼馴染の本性を知りむしろ何故自分はこの幼馴染を注意も守りもできなかったと自分を責めてしまい、この真実に辿り着けない。


 これにたどり着くのは最後……婚約破棄後に使用人の裏切りで発覚するのだ。

 そう……原作でレインがたどり着くことのない真実なのである。


 「貴方の父上は国王陛下ではなく……城に仕える使用人です」

 「で……出鱈目を言うな! 何を証拠に!」

 「貴方の実父が教えてくれましたよ? それに貴方の母上も。前々からおかしいとは思いませんでしたか? 自分の容姿を…」


 しかしルイスは諦めない。

 「ば……馬鹿をいうな! た……確かに気になってはいたが……こ……これは母上の……先祖が……」

 「おや? おかしいですね? まず王家は代々私や陛下、私の父上と同じような色の髪と瞳を持って生まれています。


 そしてもう一つ……貴方の母上様のご先祖で貴方の様な鮮やかな金髪を持つ者はいなかった筈……じゃあ貴方のその美しい金の御髪は…一体どなたの遺伝なのですか?」

 クスクス笑うレイン。その美貌も相まって中々の恐怖を感じる。ルイスはぺたりと膝をついた。


 「あ……ああ……」

 ルイスは悟った。自分には本当の王家の血は入ってないのだと……。そして顔を上げて般若の様な顔で自身の母を睨みつけた。

 

 「この売女! お前のせいで私はこんな目に遭ってるのだ! 穢らわしい! お前が私の母なんて悍ましくてしかた」「それは貴様も同様だ。ルイス」


 すると先程まで黙っていた国王が喚くルイスの発言を遮った。

 「貴様も同じだろう。自身の婚約者を裏切って数多の女性を惑わした。いや…確かに私も同罪だ。妻のそんな情事も知らずに……いや知ってはいたが……受け入れられなかった……」

 「ち……父上?」


 「我妻……ルシアに関しては私にも責任はあるから離婚はしない。だがしばらくは城の離れで暮らしてもらうことにする。悪いがお前を妻として愛せる自信がない……」

 「陛下……」

 「托卵とはな……はは……私も馬鹿だったのだな……」


 国王は額を抑えて自嘲気味に笑う。ルシアも流石に悟った。自分は本妻として彼の隣には2度と立てないのだと。後に知ることになるがその後、国王は側妃に王妃としての役割を任せたらしい。


 そんなある程度甘めに感じられる罰に息子のルイスは

 「ち……父上! 私は騙されていたのです! まさか私が父上の息子ではないなん「今はそんな話をしてる場合ではない!」父上?」


 話題をすり替えられると思い込んでいたルイスは呆気に取られた。

 「もし仮にお前が王太子として勤勉に過ごし次の王になるに相応しくなったら今回の托卵も水に流そうかとも考えていた。我ながら浅はかだが……


 だが……お前は王太子の地位を利用して婚約者を裏切り不貞を働いたな! それに加えて我々の許可なく勝手に婚約破棄宣言!

 私の落ち度もあるがこんな馬鹿に我が国を任せる事などできん! よってお前の王位継承権を剥奪する!

 衛兵! このバカ息子を連れて行け!」


 その言葉に兵士たちはルイスを捕縛して引きずっていた。途中途中で喚いていたが全員無視して連れていった。


 「さて……皆の者すまなかった。引き続きパーティを楽しんでくれ」


 国王は一気に老け込みながらもそう宣言した。波乱のパーティは幕を閉じたのである。

 (展開が急すぎてわけわからん……)

 原作を知るエリーゼはぐるぐると混乱して原作と違う動きをするレインを見つめるしかできなかった。

登場人物

  ルイーゼ・セルティア

 ルイスの婚約者でありセルティア公爵家の令嬢。原作ではルイスに婚約破棄された後主人公と恋に落ちる。また原作エリーゼと仲が悪いが転生エリーゼとは仲良しである。

 恐らく大体のざまぁ系で悪役令嬢的立ち位置になるがあまり目立たなかったかもしれない。

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