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第三話 金の王子と真紅の令嬢

宜しくお願いします

 そして更に月日が経ち、二人は王立学園に入学を果たした。その頃には彼らの交際は双方の両親に認められた。エリーゼの親は王族との太いパイプを結ぶチャンスだし、レインの親はエリーゼの事を気に入っている。何より精神年齢が高校生の彼女は他の子より大人びてるので安心して息子を任せられると思った様だ。


 あれからエリーゼは更に髪の毛を伸ばして頭には紫の蝶の様な髪飾りをつけている。これはレインからの贈り物。ドレスも落ち着いた色合いの紫と下品でない限りの金を散りばめた美しいドレスを着ている。幼少から比べて遥かに美しく成長している。


 一方のレインも美しく成長。更に身嗜みを整えたり、体を鍛えたり、社交性やマナー。学業など、それらの方を伸ばしており、現在は社交界でも注目の存在にされている。

 彼は原作通りにエリーゼに尽くしてくれる。 

 エリーゼとして原作にないはずのデートの誘いや贈り物として蝶々の髪飾り等を貰ったあたりから違和感を抱いたが、実際は貰ってたかもと違和感を放置した。


 二人は仲睦まじく学校に通い始めた。そんな時にエリーゼはある関門にぶつかっていた。

 「君がルドウィック家のエリーゼ嬢だね。私は"ルイス・ルツ・ライラック"。この国の第一王子だ。君の婚約者のレインとは従兄弟同士なのさ」

 「そうなのですか。すみません。私用事がありますので」

 「少しぐらい話してもいいだろう?」

 

 (よくねぇんだよこちとら……)

 現在エリーゼはあのざまぁ対象の片割れであるルイスに目をつけられてしつこく迫られていた。

 ルイス……確かにイケメンではある。ムカつくことにエリーゼと同じ、金色に輝く髪に翡翠の瞳。冷たい雰囲気の冬の様な見た目をしたレインと対照的にまるで太陽を閉じ込めた温かさと温厚さが滲み出た見た目だ。


 見た目でどちらがとっつき易そうかと言われればルイスだろう。もし今のエリーゼが原作のエリーゼならばこの男に堕ちることになる。

 だが今のエリーゼは違う。


 「失礼を承知の上で申し上げます。私は殿下の従兄弟であらせられるレイン様の婚約者です。婚約者のいる身である淑女が他の殿方と二人っきりになるのは宜しくないかと」

 「ふん。レインか……だが私は王族。彼方は所詮は公爵家でしかない。それに君もどうせ隣を歩くなら私の方が良いだろう?」


 暗にレインを貶し、自身の方が優れていると言っているのだ。それも本人の力のみでは変えることは難しい爵位を貶して……。これにはエリーゼはイラつきはじめ…

 「滅相もございません。私は()()伯爵家の娘ですもの。王太子殿下と並べる器では御座いませんわ。

 それにレイン様は努力家でなんでも卒なくこなせる能力をお持ちです。それに私を大切にして下さる自慢の婚約者ですもの」


 そう営業スマイルを崩さずに話す。エリーゼは心の中で目の前の整った顔を膝蹴りしながら淡々と返す。するとイラついたのか顔を顰めたルイスはエリーゼの腕を引っ張り始めた。

 「いた……」

 「貴様……王太子である私の誘いを断るとは不敬であるぞ!」


 ギリギリと締め付けられる細い腕。エリーゼは痛みで顔を歪める。しかしそれは突如緩んだ。

 「何をなさっているのですか! 殿下!」

 「な……レイン!」


 そこに現れたのはレインである。レインはルイスの手を掴み離れたエリーゼを抱き止めた。

 「き……貴様……私は」

 「王太子殿下。ですよね? もし私の婚約者が貴方様に失礼な態度をとってしまったのなら私の方からお詫び申し上げます。

 ですが今のはやりすぎでは?」

 レインはいつもエリーゼを優しく見つめる瞳をキツくしてルイスを睨みつける。


 ルイスはいつものペコペコしているイメージのあるレインの睨みにたじろいだ。だが退路は塞がれていた。

 「ルイス殿下。貴方……また他の令嬢に手を出そうといたしましたね?」

 「げ……"ルイーゼ"」


 現れたのはルイスの婚約者であり"セルティア公爵家"の令嬢である"ルイーゼ・セルティア"である。

 「な……なんで君がここに」

 「あら? 誰かさんが沢山の女性に声を掛けてると耳にしたので様子を見に来た所存ですわ?

