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5章 4 賑やかな食卓

 私達はホテルの食堂で、賑やかに食事を楽しんでいた。


「あ! ジャンッ! それは私のお肉でしょう!?」


「何だよ。食べないんじゃ無かったのか? 皿に残っているから、いらないと思ったんだよ」


「違うわよ! 好きな料理だから一番最後に楽しみで取っておいたの! そ、それなのに脇から奪っていくなんて……」


食べ物の恨みは怖い。

ニーナは物凄い目つきでジャンを睨んでいる。


「え? そうだったか? ニーナは好きなものは一番先に食べるタイプじゃなかったか?」


「それはジャンの方でしょ! 何で双子なのに私の気持ちが分からないのよ!」


「肉ぐらい、いいだろう!? 大体俺は病み上がりだぞ!」


「そんなのはリアンナ様の力で、とっくに治っているでしょうが!」


うん、本当に賑やかなテーブルだ。

2人の口論を側で聞きながら、私は料理を楽しんでいた。


「リアンナ様、ここのホテルの食事はいかがですか?」


シーフード料理を食べているとカインが話しかけてきた。


「うん、最高に美味しいわ。特にこのエビが絶品ね」


「それは良かったです。他に何か欲しいものはありませんか? 何でもお好きな物を頼んで下さい」


「う〜ん。でも、そんなに沢山食べられないわよ」


「そうですか。あ、だったらデザートはいかがですか? 料理だけではなく、デザートも絶品ですよ」


カインは自分の食事もそっちのけで、私を気にかけている。


「私は大丈夫だから、カインは自分の食事をしてよ」


「僕なら大丈夫です。リアンナ様に喜んで食事をして頂けるのが一番ですから」


ニコニコと笑みを浮かべながらメニューを差し出してくるカイン。

う〜ん……何故、カインはここまで私に構ってくるのだろうか? もしかして私の護衛騎士だから?


「カイン。いくら今私の護衛騎士をしてくれているからって、そこまで面倒みてくれなくていいのよ? 大体、カインは本来殿下の護衛騎士なのだから」


するとカインは突然真剣な顔つきになる。


「リアンナ様、僕は……」


「あっ! カイン様! またリアンナ様にちょっかいだしていますね!」


そこへ口喧嘩を終えた? ジャンが割り込んできた。


「ちょっかいなんて、人聞きの悪い。僕はリアンナ様のお世話をしていただけだよ」


「お世話係なら私がいます! そうですよね!? リアンナ様!」


ジャンを押しのけてニーナが手を上げる。


「アハハハ……そうよね。ニーナが私のお世話係だものね。それでカインは護衛騎士」


私の言葉にジャンが恨めしそうな目を向けてきた。


「リアンナ様! 俺は? 俺はどうなんですか!?」


「えっと……御者?」


「ええっ!? そ、そんなぁ……御者だなんて……」


明らかに落ち込んだ様子を見せるジャン。


「え? え? だって、以前自分のことを御者だと言ってなかったっけ?」


「アハハハ……御者だってよ、ジャン」


「御者も立派な仕事だと僕は思うよ」


戸惑う私に、笑うニーナとカイン。

本当に今夜は賑やかな食事となり、私達は周囲の人々からすっかり注目されてしまっていた。



……そう、つまり私達は目立ちすぎてしまっていたのだ。

自分たちが追われているにも関わらず。



だから、あんなことになってしまったのだろう――

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