7.秘められた真実
「祖母から聞いた話なんですが……」
玲奈の声が、囁くように小さくなる。まるで、誰かに聞かれることを恐れているかのように。
「あの事件の後、学校で奇妙な儀式が行われるようになったそうです」
「儀式?」
「はい。毎年、失踪事件が起きた日に、旧校舎の地下室で何かが行われているらしいんです」
岬は、思わず息を呑んだ。その息は、恐怖そのものを飲み込んだかのようだった。
「そんな……本当なの?」
「私も噂程度にしか聞いていません。でも……」
玲奈は、周囲を警戒するように視線を巡らせた。その仕草は、影に潜む何かを探しているようだった。
「最近、深夜に旧校舎から奇妙な音が聞こえるって話があるんです」
その瞬間、岬の頭に激しい痛みが走った。
「くっ……」
目の前が真っ白になり、頭の中で何かが弾けたような感覚があった。そして、まるで古びた映画のフィルムが回るように、断片的な映像が次々と浮かび上がった。
小さな女の子が、真っ暗な廊下を歩いている。泣きじゃくる声。そして、何かが女の子に近づいてくる――。
「先生! 大丈夫ですか?」
玲奈の声で我に返る。岬は、冷や汗を拭いながら微笑んだ。その笑顔は、亀裂の入った仮面のようにもろく見えた。
「ありがとう、玲奈さん。大丈夫よ」
その夜、岬は再び悪夢にうなされた。旧校舎の廊下。逃げ惑う自分。そして、何かに追いつかれそうになる瞬間――。
「はっ!」
悲鳴とともに目を覚ました岬は、自分のアパートのベッドの上にいた。窓の外では、満月が不気味な光を放っている。その光は、岬の部屋に忍び込み、影を歪めていた。