表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

411/443

第386話 実食! おにぎりロシアンルーレット・3

 彩花ちゃんの作ってきたおにぎりは、7個のおにぎりの中でひとつだけ異様に大きかった。寧々ちゃんの手と比べても、爆弾おにぎりかってくらい大きい。


「私は長谷部さんのおにぎりなんだけど……大きいね」

「てへっ」


『この流れヤバいやつだぞ』

『こいつらの配信でてへぺろする奴は大抵ろくでもないんだ。知ってる』


 彩花ちゃんがてへぺろしたけど、今日バス屋さんが先にやったから、フラグが立った感が半端ないね。

 寧々ちゃん逃げてー! と言いたいところだけど、これは企画なのでそうも言ってられない。


 寧々ちゃんは怖々と彩花ちゃん作のおにぎりを食べ、意外にすぐ具に当たったらしくて驚いていた。


「あー、ポテトサラダ? うん、これはむしろ有りかなあ。ツナマヨとか好きだから」

「そうそう、ポテサラ! でもボクおにぎり作るの下手くそだからさ、握りやすいように凍らせたんだけど、それをご飯でコーティングしたらすっごい大きくなっちゃって」


『コーティング言うなや』

『具を入れておにぎり握るの難しいよね、わかる』


 なんと、でっかいから恐怖の対象だったんだけど、意外にも中身はそこそこ普通だったんだ!

 そっかー、確かに彩花ちゃんの料理スキルだと、凍ったポテサラを中身にしたらおにぎりは大きくなるかも。


『大量殺戮兵器が出るかと思ったけど、意外に常識枠』

『彩花なのに』


「あっ、でも……真ん中の方は結構凍ってる……」

「ど、ドンマイ。ごめんね、ねねっち」


 微妙にしょんぼりしながらおにぎりを食べる寧々ちゃんの背中を、軽ーくポンと彩花ちゃんが叩いた。凄い、バス屋さんに対する態度と全然違う。


「味変でブルーベリージャムとか入れようかと思ったけど、バス屋か安永蓮が食べるならともかく、ゆ~かっちとかねねっちが食べたら可哀想だなと思ってやめたんだよね」

「えっ? 彩ちゃん、なんでそこに私を入れてくれないの? 私は味変ブルーベリージャム入りポテサラおにぎりを食べてもいい枠なの!?」

「ああああああああ」


 ぽろっと余計な一言を言ってしまった彩花ちゃんが、あいちゃんから制裁を食らってガクガクと揺すぶられている。

 うん、ここら辺は平和だな!


「さーて、最後は私なんですけども、常識枠寧々ちゃんのおにぎりなので安心しかありません! いやー、ほんと、バス屋さんのだけは引きたくなかったんだよね!」

「それ食ったの俺だけどな」


 私の斜め後ろから、怨念が籠もった蓮の声が響く。あっ、藪蛇藪蛇。

 私が食べ終われば配信終了だからね。ちゃちゃっと食べて食レポしてしまおう。


 まず、外見チェック。蓮は「罠は具のみ」という先入観があったから、一口目で撃沈したんだよね。

 でもこれを作ったのは寧々ちゃんだし、ちょっと丸みのある三角形のおにぎりは、極普通に見える。中身の何かがはみ出したりはしていないし、私はとりあえず天辺をパクッと食べた。

 よかった、普通におにぎりだ。さすねね! 問題は具に到達するはずの二口目なんだけど――。


「ふがっ!? か、辛い! うえっ!? 甘っ、いや、なにこれ!?」


 寧々ちゃんだからと安心していたけど、ちょっと悶絶しそうな味がする! 言葉にできないって歌が頭の中を流れていくよ。


「食レポ、食レポしろ!」

「え、えええー? いや、なんて言ったらいいのかわからない! まずい! あ、寧々ちゃんごめん、寧々ちゃんが料理下手って言ってるわけじゃなくて、自分でも何を食べさせられたのかわかんなくて! 何これ? 甘味と辛味としょっぱさのマリアージュ即離婚、多彩な味のオーケストラが奏でる最強の不協和音!?」


『意外に語彙が豊富なのがウケる』

『お茶飲みな……』


 蓮が渡してくれたお茶を飲んで、ちょっと口の中が落ち着いた。ていうか、本当に辛くてびっくりしたんだよね、初手辛さが来るとは思わなくて度肝を抜かれた。


「ええっとね、いちごジャム入りのマシュマロを醤油に漬けてラー油で炒めて、うまみ調味料と七味唐辛子をまぶしたものなんだけど……」

「ぐっふ!?」


 いちごじゃむいりましゅまろを、しょうゆにつけてらーゆでいためて、うまみちょうみりょうとしちみとうがらしで……なんですと!?


「甘味と塩味と辛味と旨味と酸味が揃ったら、バランス取れるかなあ、と思って」


 寧々ちゃんは私の持っているおにぎりを取り上げて、ちょみっと具の部分を含めて一口食べた。そして即むせながら口を押さえている。


「……ごめんね、ゆ~かちゃん、こんなもの食べさせて……」


 心底申し訳なさそうに謝られたー! もう私、どうリアクションしたらいいかわからないよ!

 わかるのは、まだ半分以上残ってるこの地獄おにぎりを食べないといけないってことだけ!


『制作者から謝罪が入る味((((;゜Д゜))))』

『理論で攻めてるのに軽々と理論を超えてきたな……』

『五味全部足せば勝ちだと思ってるやつ初めて見た』

『理論的には間違ってない気がするのに、なんでこうなったの』

『おにぎりに塩と間違えてうまみ調味料掛けたら、激まずだったって話聞いたことがある』

『五味は辛味じゃなくて苦みだよ』


「アッ、ハイ、うん、苦味ね……辛味じゃなくて。――そっちも嫌だよ!」

「本当にごめんねーっ!」


 チャリンチャリンとスパチャの音が響くし、寧々ちゃんに謝られるのも地味に精神に来るね、これ。

 別に辛いものが嫌いってわけじゃないけど、多分ラー油といちごジャムが信じられないくらい親和性がない! マシュマロの弾力もちょっと辛い!


 私が半泣きになりながらおにぎりを食べ終えると、誰からともなく拍手が起きた。

 私に対する拍手じゃない。「バス屋さん持ち込み」という、考えてみたら危険さしかない企画をやりきった全員への拍手だよ……。


『おまえらの体を張った企画、忘れないよ……』

『ねえ、私どんな顔でお祝い受け取ったらいいの?』


 颯姫さんらしいコメントが、うまいこと最後にぽつんと表示されていた。


今回の話に出て来たおにぎりのうち、「私が作った」ものが2つ、「私が食べた」ものが2つ、友達が食べたものがひとつありました。

いちごジャム入り以下略は、本当に本当にまずかったです!!!!!


読んでいただきありがとうございます!

活動報告に「柴犬無双・登場人物紹介」を作りました。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1600476/blogkey/3242605/


面白い、続きが気になると思っていただけたら、ブクマ、評価・いいねを入れていただけると大変嬉しいです。よろしくお願いします!

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