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第331話 スライムモリモリ

 30分の休憩の後、86層からの攻略に私たちは向かった。

 相変わらずスリープ&パラライズで進んでいける。今のところこれを無効にできるほどRSTの高い敵はミスリルゴーレムだけみたい。


「うっ……90層……早い、早すぎる」


 颯姫さんが緊張のせいか顔色悪いね。10年掛けてここをずっと進んできたのに、本来敵が強くなって苦戦するはずの階層でもサクサク行けてしまってるから、本当に心の準備が追いつかないんだろうな。


「100層に行ってもそれで即終わりじゃないんですよ。颯姫さんのMAGが120まで伸びてないと」

「そうだ、そうよね!」


 聖弥くんが指摘すると、颯姫さんは何故かほっとしたような顔をした。

 怖いんだろうな、100層に到達してどうなるか考えるのが。

 私は他人事だけど、颯姫さんはこの10年って人生変わっちゃったわけだし。


「今日は時間的にもう1層で終わりかな。進みはいいけど、その分魔法の連発があるから攻略に掛ける時間は少し減らした方がいい」


 颯姫さんをチラリと見て、ライトさんがそう提案する。確かに、ずっとスリープ&パラライズに頼ってるから、補正後のMPが一番低い私はきついね。


 階段からいつも通りの蓮と颯姫さんの偵察が入る。大体ここで異常なフロアだと判断されなければ通常の戦術で行くんだけど――。


「うわー……」

「ある意味嫌だ」


 ある意味ってなに!? とみんなが続々下に降りて行く。そして90層の様子を見て、やはりみんな蓮と颯姫さんのような反応になった。


「これは、ボーナスフロア?」

「いや、属性スライムはレアモンスだから全然ボーナスじゃないよ」


 彩花ちゃんの疑問形になってしまった語尾に、タイムさんが苦い顔で答える。

 90層は花手水のように色とりどりのものがぷるぷるしてたんだけど、これって属性スライムっていうのか。初級ダンジョンの最初の方に出てくるスライムより二回りくらい大きくて、赤青黄色と色は様々。


「一回だけ戦ったことあるけど、スライムだと思わない方がいいわよ。HPは高いし、攻撃魔法もバンバン撃ってくるわ。アシッドレインとかきついわね」

「蓮くんのスリープが効くかどうかが問題かも」


 ママと颯姫さんの言葉に、高校生組が思いっきり顔をしかめる。颯姫さんのスリープは効かないってこと!?


「ええっ、これってそんなに強い敵なんですか?」

「強いよー。果穂さんの言うとおり、スライムと思わない方がいい」


 そう言われても、見た目に騙されるというか……。いや、元々スライムって嫌な敵だけどね。

 意外すぎる……でも、90層だもん。上級ダンジョン下層の敵はもう出ちゃったから、それ以上の敵が出るに決まってるんだ。


「気を引き締めていこう、蓮くん、スリープ頼む」

「はい、行きます」


 蓮が右側のスライムたちに向かってスリープを掛ける。これが効くかどうかって……わー! レジストしてる個体がいるー!


「やっぱり全部は潰せなかったか」

「昨日と今日LVアップした分で行けるんじゃと思ったんだけど、そんなに簡単な話じゃなかったなあ。でも、もうちょっとで赤スライムも潰せそう」

「いくらかでも眠ってるだけマシだよ! 蓮くん、パラライズをどんどん掛けていって。片っ端から物理攻撃で倒そう。これだけ色が混ざってると、魔法の使い分けが面倒だ」


 ライトニング・グロウの歳上3人がどんどん方針を決める。属性スライムってことは、きっと赤が火属性ってことなんだよね? レジストしてるのは赤が多いから、氷属性の蓮の魔法は効きにくくなるんだろうな。


「範囲魔法使ってくるから、こちらが固まっててもばらけててもあまり関係ない。とにかく片っ端から物理で潰せ!」


 ライトさんの号令で、全員がフロアに躍り出る。途端に吹き荒れる魔法の雨あられ! これは、嫌な敵だなあ!


「ヤマト、頑張って!」

「ワンッ!」


 一番頼りになるのはやっぱりヤマトだ。私が切りかかってもスパッと両断できないスライムたちを、頭突きや噛みつきでどんどん倒していく。


「こっちもある程度範囲魔法でHP削りますか?」

 

 蓮がパラライズにかかりっきりになってるので、聖弥くんがライトさんに向かって声を張った。返ってきたのは颯姫さんの声だ。


「属性一致しちゃうと魔法が吸収されるから、こういう混ざってる状態では攻撃魔法は使わない方がいいわ!」

「わかりました……面倒ですね」


 面倒ですねといいながら聖弥くんはエクスカリバーを振るって、固まっている複数のスライムにダメージを入れている。


 多分、VITがとんでもなく高いんだろうな。水の中で刀を振るっているような、込めた力がそのままダメージには変換されない手応えがある。


「うわー、痛い!」


 バス屋さんが悲鳴を上げたので、蓮がヒールを掛けていた。アシッドレインとかファイアーウォールとか、上級魔法を使ってくるよこのスライムたち!


「一度集まってください! エリアヒールします!」

「回復効率のことを考えると、ある程度集まって戦った方がいいのかな」


 蓮がすっごい通る声で呼びかけると、ヤマトも含めてその場の味方は一斉に集まってきた。


「エリアヒール!」


 9人+1匹を一度に回復できるエリアヒールは強いな! 結局ばらけてても集中しても食らうダメージはあまり変わらないってことで、私たちは端に寄って戦うことにした。

 目の前の敵はほとんどパラライズが効いてるんだけど、後ろから容赦なく魔法が飛んでくる。


 スライムって! こんなに強くていいんでしたっけ!?


 それでも、パラライズと地道な回復を続けながらひたすらに戦い続けた結果……。


「二度とスライムは見たくない」

「同感」

「トラウマレベルできつかった」


 1フロアに掛かった時間、およそ1時間……。とんでもなく密度が凄くてきつかった戦闘がやっと終わったとき、全員がヘトヘトになって居住区域になだれ込んだのであった。


読んでいただきありがとうございます!

活動報告に「柴犬無双・登場人物紹介」を作りました。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1600476/blogkey/3242605/


面白い、続きが気になると思っていただけたら、ブクマ、評価・いいねを入れていただけると大変嬉しいです。よろしくお願いします!

挿絵(By みてみん)

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