 それより婚約者の顔を見て第一声にげ……というのはあまりに失礼ですわよ」


 ルイーゼ・セルティア。見た目は真紅の長い髪をシニヨンに纏め、顔立ちは吊り目にガーネットを嵌め込んだ瞳。薄い唇に白い肌。

 キツめの美人な彼女は体つきもスレンダーで、着ているドレスも自身の目や髪に合わせた赤いドレス。しかし下品に見えない少し暗めの落ち着いた色。


 そんな彼女は怒り顔でルイスに迫るが、すぐに後ろのエリーゼにウインクして答えた。エリーゼはすでに原作の流れを知っている。

 だからこそ先にルイーゼと友人になり、そして更に最近ルイスに付き纏われてる。と嘘を混ぜ込んで垂れ込みを入れた。


 ルイーゼは確かにきつめの性格だが、マナーを守ったりちゃんとした人相手ならば正面から真剣に受け止めるし根は優しい性格なのも把握済み。この為に厳しい令嬢としての教育を受けたといっても過言ではない。


 「き……貴様ら……王太子であり未来の王である私に楯突くとは……なんたる不敬か!

 決めたぞ! 来月行われるパーティを楽しみにしていろ! 貴様らに目にものを見せてくれる!」

 と小物臭漂う捨て台詞を残して去って行った。


 ルイーゼはその背中を見送り直ぐにエリーゼとレインに頭を下げた。

 「私の婚約者が申し訳ありませんでした。エリーゼ様。お怪我はありませんか?」 

 「はい。大丈夫ですよ。レイン様が来てくださったもの…」


 エリーゼがにこやかに返す。しかしレインは

 「いや……僕が発見するのが遅くなってしまった……すまなかったエリーゼ」

 「いいえ……。それでも私の為に来てくださったではありませんか。何より相手は王族。恐らく普通の方ならば見過ごす場面。でも……貴方様は助けてくださった。それだけで私は嬉しいのです」

 「……僕にとってエリーゼは世界で一番大切な人だから。例え殿下でも君を奪われるのは耐えられない」

 「……レイン様」

 「……エリーゼ」


 その瞬間二人の世界が広がった。エリーゼもまたレインの尽くしてくれる所や努力家な所。

 そしていざという時に勇気を出して挑む所。

 それらを実際に目の当たりにし享受してから彼女もレインに本当に好意を抱いていた。レインは最早説明の仕様がないレベルでエリーゼを溺愛。


 (うう……エリーゼ……何でこんなに甘やかされて王子に行くのよ! もうレインが可哀想じゃない! ……まぁその分私がアンタの代わりにレインを幸せにしたげるけどね)


 なんて甘い空気を醸し出すとクスクスと笑う声が聞こえた。それに二人は我に返り真っ赤になる。ルイーゼは尚も上品に口を手で隠してクスクス笑っている。

 「ふふ。お二人ともとても仲睦まじくて羨ましい限りですわ。これからもお幸せに」

 そう言ってルイーゼも自分の教室に戻っていった。


 残された二人は…

 「ぼ……僕たちも戻ろう?」

 「そ……そうですね」

 と真っ赤な顔でお互いの教室に入って行った。



 ◇



 そんな出来事から一ヶ月後。ルイスの嫌味なども耐えながら迎えたこの日は王家主催のパーティーが開かれた。このパーティでは多くの貴族が参加する。社交界に於いて重要視される関係作りにもってこいだ。

 エリーゼもこのパーティに参加。当然の如くエスコートしてくれるのは婚約者のレイン。

 双方の両親も参加している。


 レインはエリーゼを連れて早速他の貴族達に挨拶して回る。

 (原作だと……確かこのパーティではレインが誰もエスコートせずに登場して針の筵になるのよね……)

 そして更にそこに本当なら王太子と共に登場する筈のルイーゼが何故か他の参加者と同じタイミングで誰のエスコートもなしに登場する。


 しかしエリーゼがルイスと関係を持たなかった事で原作は大きく改変されている。

 暫く話していると急に会場がざわついた。

 

 見ると会場の入り口から真紅の美しいドレスを纏ったルイーゼがいた。此方は原作通りに一人で登場。エリーゼはレインと共に直ぐに駆けつけた。

 「ルイーゼ様!? 何故お一人で……」

 「ふぅ……どっかの誰かさんにエスコート断られまして。喧嘩でも売ってるのかしらね」

 

 ウフフフフと黒い笑みを浮かべるルイーゼにレインとエリーゼは苦笑いを浮かべる。

 (というか……私がここに居るとなるとあの馬鹿王子の相手誰になるのかしら?)


 パーティ開始時間に近づくと会場の奥にある玉座の前にカツカツとカッコつけてルイスが歩いてきた。その傍には誰もいない。


 ルイスは真剣な顔で前に立ちそして姿勢を整えた。そして、


 「皆の者よくぞ集まってくれた! まず私より皆の者に聞いてほしいことがある。

 この私……ルイス・ルツ・ライラックは本日を以て! そこにいるルイーゼ・セルティア公爵令嬢との婚約を破棄させてもらう!」

登場人物

  ルイス・ルツ・ライラック

 大国ライラックの王太子であり王位継承権を持つ。しかし話内に登場する小説ではエリーゼと浮気して婚約者であるルイーゼを裏切り、エリーゼと共に破滅する運命を辿る。女遊びが好きで転生エリーゼにも手を出そうとしていた。

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